15話 「お店めぐり」
家を出た3人は街の中心部へと延びる道を歩いていく。
中心部に近くなるにつれ店や大き目の建物が増えてくるが、やはりどれもが豆腐ハウスである。
「あそこの角にあるのが雑貨屋だ。」
バクスに指示された方へと二人が視線を向けると、他と比べ2~3倍の大きさがありそうな建物が目に入る。
入り口には雑貨屋マリーと書かれた看板があり、OPENと書かれたプレートが掛けられていた。
八木は足早に店の入り口へといくとひょいと中を覗き込む。
店の中にはかなりの量の商品が所狭しと並んでおり、かなり商品が充実しているようで八木が思わず感嘆の声をあげる。
「おぉ、こりゃすごい」
「この街じゃ一番の品ぞろえの店だからな」
八木はお邪魔しますと声をかけ、足早に店へと入っていくと早速店内の品を物色しはじめる。
が、なかなか目当てのものが見つからなかったようで、八木は自分で探すのを早々にあきらめると店員へと声をかけた。
「すいませ~ん、お姉さんちょっといいですか!」
店員…というよりはおそらく店主だろう、八木が声をかけたのはセミロングの金髪が眩しい、やや厚みのある唇が魅力的なお姉さん(30前後)だった。
そんな店主は八木の言葉を軽く流すと八木へと問いかけた。
「あら、お姉さんだなんてお上手ねぇ~、それで何の御用かしら~?」
「ええっと、彫刻刀が欲しいんだけど、あと適当な大きさのボールも…っと、それと絵を描く用に紙と筆記道具が欲しいんだ、紙は出来るだけ大きい方がいいな。あとあれば重曹と木材も欲しいな。」
「彫刻刀と重曹はカウンターの近くにあるわよ~、ボールと紙と筆記道具はこっちよ、案内するわね~。あと木材はちょっと扱ってないの、ごめんなさいね。欲しいなら材木屋さんにいくと良いわ」
「ありがとう、ちょっと見させてもらうよ」
お姉さんに案内された棚にはたくさんの雑貨が並んでいる。
八木は目についたものを手に取り確かめているようだ。
お姉さんはそれを遠目に見ていた加賀の方を見ると声をかける。
「そちらのお客さんは何か探し物かしら~?」
「えっと、すりおろし器と目の細かい篩があれば…あ、ボールもいくつか欲しいかな、八木ボクにもちょっとみせて。」
「あいよー」
加賀がボールを探している間にお姉さんはどこにあったかしら~と呟きながら商品を探している。
やがて目当てのものを見つけたのかいくつか商品を手に取ると加賀へと話しかける。
「すりおろし器と篩よね、これぐらいしか無いければ良いかしら~?」
「ん…うん、大丈夫。これ買いますねー 八木まとめて払ってもらっていい~?」
「ほいよー」
八木は加賀から商品を受け取るといつの間に選んだのか、彫刻刀と紙の束をもってレジへと向かっていった。
「ありがと~、良かったらまた来てね~。」
ボール3つに、彫刻刀5本、それに色んな種類の定規、筆記用具に紙の束、締めて銀貨8枚であった。
こちらの物価がいまいちわからない二人にとってはそれが高いのか安いのか判断はつかないだろうが。
バクスが特に何も言わないことから恐らく妥当な値段であったのだろう。
「結構そろったようだな、次はどうする? 特に希望なければ近い所から行こうと思うが」
「加賀、どうする? 俺は特に希望ないけども」
「ボクはあとは食品だけだし、後回しでいいよーう」
「そうか、なら八木の方からすましちまおう……と言っても材木屋ぐらいか?」
「うん、残りは俺はそれぐらいかな、ほかのは全部食材屋で手に入ると思うし。」
「なら材木屋にいくとするか。材木屋は街の中央付近にある、行く途中に食材屋があるから帰りに寄るといい」
そういうと3人は街の中央へと向かって歩を進めた。
「木板けっこう安いんだなあ」
「ただの板だしな。近場で木も取れるしそりゃ安くもなるさ。」
先ほど材木屋で購入した木の板…と言うよりは分厚すぎてもはやブロックといった感じのそれはかなり安く手に入ったようだ。
厚さ100mm近いA3サイズの木の塊で銅貨3枚、値段も手ごろで質も悪くないそれを手にいれた八木はにこにこ顔である。
「それじゃ俺はちょっと用事すませに行ってくる。二人とも帰り道には一応気を付けろよ? この街は治安は良いが間違っても裏道とか入らないようにな」
「ああ、間違ってもそっちには行かないよ、案内してくれてありがとうなバクスさん」
「ありがとうございました~」
お礼を言いバクスと別れた八木と加賀は食材屋を探しつつ家の道を歩いていく。
八木が貝殻が欲しいと言い、行きに見かけた魚屋に入ることにしたようだ。
店で扱っているのは半分が乾物、残り半分が生ものといった具合であった。
どうやら乾物の大半は海の物、生物の大半は川で取れた物であるようだ。
「結構立派な鱒だね、おいしそう」
「はい、らっしゃい! 嬢ちゃんその鱒がほしいのかい? 今朝取れたばっかで新鮮だよ!」
「じょっ…」
「ぶほっ」
店のおっちゃんに嬢ちゃんと呼ばれ思わず固まる加賀
そんな加賀をみて八木は笑いながら店のおっちゃんへ話かける。
「嬢ちゃんねぇ。 あ、おっちゃん貝殻欲しいんだけど、貝あるかい?」
「悪いねー貝はもう売り切れちまったんだよ…貝殻ならあるけど、いるのかい?」
「貝殻だけでも良いから欲しいんだ…その鱒買うから譲ってもらえないかなあ?」
「お、毎度あり! 貝殻は特に使い道ないし好きなだけ持っていってくんな!」
鱒を買い、ついでに貝殻をもらうことが出来た八木。
一抱えもある袋には大量の貝殻が入っており、それを持った八木は今にも小躍りしそうなぐらいご機嫌である。
が、それに反して加賀は不機嫌そうにじとーっとした目を八木へと向けている。
その視線に気が付いた八木が?マークが浮かんでそうな顔をしていると加賀が八木へと話しかける。
「…八木」
「えっ なに、どしたの?」
「君の昼食ピーマンのピーマン詰めな」
「ちょっ!? いやっおまっ……それは勘弁してくれよ」
「おことわる」




