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27話 「街の外」

二人がギルドに登録してから数日がたつ。

その間、加賀は町中を回り食材の確認、さらにはいくつかの飲食店をバクスと共に巡り提供される料理の確認を行っていた。


「んぉ~…」


八木はと言うとギルドに通いこの辺りで入手可能か建築材の確認、さらにはこの街における宿の形式などについてひたすら調べ、バクス邸ではひたすら図面を書き起こす作業に没頭していた。


「んあぁっ」


早朝のバクス邸、ふいにガチャリとドアが開く音がする。

少し開いたドアからひょいと顔をのぞかせる一人の少女…ではなく加賀。

彼は部屋の中をのぞくと形の良い眉をひそませる。


「…さっきから変な声だして何やってるの?八木」


「……図面」


「ん?」


「図面が終わらないぃぃいいい」


「……」


ここ数日ひたすら図面を書き続けていた八木であるが、進捗具合はあまり芳しくない。

図面を描く際にはPCを使用していた為、手書きでは思うように描けないのだ。


「無理するなよー。眼の下くまできてるじゃん。」


「うー…」


「ほんと大丈夫かいな……」


ご飯ができたことを伝え部屋をでる加賀。

遅れて八木も部屋をでるがやはりかなり眠そうである。


「…ってなわけでー、今日は街の外にいくんだけど、八木どうする?」


「………?」


「…色々とだめそうだな。」


食後休みに椅子に腰かけ茶を飲む3人。

今日のこの後の予定を話しているようだが…加賀が問いかけるも半ば寝ていた八木の反応は芳しくない。

半分寝ながら茶をすするその姿を見たバクスはやれやれと言った様子で肩をすくめる。


「だいぶ無理してそうだな…俺と加賀で出かけるから八木は今日は休んでおけ、そのうちぶっ倒れるぞ」


「うぅ…」


「八木ー無理せず休みなよ、倒れたら元も子もないって。外にいくもバクスさんいるから大丈夫。ね?休んどこ?」


「…わりぃ、お言葉に甘えて休むことにするよ」


やはり連日の徹夜は無理がったのだろう。

軽く眉間をもむとそう答える。




「それじゃ行ってくるねー、ちゃんと寝るんだよー?」


「鍵はかけておく。ゆっくり休むといい」


八木へと声をかけ街の外へと向かう二人。

加賀は外に出るのがうれしいのか見送る八木に向かって振られる手は肩が外れんばかりの勢いだ。

バクスはというと普段とは違い金属鎧を身に着けているが、その足取りは軽くまるで金属鎧の重さなど苦ではないといった様子だ。


「…行ったか」


二人の姿が見えなくなるのを見届け八木は家の中へと戻る。

八木一人だけの部屋はひどく静かでどこか寂し気である。


「…寝るか」


だがそんな静けさも今の八木にはありがたいことである。

靴をぬぎベッドに倒れこむとすぐ寝息を立て始めた。







一方家を出て街の外へと向かう加賀とバクスの二人だが、その足取りは門からやや離れた方へと向かっていた。

歩いて行くには加賀にはちと遠いだろう。そう言ったバクスに連れられ向かった先、そこにあるたのは一見すると車用の大型ガレージの様な建物であった。


「あれがそうですかー?」


「ああ、あそこに預けてある。」


預けているものは何か気になった加賀、ここに来るまでの道中バクスへ何を預けているのか尋ねてみたがバクスはニッと笑い楽しみにしてろ、と言い教えてはくれなかった。

歩いて行くには遠いと言うバクスの言より恐らく何かしらの乗り物だろうとあたりをつける加賀であったが…


「わっわっ、思ってたのよりすごい立派!」


「そうだろう、そうだろう。中もみてみるか?」


中にあったのは中型のバスほどだろうか、中々に大きな車両であった。

それも街中で見かけたような木製ではなく、加賀から見える範囲は金属でできていた。

さらには整備をしてる人で良く見えないがタイヤはゴム製のようであるなど、全体的に見て現代日本の車両と比べてもあまり遜色ないレベルに見える。

ガレージにあるそれを見て子供のようにはしゃぐ加賀、バクスはその様子をみて満足そうに頷くと鍵を差し込み金属製のドアを開く。


「おぉー…内装もすごーい、家の中みたい…奥にあるのはベッドかなー?」


「うむ、あとは冷暖房もあるし…そこの扉は冷蔵庫になってる。」


加賀の言葉に気をよくしたのか次々に設備の紹介をしていくバクス。

内装を一通りみて外に出たところで加賀が何かに気が付いたように首をかしげるとバクスへ声かける。


「んん…?バクスさんこれって…」


「む、どうした?」


加賀の視線の先にあったもの…と言うよりは無かったものは自動車でいうエンジンにあたる部分…前半分が何もなかったのだ。


「御者台がどうかしたか?」


「御者台…え、ってことはこれの動力って」


「馬だぞ」


「あ、そうなんだ」


あっさりと言われたその一言に思わず真顔になる加賀であった。

動力が馬であることにショックを受けた加賀であるが、すぐ気を取り直し再びバクスへと話しかける。


「この車両を牽くとなると…バクスさんお馬さんいっぱい飼ってるんですか?」


「飼ってるぞ。つっても一頭だけだがな」


「え…それじゃ」


足らないのでは?そう言おうとしたところで不意に加賀の耳に低く震えるような音が、そして地面からは振動が伝わってくる。


「来たか」


「いまのは馬の…」


徐々に近づいてくる蹄の音、それは加賀の記憶にある音よりいくぶん重みがあるものだった。

音はガレージの前でとまり、がらがらとガレージの戸が上がっていく。


「でっか!!え、うそこれ馬!?……馬だー!」


「立派だろう?」


驚く加賀をよそに馬に近づくバクス、そっと首筋をなでながら久しぶりだなと声をかける。

馬のほうはそのいかつい見た目とは違いかなり大人しい、バクスに撫でられても嫌がるそぶりは見せずたまにバクスの袖を噛んでいる。


「今日は森まで出かけたくてな、頼むぞ」


撫でながら話しかけるバクスに答えるように馬は小さく嘶くと自ら御者台の方へと向かっていった。



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