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Protocol;Earthbound  作者: Sierra
3章 軌道修正
13/16

目処

ブランクに対して内容が薄すぎる(自戒)

 さて、このようにベルンハルトらが景気よく戦に興じるに等しくレイチェル達も大きな波に遭遇していた。

 毎日交代で役場まで行ってはカイルの情報がないかと確認していたところ、彼女自身がついにその報を目にしたのである。

 コルク版ピン付けされた文書に顔写真はなけれども"Kyle Hawkins"の文字は仲間を探す旨とともに間違いなくそこにあった。


 急ぎ帰ってレイチェルの知らせを聞いた一行はすでに昼食後だったこともあり、ザラに断りを入れるが早いかすぐに役場へと向かう。


 到着した先でレイチェルは職員に彼の動向を聞いた。


「今は訳あって砦のほうにお住まいだそうです。ただ、昼前に追って情報があって、しばらくそこは明けているのだとか」


 王手とばかり思っていたが、あと一歩のところ予期せぬ足止めである。


「どこに行ったかは分かりますか?」


「おそらく森ですね。数日前には砦へその旨を伝えていたとかですが、おそらく"漁"でしょう。簡単に言えば、物資関連のものをあさりに行くんです」


 セドリックはふと先日の武器店でのことを思い出した。


「少佐、これはおそらくカスパー氏の言っていた……」


「ああ、そういえばそれだ。正に。クライアントが彼のところとは限らないとはいえ、一度当たってみるか?」


 それに対する部隊の意見は全く一致である。

 職員に礼を言うと、その足で彼らは武器店に向かった。



 どやどやと流れ込んでくる異界人たちを前にして、カスパー・ベルンハルトは久々なこともあり半ば困惑していた。

 見覚えのある二人の顔があることから商談かとも思ったが、にしてはやけに鬼気迫る雰囲気といってもそうだ。


「よう、賑やかだな。この前の件かい?」


 セドリックが事情を説明しに出た。


「おそらくそれはまたあとの話になる。今は最後の隊員が見つかりそうなんだ、 さっき役場で漁かなにかに出ていると聞いた。以前ここで聞いた話と同じだと思って来てみたんだが、最近外注は出してないのか?」


「ん、俺……ってか店の方からはこのところない。他のとこも季節的なものでこの頃は出してないはずだが、あるとすればウチの倅くらいだろうな」


 カスパーが言うことにはどうやら、彼の息子――まさにクリストフ・ベルンハルト――もこの店に属する物資回収業者らしい。

 さしずめ()()である。


「なら今も漁に出てるのか?」


「おう。ただこの前支度に戻ってきたらしいときは俺は居なかったから誰を連れてるのかはまだわからんが、まあ見てみる価値はある」


そうまで言ったところでカスパーはふと思い出したようにこう言った。


「ついでと言っちゃなんだが、軽く仕事を頼まれちゃくれんか?」


「おいおい、あのでっかい森で人探ししながらはさすがに無理だ。今度にしてくれないか」


「そのでっかい森を案内できる奴をつける。あいつの航路も知ってるやつだ。なんならそうだ、ついでに銃弾もサービスしとこう。集めるのはほんのついで程度でいい、それこそ前の漁師が落としていった物資とかでもな。それでどこまでリターンがあるのか見てみたい」


 彼らは即座には答えを返せなかった。

 カイルの捜索に要らぬ仕事を持ち込んでいいのかというのもあり、反面案内人がつくというメリットは捨てきれない。

 いくらか意見は割れたが、何よりも今は手段について悩んでいられない時運にある。


 彼らは仕事を受けることにした。


「久しく商談成立か、ありがたいね」



 その後の調整で出発は翌日の昼過ぎと決まった。

 カスパー側の仕事も早いもので、それに合わせて動ける案内人を日が暮れる前に手配してはその旨の文書を送りつけてきたのだ。

 アイゼンシュタインの邸宅でその報を受け取った一行は思わず感嘆した。


「ヒエッ、ありゃ大したもんだ」


 愛用のSR-25を右腕に抱えて座りながらパッカーは言う。


「まあ規模が規模だからか、慣れればそんなものなのかもな」


 レイチェルもどう反応していいやら、微妙な心持だった。


「現代にある遺物回収事業よりかははるかに危険な訳だから、当然といえば当然だけれど」


「でもここ電子メールすらないでしょう? いや、もしかすると存外暇なのか……」


 このとき久しく隊に若干の笑みが生まれた。


「ま、ともあれ明日の朝は早いぞ。お向かいの案内人が八時にはきて日程のすり合わせ。出発の昼まであまり暇はないから、そのつもりでね」


「了解」


 この日の夜は珍しく、彼らにとっては比較的足早に過ぎていくものに感じられた。

 パッカーが軽口をたたくのが増えだしたのもあるが、元をたどれば連続して憂き目を見ていた中の進展が新しい空気を取り入れたのが最大の要因だろう。


 明日からはこれが寝袋になると知っているのに、不思議と一行はぐっすりと寝台での眠りに就いていった。

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