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71 「ダンジョン後編」


「相変わらずえぐいな」


「……アリ、がトウ?」


最初の奇襲が効いたのだろう戦闘はあっさりと終了する。

運悪くラヴィの相手となった一体は盾ごと鎧を貫かれ即死。

ヒューゴとアルヴィンの相手も目が見えないため、手に攻撃をうけ武器を落としてしまい禄に抵抗もできず切り捨てられた。

最後の一体は逃亡をはかるもガイの放った矢を頭に受け即死。

前衛を務めた彼らにはかすり傷一つ無い。


「盾ごと鎧貫くってどうなってんだよ、まったく……」


「あ! あったあった」


「あん?」


戦闘の終わり少し立ち話をしていた前衛組。

ふいにシェイラの歓声が聞こえ、声の方へと振り返る。

シェイラのの手には小さな宝石のついた首飾りが握られていた。


「やっぱなにかあると思ったんだよねー、やっぱ魔道具もってたみたい」


戦闘開始と同時に放った魔法を一匹だけレジストしていたのが気になっていたのだ。

シェイラの放つ魔法であればホブゴブリンの耐久力で耐える事はまず出来ない、故に何かあると見て戦闘終了後に死体をあさっていたのである。


「なかなか幸先好いのお、戻ったら鑑定して貰うとするかの」


「安くても今日の宿代にはなるでしょう。では先に進みましょうか、また斥候お願いしますね。ガイ」


「うぃっす!」


言われて再び松明片手に先頭を行くガイ。

ホブゴブリン達の死体は首飾りを取った以外特に何かするでもなく放置されたままである。

体内にある魔石をとったり鎧を剥ぎ取ったりする事も可能ではあるが、魔石は主に掛けだし連中の収入源となり、値崩れ防止として高ランクの探索者達は基本的に取らないのが暗黙の了解となっている。

また剥ぎ取りに関しても同じ理由とそれに加え、重さの割に対した値段とならないので基本放置となる。

放置された死体と装備は時間がたてばダンジョンに吸収されるので腐敗して困るといったことも無い。


歩くこと半時ほど、またガイが立ち止まると停止に合図を出す、先ほどと違い音を探ることはせず後ろに続く者の元へと戻り口を開く。


「この先ちょっと遠いけど敵が居るっす。音からして開けた空間を飛んでると思う……っす」


「飛ぶタイプですか、下位のデーモンだと精霊に気付くかもしれないですねえ」


「こうもり系だと楽なんだがのお」


飛んでると聞いて顔をしかめるチェスターとアントン。遠距離攻撃の手段が乏しい二人にとっては苦手とする相手だ。

それはヒューゴやラヴィにとっても同様だ自然と視線が遠距離攻撃を得意とするものに集まる。


「入ると同時に広範囲の魔法叩きこみます。私とシェイラで同時にやればそれなりの数は落とせるでしょう」


アルヴィンの視線を受けて力強く頷き、具合を確かめるように杖を握り直す。まだそれほど魔法は使っていない、魔力はまだまだ余裕がある。


「あとはガイを含めた3人で少しずつ削っていきます。守りは4人にまかせます。皆に守りの魔法をお願いしますねイクセル」


「お任せ下さい」


巨大な杖を持ち皆に守りの魔法をかけていくイクセル。

その優しい顔つきの通り、そう言った魔法を得意としているようである。


「下位のデーモンなら火の魔法を使ってくるかも知れません、水の精霊の守りもつけておきましょう……では行きましょうか」


その言葉を合図をに陣形を組みつつ前へと進み出す。

先ほどとは違い後衛を囲むように前衛が配置されている。

空を飛ぶ敵故にどこから襲ってくるか分からない、後衛を囲み穴をなくすのが目的だろう。


「………(いたぞ)」


声を出さず口の動きだけで伝えるヒューゴ。

合図を受けアルヴィンとシェイラの二人が前へと出る。

使用したのはいったい何の魔法であったのか、複雑に絡み合いあたりに猛烈な閃光と暴風を巻き起こす光景から雷と風に属するものとは推測できるが、時折爆発も起きており別のものの混ざっているのかも知れない。

ともかく確実なのはその魔法がもたらす威力は絶大であるということだ。


「おっし、良いな大分落ちたぞ」


「ええ……ではラヴィを先頭に前進を」


魔法の猛威が過ぎた後にはぽっかりと空間が開けていた。地面にはずたぼろになり、もはや原形を留めていない何かの死体が。少し離れた空中には魔法の範囲外にいたデーモンの生き残りと思しきものがいた。

そして遅まきながら突然の襲撃者へと敵意を露わにしだす。


「……くるぞ! 盾構え!」


合図と共に盾を構えた前衛に炎の塊が雨のように降り注ぐ。

だが、あらかじめ掛けていた守りの魔法と水の精霊の守りによりほとんどダメージらしきものはない。せいぜい肌が軽くひりつく程度である。


デーモン達は徐々に追い込まれていった。

魔法でダメージを与える事とは出来ない、だが手をこまねいていれば次々と飛んでくる矢や魔法により打ち落とされる。

かといって飛び込んでも待ち構える前衛にやられるだけである。

彼らは徐々に数を減らす他なかった。


「これでしまいっす!」


大きく声を上げたガイの放つ矢が最後の一匹を貫く。


「ふぅ……なかなかに数が多かったですね」


「魔力は平気かのお、ちょっと休憩いれよかの」


アントンの言葉に確かめるように杖を持つシェイラ、そのままうーんと悩んだ様子を見せ、杖を下ろすと口を開いた。


「最初の魔法がでかかったねーさすがに減ってるわ。まだ何戦かはいけるけど休んだ方がいいかな?」


「そうでしょうね。それに目立った怪我は無いようですが軽く火傷ぐらいはしているかも知れません、今のうち治療しておいた方良いです」


シェイラとイクセルの言葉を聞いてふむ、と呟くアルヴィン。

自身の魔力も減っていたのだろう、休むことに依存はないようだ。


「では休憩をいれましょう。確かに加賀からお弁当を貰ったそうですね、ついでなのでお昼もすませてしまいましょうか。シェイラ」


「あ、そうそう。お弁当もらったんよー! ほらこんないっぱい」


「あほか、こんな所で広げんじゃねーっての」


早速弁当を広げようとするシェイラをたしなめるヒューゴ。

あたりにはデーモン達の死体がごろごろと転がっており、とても弁当を食える状態ではない。


「えー……ちょっと見せようとしただけじゃん~。じゃあ、さっさとすませてご飯にしよー」


軽く文句を言いつつも死体の確認を始めるシェイラ。

もしかするとまた魔道具を持っているかも知れない。他のメンツもやれやれといった様子で確認を始めるのであった。


その後彼らは夕方までダンジョンに篭り、計5回の戦闘を行う。

発見した魔道具は合計3個と1階層である事を考えればかなりの成果と言えるだろう。

飯時となりダンジョンを引き上げた彼らはほくほく顔で宿へと戻るのであった。

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