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82話 「ダンジョン再び 3」

先頭にいたギュネイに向かい片手で持つには不釣り合いなほどに巨大な斧が振り下ろされる。

オークの2mを越える巨体から放たれた一撃は轟音と共に地面を大きく削りとる。

人がまともに受ければひとたまりも無い威力ではあるが、さすがと言うべきだろうか、ギュネイは後ろへと下がりあっさりとその一撃を躱していた。


いきなり襲いかかってきたオークであるがギュネイが躱したのを見て警戒するように距離を取る。

よくよく観察すると斧を持つ腕の鎧を纏って居ない部分に血がにじんでいる。

ギュネイは躱すだけではなく振り下ろされ無防備に伸びきった腕に切りつけていたのだ。


「おっと、こっちにもいるんだよお」


そう言ってオークの左手側から斬りかかるヒルダ。

上段から放たれた一撃はオークの持つ盾によってあっさりとはじかれる。

だが盾を翳した事により生じたオークの死角を利用して、ヒルダは体勢を低くし地面を這うように剣を振り抜いていた。

その素早くトリッキーな動きにオークは反応できず、脚に走る痛みに悲鳴を上げる。


「フッ」


さらには怯んだ隙に放たれた矢がオークを襲う。

何本かは鎧や兜の丸みや盾を使い弾かれるが、全てを防ぎ切れる訳ではないようだ。残りの矢は鎧を貫きオークの体へと傷を負わせていく。


探索者達はオーク一体と言え決して油断せずじわじわと追い詰めていく、このまま行けば探索者達の完全勝利という形で終わるだろう。

だがそれはオークも感じた事だ、オークは徐々に守りに徹するようになり、じりじりと眠っている仲間の元へと下がっていく。


「こいつ仲間起こすつもりか……ソシエ! 俺が隙を作る、魔法を叩き込んでくれ」


「はいよー! やっと出番だよ~」


ギュネイの言葉を受け詠唱を始めるソシエ。

だがそれを見たオークは危険を察知したのか二人に背を向け仲間の元へ駆け寄ろうとする。

オークが逃げ出すのを見て、ヒルダは持ち前の瞬発力を生かし一気にオークの後ろに詰め寄ると脚に切りつけようとした。


「っと」


だが逃げようとしたのはわざとであった、オークは後ろから迫ってきたヒルダを察知すると何やら叫び声を上げ、振り向きざまに斧を横薙ぎに振る。

まんまと誘い込まれた形になるヒルダだが、振り向きざまに放たれた一撃は体勢が崩れていた事もあり精彩を欠いていた。

ヒルダは余裕を持って受け流し、返す刀で切りつけようとする、が。


「!?」


受け流そうと斧に剣が軽く触れただけにも関わらず、激しい音と共に持っていた剣が後ろに大きくはじかれる。

なんとか剣を手放さずには済んだが、体勢が大きく崩れてしまいそこに切り返した斧が迫る。


「あぶないじゃないの」


斧が迫り当たるかに見えた直前ヒルダの体がぶれ……否、ぶれたように見えるぐらい素早くよけたのだ。

斧はヒルダの体をかすめる事すら出来ず虚しく空を切り、そして同時にカウンター気味に入ったヒルダの剣がオークの手首を半ばまで切り裂いていた。


「逃がさんよ」


そこに追い打ちをかけるギュネイ。

先ほどのヒルダの一撃で斧がうまく使えないのだろう、オークは籠手でギュネイの一撃を受け止めた。

ギュネイは剣を両手で持ち、そのままじわじわと剣を押し込んでいく。

剣先が兜に触れるか触れないかといったところでギュネイは息を吸い、口を開く。


【発現せよ】


ギュネイがそう叫んだ直後、ギュネイの持つ剣に変化が起きる。

先ほどまで一見するとただの鋼の剣だったそれが、赤く光り輝いていくのだ。

剣から生まれた膨大な熱量はオークの体を焼いていく、剥き出しの腕や顔の皮膚は爛れ、鎧の中の肉すら焼いていく。

これにはタフなオークを悲鳴を上げ剣から逃れようと体を大きく反らす。


「ふぅぅううっ!」


体を反らしたオークの腹に向けギュネイが蹴りを放つ。

オークは倒れ、尻餅をつく格好となり、そこに二人は気合の声と共に剣を構え。

後ろに大きく飛び退いた。


【──雷帝の怒り】


二人の行動に虚を付かれたオークであるが、すぐにその理由がわかる。

激しい光と破裂音と主に雷がオークの体を直撃したのだ。


魔法の威力はすさまじくオークは全身のからぷすぷすと煙を上げ、破裂した血管から時折血を吹き出す。

もはや死に体となったオークにはもうなすすべがない、二人の手により生命活動を停止する。



「ふぅ、お疲れさん。残りの奴らは私がやっとくからあんたは手当受けときなよ」


「ああ、すまんが頼む」


そう言ってヒルダはオークの持っていた斧を担ぎ、寝ているオークの首をはねに向かう。

一方ギュネイは籠手を外しながらロレンの元へと向かっていた。


「ロレン、悪いが治療頼む」


「任されました。相変わらず強力ですがデメリットも多い剣でありますな」


ギュネイの手はオークの体ほどではないが皮膚が赤く腫れあがり火傷を負っているようであった。

強力な熱を発し、敵を焼くギュネイの持つ剣であるが。欠点としてその膨大な熱量によって使用者自身の体をも焼いてしまう。

ギュネイは耐火装備をいくつか重ね受けるダメージを軽減してはいるが、それでも火傷を負ってしまうのだ。


「んー、やっぱ良さそうな奴はこの斧だけだなぁ」


「ああ……思いっきり剣弾かれてたな、魔道具だろうな多分」


効果としては一撃の威力を上げるといったシンプルなものであるが、シンプル故に使いやすい。

斧と言う事で使い手が限られるが、そこそこの値段にはなりそうだと言うのがギュネイの見立てである。


「ちょっとー、こっち来てくんない?」


「あん?」


辺りを軽く偵察していたイーナから皆を呼ぶ声が聞こえる。

一同がイーナの元へと向かうと、その足元にいくつか魔法陣があった。


「これ、たぶんトラップの一種かしらね」


「……おそらくそうだろう、隠し扉と連携して動くようになっているのではないかな、隠し扉に入り探索を終え戻ろうと油断したところを襲う。と言ったところかな」


罠を見たカルロの開設に首を傾げるギュネイ。

疑問に思った事をカルロに投げかける。


「ん、じゃあ。ここの情報もってきた連中はなんで無事だったんだ?」


「……単に発動するまで多少タイムラグがあったか……聞いた話によると中は確認せずにすぐ戻ったそうだ、それで遭遇せずに済んだのだろう」


本当かどうかは分からないが否定する要素もない、とりあえず納得した様子を見せるギュネイ。


「こりゃますます隠し扉の中が楽しみになってきたな」


「ほんとほんと! ドラゴンとか居たりして」


「そりゃドラゴンがいれば嬉しいが……その時はメンバー集めに戻らんとだぞ」


笑いながら壁の裂け目に入っていく探索者達。

隠し扉と連動する罠に1階層にしてはやたらと強い敵、この先にある隠し扉の中に果たして何があるのか……一同の期待膨らんで行くのであった。


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