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158話 「苦いものは苦手?」

「へっへー。やっと届いたよー、思ってたよりたくさんだー」


鼻歌交じりにさっそく届いた荷物を開けに掛かる加賀。中にはコーヒー豆が入っているであろう包みの他にもいくつか荷物が入っているようだ。どうやら加賀はコーヒー豆以外にもいくつか注文をしていたらしい。


「これ豆か。中みてもいい?」


「いいよー」


加賀の許可を得てコーヒー豆が入っているであろう包みを覗き込む八木であるが、中身を確認した途端ぎょっとした表情になる。


「えぇっ!? なんか緑っぽいんですけど……」


コーヒー豆と言えば八木にとっては焦げ茶色の豆である。だが包みの中に入っていたのは緑色がかった全くの別物であったのだ。


「ん、焙煎してないからねー。ちゃんと焙煎用の道具も買ったからだいじょぶよー」


「あ、そうなんだ……」


加賀に言われ残りの荷物に目をやる八木、そこには確かに焙煎に使うような道具もきっちり入っていたのである。


「やーでも本当いっぱいだね。使い切るまで結構かかるかも」


「ん……確かになあ。宿の皆が飲むとしても一月ぐらいは無くなるまで掛かるんでない?」


八木に言われ改めて豆の量をまじまじと観察する加賀。

誤魔化すように頬をぽりぽりとかき八木へと振り返るとにっこりと笑う。


「八木ならいける」


「どんだけ飲ます気だおい」


「……一日5リットルぐらい?」


「死ぬわっ」


冗談よと言いごそごそと焙煎機を取り出す加賀。

どうやら早速焙煎を始めるようだ。

取り出した焙煎機とコーヒー豆をいくつか持ち厨房へと入っていく。



「……あー、良い匂いだなやっぱ」


「結構甘い匂いがするのね、それに焙煎? してるからかな香ばしい匂いもする」


うー(いいにおいだの)


厨房に入る早速焙煎を開始した加賀。厨房からはコーヒーの匂いが漂いだし、食堂にいる皆が鼻をひくひくし出す。


「確かに香りは良いな……ふむ、まだ時間かかるようなら今の内仕込みすませてくるか」


「うぃっす」


そう言って食堂を出るバクス、程なくして豆を焙煎し終わった加賀が厨房から戻ってくる。

それを見た八木がうれしそうにコップ片手に加賀へと近寄っていく。


「ん、焙煎してから少し休ませるから、二日後かな‥…わかったよそんな目で見ないの。味見ってことで少しだけ入れるよ


飲むのは二日後ときいて悲し気な表情を見せる八木。

その涙ぐんだ目を見てそっと目をそらす加賀。

コーヒーミルを手に取り豆を入れる。


「このコーヒーが溜まってくの見るの好きなんだよな」


「二人共コーヒー好きねえ……」


コーヒーを眺める二人と遠目で見つめる咲耶。

どうやら咲耶はあまりコーヒーが好きでないようである。


「ん、母ちゃん用にゼラチンも買ってあるから。あとでゼリーつくったげるよ」


「あらまあ、わざわざごめんねえ」


が、コーヒーゼリーは別らしい。

ゼラチンを買ったと聞いて嬉しそうに笑みを浮かべる。


「え、ゼラチンあったんだ?」


「うん、何かあったよ。ちゃんと食用だってさー」


「へー……あ、そろそろいいかな?」


雑談している間にもコーヒーが出来上がっていたらしく。八木は早速自分のコップにコーヒーを注ぐと何もいれずそのまま口に含む。


「……うん、美味しい。酸味は控え目で……バランス良いね。てか香りはむっちゃいいな」


「確かにー。なかなかいい感じだね、久しぶりに飲んだけど……うん美味しい」


加賀も八木も久しぶりのコーヒーに満足気である。

それを見ていたアイネとうーちゃんも我慢できなくなったのかコップに注ぎはじめる。


「本当……すごく良い香り」


そう言って一口コーヒーを飲むアイネ。途端に眉を八の字に潜ませてしまう。

どうやらアイネには荷が過ぎたようである。それを見た加賀は砂糖と牛乳をアイネに渡す。

受け取ったアイネは目に涙を浮かべつつ、砂糖をスプーンでたっぷり3杯、牛乳もかなり多めに注いでいく。


「……うん、これならいける。最初びっくりしたけど美味しいね」


「初めて飲む人には苦みがあれかもねー……うーちゃん!?」


アイネの反応を見てどうせなら最初から砂糖と牛乳を入れておけばよかったと少し反省する加賀。

そういえばうーちゃんはどうだろうかとふとうーちゃんの方をみた加賀であるが。

そこには絶望感溢れる表情を浮かべ、半開きの口からだばだばとコーヒーを垂らすうーちゃんの姿があった。


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