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94話 「新たな依頼が来たようで」

夏が終わり、秋晴れの空が清々しい早朝。

街の中央からやや西にいった所にある建築ギルド、その受付に二人の人物がいた。

腰まで届く束ねた亜麻色の髪、やや切れ長な目に眼鏡が良く似合うギルドの受付嬢のエルザ、もう一人は建築ギルドの中では珍しく普通の髪形をした男性……八木である。


「えっとエルザさん? この紙束はいったい何なんですかね……」


前日にギルドに顔を出すように言われ来てみれば、待ち構えていたのは書類の束であった。

前にも見たその光景にそっと逃げ出したくなる八木であるがなんとかこらえる。逃げても書類は無くならないし、何よりエルザに迷惑がかかる。


「依頼ですよ……ご安心ください、どこぞの街に来て欲しいだとかそう言ったものではありませんので」


「はぁ……」


エルザの説明によると紙束は各国から寄せられた神の落とし子に対する質問集とのことだ。

漠然と技術を教えてくれと言われても困るだろうと考えた国のお偉いさん方、それならばと今各国が抱えている問題をまとめそれに対する解決策という形で技術を得ようと考えたらしい。

もちろんすべての質問に対し答えれるわけでは無いだろうし、もう伝わってる技術もあるかも知れない、それでも良いので分かる範囲で答えてほしいと言うのが依頼の内容である。


「むっちゃ多いすね……」


「あの二人とも協力してやってください。彼女たちはギルドとあまり関りがないから……その依頼は3人分まとめてあります」


そういう事ならばと書類の束を受け取り事務所へと引き上げる八木。

午前中は事務所でいつもの業務をこなし、午後からは宿に行き加賀と咲耶の手が空いたのを見計らい紙束を見せる。


「多いし、なんか似たような質問もあるね」


「まあ、そうだな。同じような問題抱えてる国って結構あるんでないの」


手あたり次第に質問の答えを記載していく3人。

大体があたり障りのな質問ばかりであるが、中にはどう答えたらよいか頭を悩ますものも存在する。


「……武器になりそうなものって」


「え、それ答えていいの?」


悩む二人をよそにそっと席を離れる咲耶。

数分で戻ってきたかと思うとその隣にはアイネとバクスの姿が。


「3人で悩んでても答え出すの難しいでしょ。そんなわけで相談出来そうな二人連れてきたよ」


急に呼び出され戸惑いつつも椅子に腰かける二人。

バクスは煙たく、アイネからは甘い匂いが漂っている。二人とも何かしら作業中だったようだ。

加賀は申し訳なさそうにしながら問題となった質問について説明をしていく。


「……武器ねえ」


「そうね、確かに過去の神の落とし子から伝わったものはいくつかあるね。……ちなみに3人は武器と聞いて何か思いつくものあるの?」


「剣とか槍やらはもう一杯あるだろうしー……やっぱ銃とか? あれは兵器?」


銃と答えた八木。

加賀や咲耶も何かないかと考えるが、あいにくと思いつくのは八木と大差はない。

追加でミサイルやら戦闘機やらを思いついた程度である。

3人の話を聞いてそう、とつぶやくアイネ。少し考えるしぐさを見せ言葉を続けた。


「そうだね、過去にも似たようなのは出ているね、でもどれも使えないって結論になったはずだよ」


「過去に……? そっか地球だけじゃないもんね。ちなみに使えないってなった理由ってー?」


過去にと聞いて、銃や戦闘機はともかくミサイルはあっただろうかと考える加賀であるが、神の落とし子は地球以外からも来ていた事を思い出す。当然地球より科学が進んだ文明だって存在するだろう。


「んっと……銃に使う火薬が、火の精霊の力が異常に強いの。それで優秀な精霊使いが一人もいれば遠くからでも位置がわかるし、火薬を爆発させることも簡単に出来たそう。実際戦争してて導入しようとした国もあったよ、でも戦闘に入る前に火薬を精霊使いに爆発させられて全滅に近い状態になったそう」


それ以降火薬を使った武器を使う国は無い。

それを聞いて感心したような納得したような表情を見せる加賀と八木。


「なっるほどねー、そういう事なら書いても大丈夫だな」


「世界が違うとそういう事もあるんだねー」


アイネとバクスに礼を言い、再び作業に戻る三人。

その後は特に頭を悩ませる必要がある質問もなく、順調に書類の束は減っていく。

そして作業を始めて三日後の夕方。


「やあっと終わった! 枚数多すぎんよ……」


歓喜の声を上げ、ペンを置いて力なく机に突っ伏す八木。

横では大きく伸びをする加賀や、肩をぽんぽんと叩く咲耶の姿もある。


「おつかれー、じゃあボクは厨房に戻るけど。八木は?」


「んー……今日はもう休む……いや、時間微妙だし終わらせちまうか。ギルドまでこれ届けに行ってくるよ」


そう言うと体を起こし玄関に向かう八木。

まだ暗くなるまで時間はあるが日は傾きつつある、書類片手に足早にギルドへと向かうのであった。


「エルザさん、頼まれてたやつ終わりましたよ」


「あら……ありがとうございます」


八木の差し出した書類を笑顔で受けとるエルザだが、すぐにその表情を曇らせる。


「どうかしました? 書類抜けてたかな……」


それに気が付いた八木、何か不備があったのかと書類を視線を移す。

エルザは少し慌てた様子で書類を手元に寄せるとそうではないと言う。

ではどうしたのかと疑問を浮かべた八木に対し、エルザは申し訳なさそうに言葉を続けた。


「実は……他国に来て欲しいと依頼が来ていまして、それが断りにくい内容で、どうしたものかと……」


エルザの言葉に思わず天を仰ぐ八木。

軽く息を吐きエルザに視線を戻すと口を開く。


「それで、どんな内容なので?」

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