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86話 「ダンジョン再び 7」


「うっし、じゃあそろそろお楽しみにタイムと行こうかね」


「まってましたー! じゃあ私向こう見てくるね!」


十分に休息を取った探索者達は最後のお楽しみという事で部屋のどこかにある宝物を探しに入る。

ギュネイ達の今までの経験から言えば大きめのが一つ、小さめのが3~5つはあるはずである。


「んじゃ、俺らは最初に地竜がいたあたりでも見るかね」


一斉に散っていったメンバーとは別にその場に残った何名かを引き連れギュネイが向かったのは最初に地竜が鎮座していた場所、その後ろだ。

一見するとただの地面であるが、よく見ると把手のようなものが存在している。


「お、あったあった……よっと、さて何が出るかなっと」


皆で把手を掴みぐるりと回す。すると地面から伝わる微かな振動と共に、地面がそりあがって来た。

それを見てギュネイの頬が思わず緩む。


「やっぱでかい奴はここだったか」


「まあ、そうだろうねえ。たまにすみっこにあったりもするけど……ま、開けてみようかねえ」


地面から現れた台座に置かれた宝箱。

ヒルダは箱に手をかけあっさりと開く、どうやら鍵などは掛かってないようだ。


「んー……? こいつは」


「何か珍しいものでも……なんだローブじゃないか」


宝箱を開けて首をひねるヒルダをみて、ギュネイは横から中を覗き見る。

中にあったのは純白の布地に銀の装飾がはいったローブであった。物としては悪くなさそうではあるが、思ったより普通であり声に落胆の色が混じる。


「いや、ローブはいいんだけどさこっちの盾見てごらんよお」


「盾ぇ? ……なんで3つもあるんだ? しかもこんなちっこいやつどうしろってんだ」


ローブに隠れるように置かれた3つの小さな盾。

普通に使うのであればどう見ても小さすぎる、それに装飾の模様からしてどうもローブと盾3つでセットのように見える。


「たぶん魔道具だろうけど……シェイラとイーナ! あとソシエ! こっち来てくれないか!」


声を張り上げ散っていったメンバーを呼び寄せるギュネイ。

程なくして名を呼ばれたメンバーが集まってきた。


「私はついでか!」


「あ、こっちがあたりだったかー残念。んで、何出たん?」


憤るソシエを宥めつつこれだ、とローブと盾を差し出す。

手近にいたイーナがまず手に取ると興味深そうにローブを眺め、ぶつぶつと何かを呟き始める。どうやら魔法を使用しているらしい。

その光景を見つめる残りの者たち、ローブはともかく盾が3つというのは全員初めてみるパターンであった、自然と見つめる視線に熱がこもる。


「魔道具なのは間違いないわね。……たぶん魔力を込めると発動する、守りの効果のあるやつ……私にわかるのはこれぐらいかしら。詳しい効果は戻って調べて貰わないとだけど、悪い効果ではないみたいよ」


