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Protocol;Earthbound  作者: Sierra
2章:Trübheit
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漁師と道具

はっきり言って装備説明回です。次は銃器をクリーニングするだけのちょっとした話です。

今回はカイルが森へ再び向かう理由付けを前半でするだけなので、後半からはストーリーに大して関係しません。

 昨日見に行った老婆の店で見たものを、しばらくカイルは忘れられなかった。

 義眼のことについてはとくに、ツェーザルが使用者そのものであろうことが疑いようもない。


 そう考えに耽っていると、運のいいことに仕事を上がったベルンハルト達が砦へ様子を見に来てくれたのだった。


「よう、元気してるか」


「勿論だ、お陰様でな。昨日は面白いものを見に行ったんだ」


「ほほう」


「"不純物"ってやつだ。たぶんツェーザルの義眼もそうだと思ってるんだが」


「おっ、アタリだな。だろ?」


 後ろに控えていたツェーザルが同意する。


「ああ。そうなるとラトギプ婆さんの店か? 南四番のだ」


「そうだ。他の義眼も売ってたし、そこでいろいろと教えてもらったんだ」


 三人は互いに顔を見合わせ、ベルンハルトはニッと小さく破顔した。


「説明する手間が省けたな。そんじゃあ俺のやフリッツのも聞いたのか?」


 彼は自分の首に架かっているネックレスとフリッツの長剣を順に指さして言う。


「いや、その二つは分らないな。ベルンハルトのはともかく、フリッツの剣に似たようなものはあまり無かった」


刀剣類はあるものの、さすがにフリッツのような奇異な外見をしたものは見当たらなかった。


「んー、まぁフリッツのは特別みたいなもんだしなぁ。俺のも変わり種っちゃそうだし? そうだな……ア、そうだ。あんた、もし暇なら漁に付いて来ねぇか?」


「漁というとつまり、森の仕事か」


「おう。ま、バケモン相手のハンティングより"不純物"集めた方が金になるし、かかるリスクも考えりゃ物漁った方がいいし……ってなわけで"漁"って呼んでるな」


 あの未知のツールが実戦で運用されている様を見られるのはいい勉強になる。

 暇をつぶすこともできるが、なにより森のような空間に行けば仲間に出会えるかもしれないという無根拠な希望もある。


 ただし、このような情報の明らかに少ないシチュエーション下でわざわざ危険地帯に踏み込むというのも危機管理上好ましくないのも事実だ。

 絶好の機会でもある反面、カイルは少し迷った。


「もちろんいい物が入ったら分け前もやるよ。確かに俺達ァイカレ野郎共に違いねえが、あんな所にタダで引っ張り込むほど常識無くはないぜ」


「分け前、か」


 なるほど、こちらの貨幣が手に入るならばリスク対効果は十分だろう。

 それによくよく考えてみれば、彼自身トロールなるモンスターを初見で処理することもできたのだ。

 小銃だけでは辛いにせよ歯が立たないわけではない。


 彼の考えは固まった。


「分かった、是非行かせてもらおう」


「うし、決まりだな。今日はもう戻るが、明日から一週間くらいはここで準備する。そう連続で行ってても疲れるし、そんな頻繁に行くもんでもねぇしな。あんたにも装備が要るだろうから、それもついて来な。ウチの親父がやってる武器屋に行くぜ」


「実家が武器屋か。卸先も?」


「んや、確かにちょっとは卸すけど、あきらかドンパチにゃ向かんだろってのとか雑貨レベルのは別のトコに卸すな」


 それが俺の言った店、ツェーザルの言うラトギプ婆さんの店辺りなのだろうな、と彼は想像する。


「んじゃ明日の昼頃来るわ。一応ライフルとか使う装備は持ってきといてくれよ、俺は銃についちゃ若干疎いから現物がないと要るもんが分かんねぇ」


「ああ」


 そうして三人は去って行った。



 それを見送ってから砦の部屋に戻った後、カイルは一応だが自分の銃と擲弾筒を今一度検めることにした。


 あの森での戦闘以来使っていないので、これもいい機会だと思ったのだ。


 サブアームのMEUピストルは腰のホルスターに入れて一応携行しているが、主装備のSR-16と擲弾筒は部屋の隅に静置してある。


 カイルのSR-16は本人の要望を交えつつ吟味した外装カスタムが施されており、ストックはバットプレートを換装、ハンドガードも現行支給のものと違う。

 具体的には、現在支給されているものだと12インチほどのURX3というハンドガードが取り付けられているが、カイルのものはそれを7インチ強と短くしてある。


 これをすることで取り回しはよくなり、そもそも精度のいいSR-16のベースであればある程度中遠距離にも対応できるという寸法だ。

 ただ、そのために銃身長を犠牲にすると威力――つまり銃口初速度――や射程距離には当然影響するわけで、彼はそこにロングバレルは着けて補助していた。


 そのほかにはアイアンサイトを除き、EOTecホロサイトと倍率を向上させるブースター・ユニットを照準器として上部レールにマウントしているほか、万が一に備えてオフセットアイアンサイトなるものを装着している。


