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16話 「お買い物」

片手で抱えられるぐらいの壺を持ち、店を後にする二人。

後ろで店主のまいどありと言った声が聞こえる。


「意外といろんな種類の油売ってたな」


そう言いながら加賀がもっていた壺をひょいと奪い取る八木。


「あ、ありがとー。 とりあえず食用にオリーブと大豆? の買ってみたけど石鹸もこれで作れるんだよね?」


「いけるいける、戻ったら早速作ってみるべ」


「それじゃーささっと残りの買い物も済ませて帰ろっか」


そう言いながら二人が入ったのは主に野菜を取り扱っているお店であった。

ちょうど収穫の時期が重なったのか、店には色とりどりな野菜が並んでいる。


「いらっしゃい~」


店に入ると店の奥から声が聞こえてくる。

加賀が声の方を向くとそこにはかなり高齢な老婆が椅子に座っていた。

体のどこかを悪くしているのだろう、その手元には杖が置かれている。


加賀は視線を再び野菜へと戻すと商品を指さし、欲しい商品を伝えていく。


「えっと…そこのトマトとジャガイモ一皿ずつと、コーンは4本ください。あと玉ねぎ2玉とにんじん2本、長ネギ1本…あ、ナスも1皿くださいな」


「ほいほい…えぇと全部で2000リアだねえ」


「はい! 2000リア~」


結構な量ではあったが、慣れているのだろう老婆はあっさり計算すると商品を袋につめ加賀へと手渡した。


「いっぱい買っとくれてありがとうねえ、これおまけだから持っていくとええ」


「わっ、そんなにいっぱい! ありがとうございます!」


「ほっほっほっ、うちのじっさまが作った野菜だからのう、美味しいで一杯食べてくんろ」


「ありがとーおばあちゃん! また来ますね!」


野菜を購入しおまけも大量にもらった加賀はかなりご機嫌だ、思わず鼻歌を口ずさむ。

そんな加賀に八木が後ろから声をかける。


「加賀~」


「うん?」


「だいぶ買い物したけど、他に買うのあるんか~?」


「んー、あとは卵とお肉と鶏ガラとー…売ってれば香辛料も欲しいんだけど、お店ないんだよー」


街の中央付近からバクスの家に戻る途中には様々な店があった。

雑貨屋、材木屋、八百屋、魚屋、チーズ等の保存食を扱う店、衣料関係のお店、酒屋等々。

だが残念ながら今の時点では香辛料を扱っている店は見つかっていなかった。


「確かになあ、いろんな店あったけど香辛料扱ってるとこは無かったなあ」


「ここから先にあるお店はー、バクスさん家の近所にあったお肉屋さんぐらいかな」


「とりあえず、肉屋の店主……なんつったっけ、店主に聞いてみたらどうだ? もしかすっと心当たりあるかもしれねーぞ」


「ハンズさんだったかな。うん、そーだねダメ元で聞いてみるとするよー」


「そんなわけでハンズさん知りませんかー?」


「どんなわけだよっ つか何をだっ」


話している最中に店へとたどり着いていた二人は店内に入ると同時にこちらに気が付いたハンズへと質問を投げかける、が返ってきたのは突っ込みであった。

店に入るなり知りませんか?と聞かれても何のことだか分かるわけもなく、当然の反応だろう。

そんなハンズには加賀は冗談ですよーと言いながら訳を話していく。


「…というわけで香辛料を探しているんですが、何か心当たりないでしょうか? あ、その卵とお肉ください。あと鶏ガラも」


「香辛料ねえ…っと先に会計済ませちまうか。卵と肉の代金で1000リアだよ、鶏ガラは売れないし別にタダでいい。……うん1000リア確かに受け取ったよ。んで、香辛料だったか」


加賀から代金を受け取り商品を受け渡すとハンズは腕を組んでうーんと唸りだしてしまう。

やがて何か思い出したのか手をぽんと叩くと何やらごそごそと棚をあさりはじめる。


「おー、あったあった! これ確か香辛料のはずだぜ!」


そういってハンズが加賀へと見せたのは手のひらに乗る程度の蓋つきの容器であった。

ハンズに許可をとった加賀が蓋を開けると中には黒くて小さな丸い粒が容器いっぱいに詰まっていた。

その見た目と香りから加賀はこれが黒胡椒だろうとあたりをつけたようだ。


「これってたぶん黒胡椒…かな」


「そうそう! これを売ってたやつもそんなこと言ってたな! んで、それが目当てのものでよかったのかい?」


「はい、そうです。他にもいろいろあるんですが、とりあえず一番欲しかったのはこれです…あの、これって売ってもらえたりするんでしょうか?」


そう加賀が…意識してのことではないだろうが上目遣いでハンズへと聞くと、ハンズは少しどもりながらも答えた。


「お、おう! 別にいいよ! 使ってないしな!」


「そーなんですか?」


「おうよ、肉の保存にいいって聞いて買ったんだけどさ、保存する分にはダンジョン産の冷凍庫で事足りるし、ためしにかじってみたらえらい辛いわでな、とても使えたもんじゃねー。南の方じゃこの手のいっぱい使って料理作るらしいけど……少なくともこの国じゃあんま使わないし、売れないんだわ。かと言って捨てるには勿体ないしとりあえず棚に放り込んでおいたんよ」


「なるほどー……良ければ売ってもらいたいんですけど、おいくらぐらいするんでしょうか?」


加賀の質問に少しでれっとしながら別に良いと言うハンズだが、加賀も負けじと支払いますと言う。

少しの間タダで良いと支払うとで話は平行線を辿ったがハンズが折れたようで、ならこいつを購入した価格で良いと言う話にまとまったようだ。


「それじゃこれ代金の10000リアです。あのこれってどこで購入したんでしょうか? この街では見かけなかったんですけど」


「ああ、そいつは西に馬車で二日ほど行くとトゥラウニって港町あるんだけどな、そこで異国の商人から買ったんだよ。もしもっと欲しいんならそこに行きゃまた売ってるんでねーかな?」


客入ってなかったから潰れてるかもしれねーけどなと笑いながら話すハンズにお礼を言うと、二人を店を後にした。

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