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74話 「不死者にも有効らしい」

早めですが投稿しておきます。

最後に地図を挿入してます、見たくないよーと言う方はお気をつけください。

※追記:シーサーペントぽい奴の下にあるのが主人公達のいる街です。

驚く加賀をよそにバクスの反応はいたって冷静である。

人数と期間を確認し、加賀へと声をかける。


「ま、いいだろう。全部で6人だったな……加賀二日ぐらい人が増えるがいけるか?」


「ふぇ……あっ、はい大丈夫だと思います。時間調整はいると思うけど……ですけど」


正直きついところではあるが、二日であれば何とかなると考えバクスを呼んだのである。

自分はいけると答える加賀であるが気になる事があり、ぽつりとつぶやくと人垣の方へと再び視線を向けた。


「ほかのお客さんへの説明どうしましょ?」


「ん?……ああ、うちに泊まっている連中なら問題ない。ただ客が増えたのと変わらんさ、俺から話ておくよ」


揉めた客がノーライフキングと聞いて宿に止める事に不安を覚えた加賀であるが、バクスに言われそれならばとあまり気にしないようにしたようだ。


「それじゃ、ちょっと行ってくる。加賀はそのまま買い物続けておいてくれ……ああ、人増えた分多めに買っておいてくれ」


「りょーかいでっす。うーちゃんいこっかー」


うー(デザートもおおめにつくるのよー)


ほいほいと返事をしつつバクスと別れ先を行く加賀、人垣の横を通ったときにちらりと様子を伺う。

宿の主人とバクス、それに6名の人物がそこにはいた。

人以外の種族の多いところから来たのだろうか、いずれの人物も角が生えていたり、肌の色が青みがかっているなど人とは違う特徴を持っているようだ。

だがノーライフキングと聞いて想像するような姿の者はいない、ただ一人だけローブを深くかぶり表情をうかがえない者がいる。


(……多分あの人だろうけど、あとで宿であえるし。ま、いっか)


