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3話 「街道? 前」

うーちゃんと別れ森の中を進む八木と加賀。

森の中は最初の地点と同じようにそこまで木が密集してはいないが、藪が点在する為歩きにくいようだ。

八木は拾った枝を振り草を払いつつ進んでいる。


先頭を歩いていた八木が何かを見つけたのだろうか、立ち止まり声をあげた。


「おお?」


「どしたの?」


「何か道っぽいのに出たけど…これは街道とかじゃねえなあ。」


「そうだねえ見た感じ獣道ってやつかなー」


八木の前には藪がとぎれ確かに道らしきものがある。

だが整備された道ではない、踏み固めてるうちに自然と道になったものだろう。

獣道である。つまりそこを頻繁に通る生き物がいるということだ。

そして獣道の大きさからしてかなり大きな生き物行き来していることが伺える。


───がさり。


二人が進んでいる方向に対し左手側から何かが草を揺らす音が聞こえる。


───がさがさ。


音を出している犯人、恐らくはこの獣道を作った生き物だろう。

音は徐々に近づいてきていて、二人のすぐ近くまで来ていることが分かる。


八木は音のする方を見つめているが、音の発生源を見つけてしまったのか口をぽかーんとあけて固まってしまっている。

加賀はというと恐怖の為だろうおそるおそるといった感じで音のする方を振り返り…それと目があってしまう。

そこにいたのは



恐ろしく巨大な猪だった。



「でっか!?」


「に、逃げるぞ加賀!!」


「何あれ猪!?猪ってあんなでかいものだっけ!?」


もちろん地球の猪はそこまで大きくはない、ただしここは異世界である。

二人の前に現れた猪は動物ではなく魔物に分類される生き物だった。

その体高は加賀の背丈ほどあり、その質量は比べるべくもない。

口からそそり立つ2つの牙はいかには頑強で長大であった、あれに突かれれば加賀は元より八木ですらひとたまりもないだろう。


「って、八木はやぁぁあああ!?」


慌てて逃げ出した二人であったが加賀に比べ、八木の足が速すぎた。

異常に発達している筋肉は伊達ではないのだろう、加賀も懸命に走ってはいるが二人の距離はどんどん離されていく。

加賀はこのまま置いていかれてはたまらないと声を上げる。


「ちょっ、ちょっと待ってえええええ!!」


加賀がついてこれてないのに気がついた八木は振り返り立ち止まりと声をあげた。


「はよこいっ」


「わかってるよっ」


加賀がなんとか追いつくと八木はひょいと加賀を肩に軽々担ぐと再び走り出した。

加賀を担いでも先ほどまでとほとんど変わらない速度で走る八木。

この分なら猪も撒けるのではないか、と加賀は後ろをみるが


「PUGYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」


猪は叫びつつものすごい勢いで追いかけてきていた。

八木の走る速度も相当速いが明らかに猪の方が上であり、このままだといずれ追いつかれる。

追いつかれた後はただではすまないだろう。


「八木!追いついてきてる!」


「魔法だ!魔法!何でもいいからぶちかませ!」


八木の言葉に突き動かされるように精霊魔法を使う加賀

焦ってるためだろう、精霊へのお願いは実にシンプルにただ一言だけ。


「精霊さん!あの猪やっつけて!」


「PGY!?」


単純な指示だったがそれでも加賀の呼び声に答え、周りにいる精霊全てが行動に移った。

不意に黒い靄が猪の顔を覆い、次いでぼこりと音を立て杭状になった岩が猪の足元から飛び出し腹を強打、猪を大きく打ち上げる。

それと同時に何もない空間からちろりと燃え盛る舌のようなものが現れ這い寄るように伸びていく、青みがかった半透明の女性の手から猛烈な勢いで氷の礫が、薄緑の半透明の女性の手がはなった不可視の風の刃が猪の背へと襲いかかった。

それらが猪に当たった瞬間熱した鍋に水を入れたような音が大きく鳴り響き、あたりは蒸気に覆われてしまう。


「うひゃあ!?」


「やったか!?」


「それフラグ! ……でも追いかけてきては無いみたい!」


「よっしゃ、とりあえず逃げっぞ!」


蒸気で覆われた事で猪を倒したかどうかまでは確認出来ないが、蒸気の中から猪が飛び出てくることはなかった。

八木は少しでも遠くへ逃げようと加賀を担ぎなおすと再び走りだした。


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