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75話 「いったんお別れ」

翌日、昼食をとる前に食堂に集まった従業員とアイネさん一行……それに何名かの探索者。保存食などを渡すにあたり加賀の加護を確認しておこうという話しになったのだ。

午前中はアイネさん方の予定があったため、開始は昼からとなっった。


「それじゃーはじめまーす。……の前にシェイラさんたちは今日はどしたの?」


「はっはー。それがねー装備整備に出しちゃってまだ戻ってこないのよねー。ほら今ダンジョン目当ての探索者一杯じゃない? それで鍛冶屋も手まわんないみたいなのよ……そんで暇してたら何かやるって聞いたから」


参加してみたと言うシェイラと頷くヒューゴとアルヴィン。


「どっこ行っても混んでてさーとりあえず預けてきたは良いけどあれ、今日明日じゃぜってー終わらないぜ」


「あー……了解でーす」


どうやらアイネさん達が出発した後も昼に限ってはいつもより作る量を増やさねばならないようだ。

とりあえずその事は頭の片隅においやると、加賀はあらかじめ用意してあった燻製肉を取り出す。


「これ、ついさっきできたばかりのベーコンです。最後の燻製するときだけお手伝いしたやつですがー……本当は1日置くのだけど、とりあえず焼いただけの食べてみてくださいなー」


そういって大きめの皿にどさりと炒めたベーコンを乗せる加賀。

すぐさま小皿片手に集まる一同、あっという間に皿の上が空になる。


「えぇー……アイネさんどでした?」


「ん……うん、おいしい」


それを聞いて軽く頷くと次に取り掛かる加賀。

最初のは元より問題ないと分かっていたのであっさりしたものである。


「それじゃー、バクスさん。同じ感じでベーコン炙ってくださいなー」


「お、俺か……まあ良いが」


言われて加賀と入れ替わりベーコンを炒めるバクス。

肉汁がこげ香ばしい匂いが漂う。


「うん……これも、大丈夫よ」


「ん、ここまでは予想通りだねー。それじゃ次アイネさんお願いしまーす」


はい、と返事をしふらりと立ち上がるアイネ。

フライパンを握る手は特に手間取る感じもなく、むしろ手慣れたようにすら見える。

それをみて加賀は軽く首を傾げ口を開く。


「もしかしてアイネさん料理できるんです?」


「えぇ、長生きしてると作る機会があるのよ、自分では食べないのだけど」


そういって軽く笑い……基本骸骨なので分かりにくいが笑ったような仕草を見せ、皿に炒めたベーコンを移すアイネ。

パクリと一枚口に放り込み咀嚼する。


「ん、これもいけるね」


「よかったー。それじゃ次いってみよー」


はい、これーと言って調味料を渡す加賀。

加賀が作ったもので今渡せるもので多少日持ちするのはケチャップぐらいであった。


「卵に乗っていたやつ、かな。試しに焼いてみるね」


起用にフライパンをゆすり卵の形を整えていく。

フライパンから皿に移された卵はきれいなラグビーボールの形をしていた。


「むっちゃ上手いですね……」


「ありがとう。うん、おいしい。昨日も思ったけど、この赤いの卵と相性良いね……」


どうやらかけるだけで大丈夫なようだ。

念の為ケチャップを使って炒め物作って貰うがこれも問題なし。


「あれ、条件だいぶゆるゆるだねー」


「緩すぎないか? いや、まあ良いんだけどな……」


「私としては緩いほうが助かる……王都からここまで往復2週間、その期間分の保存食作ってもらうなんて、ちょっと無理があるもの」


取りあえず作ったベーコン等の残りとケチャップを渡すことにした加賀。

ソースは在庫があまりなく、またすぐ作れるものでもないので調味料として渡すのはケチャップのみとなる。


「あとはそれだけじゃ飽きるでしょうし……保存の利きそうなクラッカーとかそのあたりも用意しておきますね」


加賀の提案に喜ぶアイネ。それを笑顔で眺める面々。ちらちらとローブから覗く骨がちとホラーではあるがほっこりした空気が流れる。


「それじゃーちゃんとご飯作りましょっか。みんな席で待っててね」


その言葉を聞いて歓声を上げる探索者達、気がつけば最初よりも人数が増えている。

それを見た加賀は苦笑しつつ取りあえずうーちゃんを確保しに行くのであった。



「そういや八木は今日おやすみなの?」


「ああ、人足りなさそうだからって休みとったんよ」


どうやら人手が足りないのを心配し、八木は休みを取っていたらしい。

その言葉に加賀はそっと心の中で感謝の言葉を呟く。

何だかんだでその辺り気が回る男なのである。



「それじゃ行くね、なるべく良い方向に持っていくから期待してて」


翌朝、馬車に加賀の作った保存食などを積み込むと、馬車は東にある首都へと向かって旅立った。

これからおよそ2週間かけ首都での会議を終わらせてここに一度戻ってくるのだ。


当初はちょっとしたトラブルになるかも、と思っていた今回の出来事だが終わってみれば何事もなく終わっていた。

むしろ加賀の加護の理解が深まり、アイネといった知り合い、協力者が得られた分良い出来事だったと言えるだろう。


とにかく2週間先までいつも通りの生活が始まる、探索者達はダンジョンへと向かい。八木は事務所に、宿の従業員は宿へとそれぞれ向かうのであった。

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