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296話 「内緒の仕事」

時は1年ほど遡る。

事務所で休憩をしている八木の元へエルザが封筒を携え訪ねてきた。


「八木さん、少し宜しいでしょうか?」


「ん? なんでしょエルザさん」


「実はこう言った依頼が来ていまして……」


エルザが訪ねてきたのを見て椅子から腰を浮かしかけた八木をエルザは軽く手で押しとどめる。

そして封筒を八木へと手渡すと自分も椅子へと腰かけた。



「ほうほう……へぇ」


仕事の依頼ということで封筒を受け取った八木であるが、受ける受けないは別としてまずは内容の確認をすべく封筒をあけ、中に入っていた手紙を取り出した。

そして興味を惹かれる内容だったのか読み進めていくうちに徐々に八木の表情が変わっていった。


「面白そう。うん、受けるよこれ」


読み終えた手紙を折りたたみ封筒に入れなおした八木は、読み終わるのを待っていたエルザへと依頼を受けることを伝えた。


「ありがとうございます……どんな内容だったんですか?」


どうもエルザは封筒を託されただけで依頼の内容は知らされていなかった様だ。

普段であれば同じギルド員であり、仕事の内容を話すこと自体は問題はないが、今回はどうも様子が違う。

八木は少し気まずそうに頬をかくとエルザに向かい説明をしはじめる。


「えっと……ごめん、完成するまで内容は話しちゃダメらしくて……」


「そうでしたか……それでは完成するのを楽しみにしていますね」


どうも今回の依頼は同じギルド員であっても内容について話してはいけないらしい。

それならば仕方が無いと、エルザは八木に完成を楽しみにしていますと一言残し業務へと戻っていった。



そして同じ八木がエルザから依頼を受け取っていたころ、加賀の元へこちらもギルドからの封筒が届いていた。

ただ内容についてはギルドで説明するので来いとなっている所が八木とは異なる点だろうか。


「むー……せっかくおやつ食べようとしてたのに」


うー(ねー)


ちょうどおやつを食べようとしていた時に封筒が届いたらしく、うーちゃんと二人ぷりぷり怒りながら歩く加賀。

それに同意するように相槌を打つうーちゃんであるが、なぜかその頬はぷっくり膨らんでいた。


「うーちゃんその頬のふくらみは……」


う(いる?)


「いらにゃい」


うーちゃんは宿を出る際にきっちりおやつを確保していたらしい。

頬をぐいぐいと押しながらいる?と加賀に尋ねるが勿論加賀の答えは否である。


「なんか依頼受けてほしーんだって。 これに中身書いてあるみたい……封筒にいれときゃいいのに」


ギルドで受け取った紙をぴらぴらと振って見せる加賀。

紙を渡すだけなら初めから封筒にいれておけば……とおやつを食えなかったうらみから加賀の口から文句がでるが、それはそれ。とりあえずうーちゃんと二人で中身を見るのであった。

ほかの人に見せるなとは言われているが、でかい兎はきっとその範疇では無いだろう。


うー(どりどり)


「ふんふん……っほー」


はじめはむーっといった表情を浮かべていた加賀であったが、内容を読み進めていくうちに何時もの表情へと戻っていく。

こちらも八木と同じように興味を惹く内容である様だ。


「そんな事あるんだねえ……うん、せっかくだし受けようかな」


うー!(あじみはまかせろー)


加賀の依頼ということは料理関係である。

加賀はもとよりうーちゃんも味見が出来るとあって非常にやる気であった。



そして再び現在へと戻る。

午後のおやつを食べていた二人の元へと再び封筒が届く。


「二人とも封筒が届いてるいるよ」


客が来たので対応に出ていたアイネが、封筒を二つ手に食堂へと戻ってくる。

加賀と八木は封筒を受け取ると封を破り中身を確認する。


「おー、ありがと~」


「どもっす。 どこからかなー……あっ」


「んー? ……あ」


内容を見た二人がそろって声を上げる。

それを不思議そうに眺めるアイネ。


「二人ともどうしたの?」


「前に受けた仕事の件ですね。 施設が完成したらしーっす」


アイネの問いに答える加賀。

それを聞いたアイネはなるほどといった表情であり、加賀はあれ?と首をかしげていた。


「あれ、八木もなんだ?」


「なんだ加賀も……もしかして新しくできたダンジョンの件か?」


加賀の言葉を聞いてもしかして自分と同じ仕事を受けたのでは思った八木が確認するように言ったセリフ。

それを聞いた加賀は慌てて八木の口を両手でがばっと塞ぎにかかる。


「ちょっ、八木八木。言っちゃまずいって」


「いや、良いみたいだぞ。手紙読んでみ」


「ん……」


ぐいぐい押さえてくる加賀の手を掴んで引きはがした八木。

手紙を顎でさして中身を読むよう加賀へ伝える。



実際加賀が手紙の内容をよく読むと、実際八木の言う通り最初にほかの人に話すなと言う内容はもう解除されていた。

そのことを理解した加賀は八木と共に今回受けた仕事の内容についてアイネへと話していく。

フォルセイリアの東、山の中腹にできた新たなダンジョンとそのダンジョン内に作られた施設について。


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