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19話 「ばれたけどセーフッ」

神の落とし子、その言葉に八木と加賀の動きがぴたりと止まる、そしてギギギ……とゆっくりバクスのほうへと顔を向ける。

バクスの突然の発言に八木は口を大きくあけて驚愕した表情、加賀は驚きすぎたのか真顔になってしまっている。


「ナ、ナンノコトカナー」


「いや……ばればれだからな?」


何故かはわからないがバクスは八木と加賀が神の落とし子だと確信を得てる模様。

加賀はその様子見をみてどうしたものかと思案気である。一方八木はというと、


「まあ神の落とし子なんですけどね……なんで分かったんです?」


あっさりと神の落とし子である事を認めたようだ。

バクスが確信しているであろうことを感じ、隠しても無駄と判断したようだ。


「そうだな……旅してる割にはろくに荷物もってない時点ではただ怪しい連中ってだけだったんだがな? この料理はまあ、珍しいで済むが……石鹸は昔神の落とし子が伝えたもので、伝えた国の連中が製造方法秘匿にしてたはずでな」


貴族連中が職人を囲って……というかほぼ監禁して製造方法を秘密にしてる、とバクスの言葉にあちゃーといった感じで額を抑える八木。


「まあ、それも情報が漏れただけと考えられなくもないが、決め手は体に浮かんだ模様だな、試しに描いてみようとしたが描くそばからどんどん消えていったからな」


「模様って……見せた覚えは無いんだけど」


「……お前、俺と最初にあったときの恰好覚えてるか?」


「あっ」


八木とバクスが初めてあったとき、そう八木は自らとったサイドチェストポーズで上半身裸に、さらには猪の突進によりズボンがやぶけパンツ一丁に靴下と靴のみという恰好であったのだ。

当然ながら体のどこかにあるという模様も丸見えだったのだろう。

……パンツで隠された部分に模様がある、という事態を避けられたのは幸いだが。


「思い出したようだな、体の模様……八木の場合は背中だったがまあ丸見えだったわけだ」


「八木のばかちん」


「すまぬ…すまぬ…」


「んでだ、一応確認しとくが二人の本当の目的は何なんだ? 仕事を探しにとは言っていたが他にも何かあるんじゃないか?神からの頼まれ事とかな」


その言葉を受け八木は加賀の方をちらりと伺う、それに気が付いた加賀は小さくこくりと頷く

八木もそれを見て小さく頷くとバクスへと向かい口を開いた。


「神から頼まれたことは一つだけ、自分たちの文化を、技術をこの世界の広めることです。これは過去にきた神の落とし子、彼らと同じ目的です。仕事を探しているといったのは技術や文化を広める為と生活費を稼ぐためです。俺は建築家、加賀は料理人なので実際働きながら広めた方が良いだろうと加賀と相談して決めました」


八木の言葉を聞いたバクスは軽く顎をさすり、二人から少し視線をはずす。

ほんの10秒がそこらであったが二人は固唾を飲んでそれを見つめていた。

やがて考えがまとまったのかバクスは二人へと視線を戻し、二人がやや強張ってるのを見て安心させるように少し笑みを浮かべ話かけた。


「過去の連中もそうだったらしいからな……目的については分かった。でだ、まずこの街で仕事をするのは問題ないだろう、落ち着いたらギルドに登録すると良い」


バクスの言葉に思わずはしゃぎそうになる八木と加賀だが、それにバクスが待ったをかける。


「ただし、ずっとと言うわけにはいかなさそうでな、数か月……遅くとも半年で二人にはこの街……というか国を出ていって貰うことになるかも知れん」


「「えぇっ!?」」


喜ぼうとした矢先、バクスからショッキングな事を聞いた二人は驚きのあまり思わず声をあげてしまう。

どうしてと聞こうとした八木を抑えるようにバクスは手のひらを八木へと向ける、それを見て動きを止めた八木を見てバクスは再び口を開いた。


「おそらく神様から聞いているとは思うが、過去にこの世界にきた神の落とし子がろくな目に合わなかったのは知ってるか?」


「……戦争に利用されたと聞いてます。それで最後には皆引き上げることになったと」


「そうだ、お前ら二人もそうなる可能性が高くてな。この国の連中が馬鹿なことを考えだすかもしれない、それが無くても一つの国に留まっているだけでそれを口実に難癖つけてくる国もあるかも知れない」


「……」


「お前たちは戦争するつもりなんて一切ないとは思う……だがな何かしら理由をつけてちょっかいかけてくる連中ってのは居てな。その理由をつぶす為にも二人には旅に出て貰うことになるだろう……ってのがうちの領主の予想だ」


厳しいバクスの言葉に二人は黙ってうつむいてしまう。

それを見てバクスは話を急ぎすぎたと後悔する、そして二人を安心させうように少し慌てて話しかける。


「な、なに長い間留まるのがまずいだけで、旅行がてらに他国に行くのは問題ないんだ、変な国に行かないかぎり歓迎してくれると思うぞ? それに普通なら危険な旅も神の落とし子なら……」


「あ、あのバクスさん」


「む? ど、どうした…?」


「実は俺たち……」


危険な旅、その言葉を聞いて顔を青くした八木はバクスへと自分たちには戦う力がほとんどないことを告げた。

過去に神の落とし子が戦争に利用されたことに憤慨した神が、今度は神の落とし子に戦う力を与えなかったことを。

戦う力がない自分たちには危険な旅はとてもじゃないができないということを。


「まじか……」


八木の告白を受けたバクスは頭を抱え机へ突っ伏してしまうのであった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「まあ事情は理解した」


「すんません、バクスさん」


「ごめんなさい……」


「いや、二人が謝ることじゃない……そういやお前らウォーボア相手にピンチになってたもんなあ…しかし、旅をするのは危険となると国を出ていってもらうわけにもいかんな。下手になにか起こったらそれはそれで問題だし……まったく」


困ったもんだ、そういうバクスの顔にはどこかほっとしたような表情が浮かんでいた。

短い付き合いとはいえ、せっかく知り合った二人を国から追い出すような事はしたくはなかったのだろう。

バクスはがしがしと頭をかくと口を開く。


「とりあえず明日もう一度ギルマスと領主に事情を話しに行ってくる、約束はできんが二人がこの国に留まれるよう話を持っていくつもりだ」


「おおっ」


「ありがとうございますー! ……もう一度ギルマスと領主にって事はもしかして昼間の用事って」


「ああ、二人について報告してた。この手の重要なことは早めに手を打っておかんとだからな」


このまますべて上手く行くと確証はないがそれでも最悪な事態は免れそう、そう思ったことで心に余裕ができたのか加賀はバクスへと質問を投げかける。


「領主とギルマスに話ってもしかしてバスクさんすごい人?」


「一応冒険者としてはそれなりに有名ではあった……まあ、そっちはあんま関係なくて、単に領主は俺の元PTメンバーで、ギルマスは俺の師匠みたいなもんでな。その関係で今でも連絡とるぐらいならできるんだ」


「ほへー、なんかすごいですねー」


その後しばらくバクスの冒険者時代の話や宿屋をはじめた時の話で盛り上がり、明日は早いからと言ってバクスが寝室に向かったことでその日は解散となった。

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