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84話 「ダンジョン再び 5」




なだらかな坂を下りきった先、鳥居のように巨大な柱がそびえ立っている。

柱から先にはかなりの広さの空間があり、その中央に鎮座するように地竜が横たわっていた。

まるで死んでいるかのように動かない地竜だがときおり響く唸るような呼吸音がそうでは無いことを物語っている。

鳥居のような柱は言わば境界線のようなものだ、一歩でも先に踏み込めば地竜は目を覚まし侵入者に襲いかかる事だろう。


「……確かに地竜ですね」


「ああ、下位とは言え1階層で会えるとはついている」


柱の陰から中を伺う人影が二つ、アルヴィンとギュネイである。

ドラゴンの情報を持ち帰ったギュネイはアルヴィンらと交渉し助っ人としてアルヴィン、ラヴィ、アントンら3名の協力を得たのである。


「1階層でこれですからね……この先どんなのが出てくる事か」


「ま、そんな先の事はあとで考えればいいさ、今はとりあえず……腹ごしらえだな」


そう言ってギュネイは柱から離れ荷物を下ろして弁当を広げ出す。

一見大胆な行動ではあるが柱から向こうに行かない限り地竜が動くことはない。

ダンジョンとはそうなっているのだ。


「せっかくもらったケーキ食べておかないとね」


「食ったらしばらく休んで戦闘開始だ、間違っても柱から先にはいくなよ?」


弁当を食べ横になったり等、行進の疲れを癒やす探索者達。

十分に休息を取り英気を養った彼らは武器を手に取り動き出す。


まず柱を越えると同時にイーナが全員に姿隠しの魔法を使用した。

侵入者の気配に顔を上げ辺りを見回す地竜だが当然ながら姿が隠れている探索者達を見つけることは出来ない。

そうして地竜が戸惑っている間にも探索者達の準備は着々と進んでいく。



まず口火を切ったのはシェイラであった。

土の精霊を使役し地面から太い杭を打ち出し地竜を空高く跳ね上げる。

突然襲いかかった衝撃に悲鳴を上げる地竜であったが、当然それだけで終わるわけもなく、地上では先ほど打ち出された杭にビシビシと音を立て氷が纏わり付いて行き、ほんのわずかの間に凶悪な氷槍へと姿を変えていた。


下で起きている変化を確認した地竜はこのまま行けば串刺しになりかねないと空中でもがき、体勢を整えようとし始めるが。

そこにそうはさせないとばかりに雷の魔法が放たれた。

地竜の体に雷が走り筋繊維が硬直する、地竜は悲鳴を上げる事も出来ず氷槍へと落ちていった。


「刺さらなかったか」


「くるよ、壁出すから皆散開よろしくっ」


串刺しにこそならなかったが氷槍は地竜の腹を大きく切り裂いていた。

だがさすがは下位でも竜である、ガチガチと歯を鳴らし血走った目で探索者達をにらみつける姿からは弱った様子はまるでない。


探索者達に向かい角を向け刺し殺さんと突進する地竜。

その角が探索者達に届くよりも先にシェイラが分厚い土の壁を産みだした。


「じゃ、あとよっろしくう!」


壁が出た瞬間に一部を残して蜘蛛の子を散らすように辺りに散っていく探索者達。

分厚い土壁であったが、土竜は角を突き出し邪魔だとばかりに土壁に突っ込んだ。

土壁が思ったより脆かったか、それとも地竜の突撃の威力が高かったのか、激しい破砕音と共に土壁は粉々に砕け散り、そして土煙の中から地竜の脇を走る抜けるものが2名。


「おら、こっちだデカブツ!」


「どこ見てんだよっとお」


ギャリギャリと硬質なもの同士がぶつかる耳障りな音が辺りに響く。

すれ違いざまにギュネイとヒルダが竜の前足へ切り付けていたのだ。


剣は分厚い鱗に阻まれダメージらしきものは与えられていない、だがそれでも地竜にとっては不快だったのだろう、唸り声をあげ二人を追おうと首を二人へと向ける。


「ガァッ」


そして低く唸るような声とドッと言う鈍い音が響く。

二人とは逆に抜けていたラヴィが手に持っていた槍を竜の横っ腹へと突き立てていた。

地竜はその痛みに体をねじり甲高い鳴き声をあげる。


「むウ」


刺されば御の字、そのつもりで突き出した槍であったが、ラヴィが思っていたよりも深く刺ささったようだ。

槍は鱗と貫き皮膚を破り、筋肉に刺さると内臓の一歩手前と言ったところで止まっていた。


ラヴィを確認した地竜は後ろ脚で立ち上がるとその凶悪な前足をラヴィへと叩きつけようとする。

一方ラヴィはすぐ様槍を手放すとその巨大な盾で守りに入る、槍が思った以上に深く刺さったせいで筋肉に絡み取られ逃げる動作が遅れてしまったのだ。


巨大な金属塊どうしがぶつかったような、すさまじい音と衝撃があたりに伝わり、ラヴィを中心に地面が陥没する。

地竜の一撃を受けたラヴィは鎧の隙間から血を噴出させ地面へと片足をつく。


間違いなく仕留めた、そう地竜は判断し残りの小虫を踏みつぶすべく向きを変えようとし、ガクリとその動きを止める。


「むちゃくちゃ痛いじゃねーか、この野郎」


聞きなれない言語で呟かれたその言葉。

ラヴィは健在であった、地竜の前脚へフック付きのロープを絡ませ、自らの腕にも絡ませる様に持つと重心を下げ地竜の動きを阻害する。


動きを阻害するラヴィを忌々しそうに振りほどこうとする地竜だが前脚はびくともしない。

ラヴィは自らの自重に加え鎧の重さも加わり、その重さはトータル500kgを超える、地竜とは言え片腕で簡単に振り払える重量ではないのだ。


「おっと、こっちも見てくれよ」


そしてラヴィにばかり構えば反対側に居るギュネイとヒルダへの対応が疎かになる。

二人は地竜の注意が向いてないのを良いことに、左前足の鱗の薄い部分を狙い、剣を突き刺していた。


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