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70話 「ダンジョン」

ある日の早朝、今日も宿の食堂は盛況である。

早朝から仕事を始める者が大半のため自然と皆同じ時間帯に食堂に来ることとなる。

朝は日替わりのメニューのみなので、お酒やそのつまみの注文が入らない分まだ楽であり、その為人数制限をかけなくとも何とか回し切れている。


「はい、これ頼まれてたお弁当ですー」


「おー、ありがと加賀っち」


玄関にて前日に頼まれていたお弁当をシェイラに渡す加賀。

ちらりと玄関の外へと視線を向けるとそこには何時もより物々しい姿をした探索者達の姿があった。

皆が皆首から下を露出の少ないインナーを着込み、その上に鎧やら何やらを身につけているようだ。


「今日はダンジョン本格的に潜るんでしたね、気をつけて行ってくださいねー」


「なーに、問題ないさ。まだ1階層だし油断しなきゃ余裕よ余裕」


土産話でも楽しみにしてな、と手を振り鼻歌交じりで外へと出るヒューゴ。

そこで再び玄関の外へと視線を向ける加賀。視線の先にる彼らはまだ街中と言うこともあり、頭装備まではつけていないようだ。それ故に彼らの表情を伺うことが出来たが、彼らの表情に不安は浮かんでいない。確かにヒューゴの言う通り1階層であれば油断しなければ問題ないのだろうと、加賀は判断する。


「…………さて、屋台の準備しなきゃ。うーちゃんおいでー」


皆を見送りうーちゃんを連れ厨房へと向かう加賀。

去年から続けている屋台での軽食販売だが宿が完成した今も続けていたりする。常連が出来てしまいやめるにやめれなくなってしまったのだ。



時間は少したち、街の中心から南に向かう道の先、たくさんの人が集まるダンジョン前。そこに宿の客である彼らもまた集まっていた。


「私たちは入って東の方に向かう予定ですが、あなた方は西に向かう。でよかったですよね。ギュネイ」


「ああ、それで良いよ。1階層だしな、皆でぞろぞろいってもしょうがないさ」


そうアルヴィンに言葉を返すギュネイと呼ばれた少し目つきの悪い男。それに追従するように残りのメンバーを軽く頷く。

どうやら彼らはPTを二つに分けてダンジョンの攻略を進めるようだ。これはまだ1階層と言うこともあり難易度が低いためである。

深い階層の探索や各階層の出口にいる守護者とよばれる存在との戦い、これらを攻略する場合は大人数で行くのが常である。


東に向かうのはアルヴィンを中心とした元々宿にいたメンバーにラヴィとシェイラを加えた7人。

西に向かうのはギュネイを中心とした8人からとなる。

ギュネイ側の人数が多いのはラヴィが前衛として極めて優秀な為である、全身を硬い鱗に覆われ、その巨体がもつ力はオーガ等の大型の魔物とまともにやりあっても力負けすることはない。


ダンジョンの中は階層にもよるが基本薄暗い、先頭を行く斥候役のガイは弓は背負ったまま松明を片手にゆっくりと歩を進めていく。

浅い階層ではそこまで危険な罠は無いがそれでも罠にはまることは出来るだけ避けたい、斥候役のガイだけではなく、よくよく目を凝らすと先頭を行くガイのすぐそばにうっすらと光の帯が見える、これはアルヴィンの精霊魔法によるもので敵意のあるものが近づくと知らせてくれる効果がある。また時折シェイラが魔力を探知する魔法をかけ魔法的なものにより作動する罠の感知を行っている。

これら3人の協力によりほぼ全ての罠を避ける事が可能となっているのだ。


「………」


先頭を行くガイが不意に立ち止まると、後続へ続く者へ止まるよう合図をだす。

耳に手をあて辺りを見渡す様子から周囲の物音を探っているのがわかる。


「………向こうですね」


ガイが動きを止めある方向を指さす、それを確認したアルヴィンが何事か呟くと、ガイの周りにいた光の帯がより薄くなり、ガイの指さす方向へと向かっていく。


「あちらに7体いますね、大きさからしてゴブリンではありません……ホブゴブリンあたりでしょう。ラヴィ」


「オウ」


のそりと盾と槍を構えガイと入れ替わるように先頭に立つラヴィ。

全身を鎧で覆われた全高2.5mを超える巨体、さらには半身を覆う巨大な盾と巨大なハルバードを片手で軽々と扱うその姿は味方には非常に頼もしく映るだろう。

ラヴィの左右後ろにはヒューゴとアルヴィンが、そしてその後ろに後衛を守るようにチェスターとオルソンが立つ。これが彼らの何時もの陣形なのだろう、ラヴィは後ろをちらりと確認するとゆっくりと歩を進め始める。



「………」


ラヴィを先頭にゆっくりと進むこと数分、ラヴィの視界が前方に居るホブゴブリンの姿を捉えた。

極力音を立てず歩いていた為、ホブゴブリンらは接近する者の存在にまだ気が付いていないようである。

無言ですっと手を上げるラヴィ、それを見てシェイラはこちらも無言で杖を前方に向け小さく何事か呟くと予め唱えておいた魔法を発動させた。

杖の先端が放電したかの様に雷を帯びたその瞬間、前方の空間で強烈な光と共に破裂音が鳴り響いた、


「いクゾ!」


音を合図に一気に飛び出すラヴィと無言でそれに続くヒューゴとアルヴィン。

シェイラが発動した魔法は雷の魔法であった、その発動地点には体からうっすらと煙をあげ倒れこむ2体のホブゴブリンと、こちらはレジストしたのかふらつきながらも立っている1体が居た。

残りの4体は魔法の範囲外だった為ダメージこそ受けてはいないが、光で目をやられたのか悲鳴を上げつつ武器をやたらに振り回している。


「……フンッ」


まずは弱っているのを確実にしとめる事にしたのだろう、その巨体からは想像できない速度で一瞬で距離をつめたラヴィはふらつくホブゴブリンへと槍を突き出す。

瞬く間に二度突き出された槍は魔法でダメージを追っている上に目もやられていた為だろう、防ぐこともできず槍は胸と喉を貫いていた。

悲鳴を上げることも出来ずくずれ落ちるそれをちらりと一瞥すると、ラヴィはすぐ様手近な一体に襲い掛かった。


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