ローブと盾になにやら魔法をかけていたイーナであったが、大体の効果は分かったようだ。

誰か試してみたら?とローブをすっと前に差し出す。


「じゃー私が! ……ん、ぴったりだ」


元からそのつもりだったのか、イーナが差し出したローブをすっと受け取り纏うシェイラ。

サイズが問題ないことを確認すると、軽く目を瞑り息を静かにはく。

魔力を込めてみたのだろう、盾に淡い光が宿るとふわりと宙に浮かび、シェイラの周りをふわふわと漂いはじめる。


「おぉ……ちょっと殴ってみていいか? 勿論寸止めはする」


ギュネイの言葉にこくりと頷くシェイラ。

それを見てギュネイは鞘にしまったままの剣を軽く振りかぶるとシェイラに向かい振り下ろした。


「っほー。なるほどね、自動で攻撃防いでくれると」


シェイラに向かい振り下ろされた剣であったが、間に割り込むように盾が動きその一撃をしっかりと受け止めていた。


「なかなかに便利な魔道具ね……問題はどれぐらい使えるだけど」


そう言ってちらりとギュネイへ視線を向けるイーナ。

ギュネイは軽く頷くと先ほどよりも力をこめ、違う場所を狙い何度も鞘を振り下ろしていく。



「どっせい!」


しばらく殴りつつけていたギュネイだが、いい加減疲れてきたのだろう。

掛け声と共に一際大きく振りかぶった剣をたたきつけ、へたり込んでしまう。


「本当便利ねそれ……魔力の消費具合はどうかしら?」


「んー……2~3回魔法使ったぐらい? これだけ防いでって考えるとかなり燃費いいよ、これ」


キラキラした目でローブをしげしげと見つめるシェイラ。

どうやらかなりお気に召したようだ、見た目も良くしかも高性能とくれば当然か。


「はぁはぁ……そ、それに…もっと強い攻撃でも……防げ、そうだな」


息も絶え絶えといった感じで話すギュネイ。

彼の言った通り、盾は最後の一撃を除いてギュネイの攻撃を一つだけで防いでいたのだ。

一つでは防ぎきれない場合は二つ、三つと使用する数を自動で増やしてくれるらしい。


「それじゃ、実験はここまでにしてそろそろ残りも探そうかねえ」


見つけた宝箱はまだ一つ、少なくとも後3つは見つかるはずである。

幸先の良いスタートに探索者たちは足取り軽くあたりを探しに向かうのであった。



「あー……やっとこさ入口見えてきたな」


軽く疲れた様子で手をかざし遠くを見るギュネイ。

探索を終え帰路についた彼らであったが、思ったよりも帰るのに手間取ってしまったのだ。


「ま、収穫は上々だから良いんだけど」


そう呟いて振り返る先には巨大な地竜を担ぎ上げるスケルトンの群れという光景があった。

下位ではあるが地竜の甲殻や鱗は鉄並みの強度を誇り、重量は鉄の数分の1と非常に素材としてすぐれている。よって持って帰らないという選択肢は無いのだが……如何せん巨大故に運ぶのが大変なのである。

運搬自体は浮遊の魔法をかけ軽くしたところをスケルトンを召喚し運べばよい、だが場所によっては中々通れなかったり、血の匂いに誘われモンスターが襲撃を仕掛けてくるなど苦労が多い。


「ええ、本当に。誘って頂いて感謝しますよ。ギュネイ」


いつになく上機嫌なアルヴィン。

普段はあまり表情を変えないが、今は明らかに笑顔が浮かんでいる。


「ああ、お前さんコレクターだったもんな……あれ全部買い取るのかい?」


「そうですね……」


そう呟いてちらりと視線をスケルトンが抱える箱に向ける。


「どんな曲か確かめてからですね……装飾の具合から言ってかなり良いものだとは思いますが」


箱の正体はオルゴールと便宜上呼ばれている魔道具であった。

もちろん魔道具だけあって普通のオルゴールとは違う。

起動すると音楽が流れるのだが、金属板をはじいて音を鳴らすわけではない。

どういった仕組かは分からないが様々な楽器の音色、時には歌声すら流れるのだ。

さきほどアルヴィンの言葉にあった装飾であるが、これも普通の装飾ではない、小さく異常なまでに精巧に作られた人形と楽器がセットになっている事が多く、曲に合わせて動くというギミックが付いている。


一つのオルゴールに複数の曲が入っているのが普通であり、収録されている曲は本当に様々で異世界の曲も多々含まれる。


そんなわけで一部の人間に非常に人気がありオルゴールを専門に収集するコレクターと呼ばれる存在もいる。さらには手に入るのはダンジョンのみと言う事もありかなりの高額で取引される。


「ま、何にせよまずはこいつをギルドに運んでからだな」


地上に戻り眩しそうに手をかざす一同。

外には噂を聞きつけた野次馬が待ち構えていた。

歓声や羨望の視線に軽く手を振り答えつつ探索者達はギルドへと向かうのであった。


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