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238話 「ダンジョン産はいろいろある2」

うーちゃんを引き連れてお風呂場の方へと向かう加賀と八木に後ろからこっそりついて行くギュネイ。

どうやらヒューゴは丁度風呂から出たところだったようで風呂場の入り口前で一同はばったりと出会う。


「あ、いたいた」


「おう加賀ちゃんど……した、の?」


加賀を見ても普段の態度を崩さないヒューゴであったが、加賀の後ろにいるうーちゃんと手を合わせてごめんね。のポーズをするギュネイを見てさっと顔色が変わる。


「うーちゃんごー」


うっ(まかせろー)


「ちょ、ちょっと待った!? 離してっ、てか力強いから! 折れるっ折れるうぅぅぅ!」


くるりと振り返り逃げようとしたヒューゴの背後でうーちゃんに指示を出す加賀の声が聞こえる。次の瞬間白く巨大な毛皮がヒューゴへと飛びかかった。


「おーし、うーちゃんそのままそのまま」


「あだだだだっだっ」


一見すると巨大な毛玉が纏わり付いている様にしか見えないが、どうもきっちりとヒューゴの関節を決めているらしい。

結局ヒューゴはその場から一歩動いただけでとっ捕まってしまったのである。


「ほい、これ」


「ん……ねーヒューゴさん。これって中身何なのー?」


「いや……それを言ったらつまらなあだだだだっ!?」


八木から受け取った瓶をぐいとうーちゃんに組み付かれ動けないヒューゴの眼前へと突きつける加賀。

ヒューゴは目をそらし誤魔化そうとするが途端にうーちゃんの力が強まる。


「だから加賀ちゃんの体の悩みを解決する薬だってば……」


「へー……」


(やっべー……)


観念したように話すヒューゴに疑いの眼差しを向ける加賀。

思ってた以上にピンチな自身の状態にやっちまったと後悔するヒューゴ。

どうしてこうなったのか、時はしばし遡る。

何時ものようにダンジョンに籠っていたヒューゴを初めとする探索者達が幸運にも宝箱を発見する、そこが始まりであった。


「おや、これはまた珍しいものがでましたね」


「えっなになにー?」


宝箱の中を確認していたアルヴィンが珍しいものを見つけたようで、すぐに周りにいたものがアルヴィンの元へと駆け寄っていく。


「これです」


「……なーんだ、それかー」


皆の前に掲げられた1本の瓶、それを見た探索者達の顔に落胆した表情が浮かぶ。


「それとは何ですか、珍しいものなんですよ?」


「分かってるけどさー……」


一応それ自体は珍しいには珍しい物であるが使い道が限られており、欲しい者は別として実際買う者は極少数である。

よって売ればそれなりの値段にはなるが自分たちで使う事も無いので珍しさの割には微妙、それが皆のその魔道具に対する評価であった。


「む……また出ましたね」


だが、偶然とは続くものである。


「おや、また……」


その日、探索者は行く先々で宝箱に入った同じ瓶を何個も見つける事となる。


「むう……」


「これで何個目?」


「10個目ですね」


「はー? 何でまたそんな出てんだ?」


なぜそんなにというヒューゴであるがそれは皆も同じ思いだろう。

ただでさえ珍しい物がこうも連続して出るなどダンジョン歴の長い彼らにとっても初めての事だ。


「知りませんよ……どうしますかね、この数だと買い取り拒否……は無いでしょうが幾分安く買い叩かれそうです」


「ほー……じゃあ、いくつか俺買い取っても良いか?」


購入する者が少ないため、こうも数があると安くなる事を心配するアルヴィンに対し、それならばと自分が購入する旨を伝えるヒューゴ。

それを聞いた者達は一様にぎょっとした表情を浮かべ奇妙なものを見るような目でヒューゴを見る。


「は? 何言ってるの変態。何に使うのさ」


「俺が使うんじゃねーし……ほら、居るだろ? 使った方が良いのが」


そう言ってにししと笑みを浮かべるヒューゴ。

皆もそう言われてみれば一人使ったほうが……使っても良いと思うような人物が思い浮かぶ。


「……否定はしませんが」


「だろぅー?」


「やめときなよー。それ絶対あんたか八木っちが飲むパターンじゃん」


いたずら目的か何なのか飲ませる気満々のヒューゴに対しやめとけと言うシェイラであるが、ヒューゴはそんな言葉なぞどこ吹く風と言った様子である。


「ないない。いけるいける」


「知らないよー? やるなら一人でやってよねー」


といった具合で魔道具を手に入れたヒューゴであったが、自分が進めた場合間違いなく怪しまれると思いギュネイに託したのである。

結果としてはいたずらとは言え、嘘を付いてまで飲ます気のないギュネイによってヒューゴの物である事がばれ今に至るわけである。


(くっそこのままじゃ俺が飲む羽目に……どうする?)


間違いなく疑われており逃げるのも不可能。

ヒューゴは考えた末嘘はつかずに誤魔化す事を選択したらしい。

ちらりと視線を下に向け、顎でくいと指示してから口を開く。


「ほらあんだろ悩みが……さ」


「……その魔道具ってまさか」


釣られて視線を下に向ける加賀。


「そう! その通り! 男なら誰もが――」


「うーちゃんやっちゃって」


うー(とおう)


一瞬しめた!と思ったヒューゴであったがそれはただのフリであった。

加賀の容赦のない一言を受けてうーちゃんが瓶を片手に持ちヒューゴの口に狙いを定める。


「やめでぇええっがぼぼぼおっ」


そんなわけでシェイラの予想通り結局ヒューゴが飲む羽目になったのである。


なお、瓶の中身を飲んだ際の効果であるが……。


「声たっか!」


「だ、だから……いった、じゃん」


「うるせー!!」


TS薬だった様である。

ただ性別が一時的に変わるだけなので、別に美少女になるというわけでもない。

結果としてぱっとみ妙に声の高い筋肉質なおっさんが誕生するに終わったのであった。

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