 オフセットアイアンサイトは本来レールに対して垂直になっているアイアンサイトと違い、取り付けるレールに対して四十五度ほどの傾斜がついているものだ。

 これが何の役に立つかと言うと、もちろん上記のような光学照準器の類いをマウントしている場合である。

 斜めになっていることで干渉せずに使えるというそれだけのことだが、悪くない発想だとカイルは評している。


 下部レイルにはバイポッドとして使用する脚を収納したグリップが装着されているが、こちらも遠近双方に対応するための工夫であった。

 昔はこの手のグリップに対する耐久性・安定性を懸念する声も多かったものの、今では素材や技術更新を重ねることによって過酷な任務をこなす部隊の使用にも足る信頼性を獲得している。


 後はセレクタの延長をはじめとする改良、グリップのエルゴノミクス化、M4やM16系統の脆弱性の一つであったネック周りの耐久性の向上、フラッシュハイダーの強化など合計すればとにかく金の掛かっていそうな独自のマイナーチェンジが施されているくらいで外見的に大きく変わったものはない。


 使用弾薬も特に通常と変わりない五・五六×四十五ミリだった。


(しかし、あの時はハンドガード変えといて正解だったな。あんな森で振り回せる自信がない)


 森といえば、でカイルは擲弾筒をまた手に取る。


 こちらは一風変わったもので、最近になって開発されたModel584と呼ばれるものだった。

簡単に言えば連発式である。


 ポンプアクション式の擲弾筒というのは昔からチャイナレイクやロシアのGM-94といったものが存在しているが、こちらはさらなる小型化が成された新型のものだ。

 様式としてはGM-94の方に近い。


 シンプルな円筒状の短い銃身の上に擲弾筒おなじみのリーフサイトが設置され、スタンドアローンでの使用が前提であるためピストルグリップを備える。


 ここまでなら特別奇異なことは無いのだが、実のところこの火器は機械義肢を使用する部隊に向けて開発されたものである。

 そのためある程度重量が増すことは許容されており、何とロータリーマガジンを使用する連発方式を採用していたのだ。


 既存のロータリーマガジンを使用するグレネードランチャーはイギリスのアーウェン37があるが、こちらは使用弾薬が三十七ミリと小さくなっているのに対し、Model584は単装式よろしく堂々たる四十ミリ榴弾を扱う。


 生身の軍人が使うには甚だ重量オーバーとなるため、カイルらの部隊と少しにしか支給されなかった試作品なのであった。


 使用者を選ぶ分動作信頼性だけはお墨付き、との事がまことしやかに噂されていたのをカイルはよく覚えている。


――実際使うことは少ないけど、お守りにはなるもんだ。


 さて、最後のMEUピストルについては何のことは無い、既存のものとほぼ同じだ。

グリップパネルの変更はオーダーしたが、これ以外にカイル自身が変更を申し出た点はない。


 そも、MEUピストルは海兵隊の中でもとくに遠征隊と呼ばれるセクションへ納入されることを前提とした仕様なのだ。

 信頼性の高いM1911A1をベースとしているぶん四十五口径の高いパワーをそのままにスプリングフィールドやキャスピアンなどの新規パーツで組み直したものであるこの銃は、さながら20世紀の名銃をつぎの一世紀にも通用するように改修されたようなカスタムなのであった。


 カイルもこの銃には、正確にはM1911あるいはジョン・ブローニングというある種ブランドのようなものには信頼を寄せている。


 実際手にもって使ったときもその評価は変わらなかった。


「これからも頼りにしてるぜ、ことに明日からは特にそうなると思うけどな」


 と、思ったつもりがどうしてか口にしていた。

おきたこと:ベルンハルトらにくっついてカイル森へ行くってよ。

翌日から準備にもついていくらしい

ちなみにラトギプ婆さんのフルネームはゲアリング・ラトギプです()

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