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213話 「閑話 夏の過ごし方11」

結局参加希望者のみでレースを行う運びとなり、プールに居ては邪魔になるだろうと言う事で参加者以外はプールからあがり各々休憩を始めていた。

泳ぎの練習をしていたアイネと加賀、それに滑り台で遊んでいた八木にエルザたちも例外ではない。


「ほい、アイネさんの分。こっちはエルザさんのね」


「ありがと」


「ありがとうございます。頂きますね」


プール沿いに並んだ椅子に腰かけた二人へと加賀がデザートのかき氷を手渡す。

どちらも二人の好みの果物がふんだんに使用されておりとても美味しそうである。そしてそれを横から羨ましそうに眺める男の姿があった。


「なあなあ、俺の分はー?」


八木である。

もちろん加賀はきっちり八木の分も用意してあるようだ。一人だけデザートが当たらないなんて事は無いのである。


「ほれ、ちゃんとあるよ」


「……何かすごいのきた」


ただ少し内容は異なる様だが……。

八木の前にどん、と置かれたのはメロンを半分に切り種を取り出したあとアイスクリームを代わりに詰め込んだものであった。

恐ろしく豪快なそのデザートに八木はスプーン片手にどこから手を付けたものかと頭を悩ませる。


「あ、これむっちゃ美味い」


だが味自体はとても良いらしい。

うまいうまいと言ってスプーンが止まらなくなっている。


「でしょ? あ、うーちゃんはもうちょい待ってね、これ重ねるの意外と難しくて」


うー(あとみっつー)


どうやら皆それぞれ選んだデザートは異なるようだ。

うーちゃんが選んだのはアイスクリーム、それも4段重ねの奴である。


「また美味しそうな物を食べているでありますな」


加賀が四苦八苦しながらこさえたアイスクリームをうーちゃんに渡し、加賀自身のアイスクリームを作っていると横からひょっこりドラゴンが現れる。


「ドラゴンさんもいります?」


さっきまでひたすら料理を食いまくっていたドラゴンであるがさすがにそろそろデザートが欲しくなったのだろうか、そう思った加賀は手に持ったアイスクリームをドラゴンへと向ける。


「まだ食べてないのが沢山有りますからな、デザートは後で頂くとしましょう。それよりこの催しは何が始まるのですかな?」


ドラゴンの目的はデザートではなく食べるのに夢中になっていた間にいつの間に始まっていた催し、その詳細を聞きに来ることであった。


「ほうほう、賞品をかけて泳ぎで競争ですか、いやあ実に楽しそうで良いですな」


「なんか殺気だってますけどねー」


ドラゴンへの説明を終え、溶け落ちそうになったたアイスを急いで口にする加賀。

実に楽しそうというドラゴンを見て参加者の方へと視線を向けるが楽しそうと言うよりはどうも殺気立っているように加賀の目には映っていた。


「おっし、そろそろ締め切るぞー? 他に参加するやついねーか?」


どうやら参加するメンバーが出そろったらしい。

ヒューゴが最後の確認に声を張りながら周りを見渡している。


「ひーふーみー……20人ちょいかな? 意外とみんな参加しないのね」


いったい何人参加するのだろうかと数を数えてみた加賀であったが思ったよりも少なかった様である。


「卵があればそれで良いんよ」


「ぶれないねえ……」


加賀のつぶやきにそう反応したラヴィ。卵をたっぷり挟んだサンドイッチをそのでかい口に放り込む。

それを見て感心したような呆れた様などっちともとれる声色で独り言ちる加賀。


「あ、でもカレーと卵ってよく合うよ? オムカレーとか美味しい」


「はいはいはい! ラヴィ、参加しまっす!!」


そして思い出しように卵とカレーの相性について話す加賀であったがラヴィの反応は劇的であった。

勢いよく飛びあがるとそのままの勢いでヒューゴの元へと突進していく。


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