どんな姿をしているのか興味のあった加賀だが、どうせ宿で会うことになるのだからと考えとその場を離れていった。



「たっだいまー」


買い物を終え、大量の荷物を抱えたまま厨房へと向かう加賀とうーちゃん。

食堂で茶を飲んで休んでいたバクスが声をかける。


「おう、お疲れさん。……まさか言ったそばからこうなるとはなあ」


「そう言うのフラグって言うらしいですよー。それであの人達はどしたので?」


荷物を置き食堂へと戻る加賀であるが、あたりをキョロキョロと見渡すとバクスに向かい口を開く。

玄関にも食堂にも彼らの姿はない。


「ああ、さっき咲耶さんに宿の案内してもらったから今は部屋に居るだろうよ。……どうかしたのか?」


「いあー挨拶しといた方がいいかなーって。夕飯の時でいいかなー」


そう言って厨房に戻る加賀、今日はいつもより6人も多いのだ料理も多めに仕込んでおく必要がある。


「なるべく温め直すだけで良い奴をメインにしてと……」


注文を聞いて一から作るようなのは避けた方が良いだろう。

加賀はレパートリーから該当するレシピを思い起こし仕込みに入るのであった。



その日の夕方、食堂は何時も通り盛況であった。

加賀が気にしていた元々泊まっていたお客さんの反応だが、バクスの言うとおり特に気にした様子は見られなかった。

せいぜい側を通ったときに軽く挨拶を交わした程度である。


「はい、おまたせしました今日の日替わりです。追加で注文するときは声をかけてください」


普段とは違うお客さんがいるので咲耶の加護は封印中である。

故に空中に皿を浮かべることが出来ずなかなか配膳に苦労していた。

今は見かねたシェイラが特製のデザートを報酬に臨時で手伝いを買って出た為、なんとか回せている感じである。


「むうっ」


「おほっ……」


加賀の料理は人以外の種族にも受け入れられたようだ。

軽く感嘆の声を上げると黙々と料理を口に運んでいく。


「……あっ……すまん」


ある程度食べ進めたところでふと手を止め謝罪する男。


「いいのよ。私のことは気にせず食べてね。……せっかくだから私もいただこうかしら」


男が謝罪したのは例のフードを被った人物だ。

顔が見えず分からなかったが声からしてどうやら女性のようだ。

周りが食事を進める中、一人料理に手をつけていなかった彼女だがそう言うと料理を口へと運んでいく。


「……? ……おいしい」


そしてそう呟くとピタリと動きを止める。


「そ、そうですかそりゃよか──」


「違う、本当に、美味しいの……」


男の声を遮るように震えた声で話すローブ姿の女性。

後はひたすら無言で料理を平らげていく。


ちなみに加賀が予想していた通りフードを被った女性が例のノーライフキングである。

ノーライフキングである彼女は食事を必要としない。代わりに生き物の生気を吸って糧としている。

生気を吸うとは言え自分の体を最低限維持するだけであれば周りへの影響はほぼ無い。もっとも意図的に吸えば話は変わってくるが……彼女が畏れられ、宿泊を断られたのはそのあたりが原因だ。

とにかく彼女は食事を必要としない、しても特に味を感じるわけでもないので意味がない。たまに付き合いで食べて見せる程度なのである。


「お代わりいりますか?」


いつのまにか空になっていた皿を呆然と見詰める彼女に皿が空であることに気がついた咲耶が声をかける。

その声に無言で首を大きく縦にふるのであった。



「……満足。空腹が満たされたのは何十年ぶりかしら……」


食事を終え満足げに話す彼女。

まわりの客は皆食事を負えシェイラをのぞき部屋へと戻っている、今食堂にいるのは彼らと宿の従業員のみだ。


「……? お粗末様でした。あ、よければデザートどうぞ」


何十年ぶりと聞いて首をかしげる加賀。

それを見ていた彼女はデザートを受け取ると口を開く。


「頂きます……あなたの世界には私のような存在は居ないのでしたね」


デザートを食べつつ自分の種族について語る彼女。

ノーライフキング……いわゆるアンデットあること、他の生き物の生気を吸いあげる自らの力、糧としている等々。

大体が加賀のイメージにそった内容であったがいくつか気になることがあり、加賀は彼女へと質問を投げかける。


「えっと……こう吸い取る相手を指定とかは出来ないんですか? 例えばその辺に生えてる草と……」


「それが出来たら良いのだけどね。だめなのよ。吸おうとすると広範囲の生き物から無差別にすっちゃうの……」


そう都合の良いものではないらしい。


「それじゃずっと必要最低限だけでがまんしてたと……」


スプーンを口へと持っていくさいに袖からちらりとのぞく腕。手の甲は手袋で見えないがちらりと見えた腕はほぼ骨である。

聞けばこの世に生まれた?際には人と変わらない外見をしてたそうだ、だが時がたつにつれ徐々に痩せ細り今ではほぼ骨と言う状態になってしまったのだ。


うっ(……どぞ)


それを聞いて食べようとしていた二つ目のデザートをそっと差し出すうーちゃん。


「ありがと。でもさすがにもうお腹一杯なの……君が食べていいよ」


「ところで……この事は会議の場で報告するのか?」


バクスの言葉にええと頷く彼女。

思わず眉間に皺がよるバクスをみて言葉を続けた。


「でも、安心して。絶対に問題にはさせないから……」


「そうか……よろしく頼む」


急に真面目そうな話をしだした二人をよそに先ほどから考え事をしていた加賀は二人の会話が泊まったのを見計らい声をかける。


「はい、質問いいですかー?…………ええっとお名前は?」


質問をする前にそもそも名前すら聞いてなかったようだ。

とっさに名前の質問へと切り替える。

彼女は軽く笑ったような仕草を見せ口を開く。


「アイネ クライネ トラウムです。長いのでアイネでいいですよ」


「では、アイネさん……この街を出るのってまだ先ですよね?」


「ええ……少しタイミングをずらさないと行けないから。そうね明後日には出る予定よ」


それを聞いてほっとした様子を見せる加賀、でしたら……と言葉を続ける。


「道中食べれそうな保存食用意しましょうか? 目的地までどれくらい掛かります?」


「……すごくありがたい提案です。よろしいのですか?」


そう言ってバクスの方へと顔を向けるアイネ。

バクスは軽く肩をすくめると口を開く。


「加賀がやるっていうなら俺は構いません。ま、無理しない程度にな?」


「ん、だいじょぶ。無理じゃない範囲でやるよー」


その緩い言葉とは裏腹に加賀の顔はやる気に満ちていた。



挿絵(By みてみん)

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