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63話 「打合せin領主の館」

早朝建築ギルドにて

幾枚かの紙を見ながら親方とバクスが話し込んでいる。


領主の館に行く前に軽く打ち合わせをしているのだ。


紙は宿を建築する際に作成した外観図、それと八木が昨日帰宅してから寝るまでに書き上げたもので街全体の俯瞰図、メインの通りの絵、中央広場や大きめな建物といった物のラフ画になる。

これらは草案を出す際にどういった絵を出せば良いか確認する為サンプルとして用意した者である


またラグ画についてはせっかくだからということで八木の趣味がなかなかに組み込まれたものとなっているようだ。


「ほう、これはなかなか……イメージはつけやすいんじゃないかな? しかし昨日の今日でこんなのを用意するとはな、何か参考になるものでもあったのか?」


「参考……昔趣味で描いてた奴を参考にしましたね」


「なるほど、八木はこういった街が好きなのだな」


八木の中にあったこれぞファンタジーというイメージをそのまま絵にしたそれを褒められ、照れくさそうというか恥ずかしそうに頭をかく八木。趣味で描いたファンタジーな街のイラスト。人によっては黒歴史の分類されかねないものである。


「? まあ、良い。そろそろ行くとするか、今から行けば約束の時間前に余裕で間に合うぞ」


「……うぃっす」


紙を丸め鞄に突っ込むと席を立つ二人。

普段より上等な服を着込んだ親方を先頭に領主の館へと向かう。


街の中央広場から北へ延びる道をまっすぐ行った先にある大きな建物が領主の館である。

門に近づいたところで門番に止められる二人。親方が書類とギルドカードを見せ、中へと通される。


領主の館に入った二人は部屋へと案内され、そこで担当者が来るまで待つよう案内される。

革張りの柔らかな椅子へと深く腰掛けふぅと息を吐く。


「……緊張してきた」


「諦めろ、なるようにしかならんよ……きたようだな」


「うひぃ」


コツコツと廊下を歩く音が聞こえ部屋の前で止まる。それと同時に扉がノックされ二人の男が入ってくる。

一人は痩身で髪を後ろに流した男だ、その顔に穏やかな笑みを浮かべ二人を見る。

もう一人はやや小太りで背は低めの男である、坊主に近い短めの髪と生真面目そうな顔が特徴である。


八木と親方は二人が入ってきたのを見て、席を立ちそれぞれ挨拶を交わす。

痩身の男は領主の補佐官で名をスヴェン=カールフェルトと言う


「スヴェンと呼んでくれ」


そう補佐官に言われちらりと横目に親方を見る八木。親方が軽く頷くのを確認し補佐官に向きあうとお互いしっかりと手を握る。


「よろしくお願いします。スヴェンさん」


もう一人の男は書記係として参加しているとの事だ。その生真面目そうな顔に笑みを浮かべ手を差し伸べる。


「ニルスです。書記係を務めさせていただきます」


「よろしくお願いします。ニルスさん」


お互い挨拶が終わった所で椅子に座ることを勧められ腰かける二人。

では、早速ですが……とスヴェンが切り出し、思わず身構えつつ話を聞くのであった。



「ええ……まずはこの様な形で出して頂ければ問題ないでしょう。領主の館については内装についても欲しいですね」


「そうですか……内装についても用意致します、期間はどれほど頂けるのでしょうか?」


八木がスヴェンにラフ画を見せた反応は悪く無いようだ。

内装について欲しいとの要望があったが、時間がなく今日の顔合わせに間に合わなかっただけで元より用意する予定だった八木は問題なく了承する。

次いで期間を確認する八木、ラフ画であればそこまで時間がかかるものでは無いが正式に提出するさいにはそれなりのレベルに仕上げておく必要がある、期間によっては時間が足りない可能性がありここは抑えておかねばならない。


「ひと月を予定しています。ですが2週間たった時点で途中でも良いので一度見せてください。そこでこれでもう十分と判断すればそこで一旦納品してもらいますし、不足分があれば指摘します。もし時間が不足するようであればその時に言ってください」


「ひと月と2週間で一度見せるですね、分かりました……ちなみに納品後はどういった流れになるのでしょうか?」


ひと月と聞いて少し安堵した様子を見せる八木。

ベースとなるものがあるのでひと月あれば十分間に合うと判断したようで、次の予定についても確認を行う。


「一度納品頂いた段階で領主含め内容について確認します、そのさい問題があればその部分について修正を行っていただきます。その場合期間についてはもう一度話し合いましょう」


「分かりました、納品し確認いただいてる間は私はどうすれば良いでしょう?」


「おそらく確認するまでに結構な時間がかかります、早くても1週間……遅ければひと月はかかるでしょう。その間は別のお仕事をやっていただいて構いません、ただあまりにも長期の仕事やこの街から離れる事になる仕事については遠慮して頂きたい」


他の仕事をやっても良いと言う事でほっと胸を撫でおろす八木。

何もできずただ待機と言うのは中々に辛いものがある。



「……では、そういったところで本日はこのあたりでお開きとしましょうか。この後食事会でも……と考えたのですが、何分予定が詰まってましてね。またの機会とさせてください。ニルス、お二人に議事録の写しを」


「はい、今用意致します」



時間にしておよそ30分、領主の館で貴族と初めての出会いはわりとあっさり終わる事となる。

その後議事録の写しを受け取った二人はひとまずギルドへと帰路につくのであった。

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