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108話 「順調……?」

トゥラウニを出て半時ほどたった頃。はじめは陸船に感動し色々とはしゃいでいた加賀であるが、慣れてきたのとはしゃぎ疲れたので今は大人しく景色を眺めたりアイネとの会話を楽しんでいるようである。


「けっこう道整備されてるんですねー」


陸船に乗り道を走っていて感じたのが思った以上に道が整備されていると言う事だ。

最初の内はたいして気にしていなかった加賀であるが、それなりの速度を出しているのにも関わらずあまり揺れる事のない道を次第に不思議に思うようになる。現代日本ならともかくアスファルトもまだないこの世界でこれだけ道が整備されている事を少し不思議に感じたのだ。


「大事な交易路だから、道を整備する専門の人を雇っているんだよ。費用は各街に入るたびに入場料が取られるから……それで賄ってると言う話」


「へー……」


アイネの話を聞いて高速道路のようなものだろうかと思う加賀。

多少料金を取られるとしてもこれだけの速度で走ることが出来ると思えば納得できる。


「ねえ、さっきから気になっているのだけど……」


「んー?」


海岸沿いをぼーっと眺めつつアイネの問いに反応する加賀。

街から街までなだらかで代わり映えのしない景色が続く道、眺めるとすれば海岸と青い空、それに延々と続く滑らかなカーブをえがく道ぐらいだろう。


「どうしてさっきからそちらばかり見て話すのかしら……?」


「……」


びくりと身を竦ませる加賀。

アイネのほうを横目でちらちらと見ては視線を逸らす。


「これ、気になるのかな?」


「……」


整備された道とはいえ、多少のでこぼこはある。

速度を出せばそれなりに車体が上下に揺れるわけで、そうなると加賀にとっては視線のやり場に困る事が起こる事になる。


「宿でも見てくる人がいるんだよね……切り落とした方がいい?」


「いやいやいや! だめですってばっ」


アイネの物騒な発言に慌てて止めにはいる加賀。

一方のアイネはようやく目のあった加賀をみて冗談よと言い軽く微笑む。


「あまり冗談に聞こえないです……本当に冗談ですよね?」


「どうだろうね……あとはデーモンを大量に召喚して魔力消費するって手段もあるよ」


一瞬それなら良いかと思いじゃあそれでと言いかける加賀であったが、ふと思いとどまる。

一体どれだけの数召喚するつもりなのだろうかと。

ただでさえ前回呼んだデーモンが距離をおいてついてきているのだ、この上さらに追加すればどうなるか。


「あの、全部で何匹召喚するんでしょ……」


「ん……1000匹ぐらい?」


「それもなしでっ」


1000匹と聞いて顔色を変える加賀。

まだ距離をとっているのと数が少ないため今はそこまで目立ってはいない、だがこれが1000匹となれば話は違う。空を埋め作る黒い影、そのいずれもがデーモン……控えめにいってもパニックが起こるだろう。


「そう残念ね」


「いや残念て…………あの、アイネさん?」


「それならしばらくこうしてましょ、あと3日もあるんだし、そのうち慣れるよ」


ひょいと加賀をかるがる持ち上げたアイネ、一体どうするのかと怪訝な表情を見せる加賀を膝の上に乗せる。


「……」


「これなら気にしなくていいでしょ、あまり動かないでね。落ちると危ないから」


膝の上に乗せられ真っ赤な顔を隠すようにうつむく加賀。

結局お昼の休憩後で一度降ろして貰えたが、その後は日が暮れるまでずっとそのまま過ごす事となる。



「今日はここで野宿。食事とお風呂すませたら寝るのは車内でね」


「あいさー」


荷物をあさり中から炭を取り出す加賀。

適当に石を積み上げつくった竈に炭を並べると精霊にお願いし火をつける。


「野外で料理つくるの久しぶりだー」


「楽しそうね」


鼻歌まじりに夕食を用意する加賀。

たまに野外で食事するのも良いものである、ずっと続かなければだが。


「ん、いけるいける」


「おいしい。宿から食料持ってきて正解だったね」


加賀達も八木と同じように宿から日持ちする食料をいくつか持ってきている。

とはいえ八木達とは違い加護持ちの加賀いるのでその分少なめである。


食事が終われば次は風呂である。

こちらも精霊魔法が使える加賀がいるので、用意するのは問題なくできる。

ほんの数分で簡易のお風呂が出来上がる。


「うひぃー……」


出来上がった湯船につかり思わず声が出てしまう加賀。

一日中陸船に乗り疲れていたのだろう、精神的にだが。


「お湯加減はどう?」


「あ、わりといい感じですよー……ってアイネさん!?」


声に振り返ると視線の先にはアイネの姿が。

驚き固まる加賀をよそに湯船に近づきそっと湯に触れるアイネ。


「あ、ちょうどいいね……せっかくだし、背中が流してあげるよ、ほらここ座って」


「え……はい」


アイネに言われ精霊の用意してくれた椅子へ座る加賀。


「加賀の紋様ってそこにあったんだね」


「ん、そなんですよね。八木は背中でボクはここ。人によってばらばらなんだそうで……」


加賀の背中を洗いつつふーんと相槌をうつアイネ。

紋様にちらりと視線を向け言葉を続ける。


「でもよかったと思うよ。そこなら普段見えないだろうし」


「うん、確かに……八木のも普段見えないはずなんだけどね」


しょっちゅう上着を脱ぐ八木の姿を思い浮かべ苦笑しか浮かばない加賀。


一日で全行程の3分の1まで来た加賀とアイネ。特にトラブルもなく……あったとしても事前に護衛代わりのデーモンが排除しているのだろうが。

ともかく二人の旅は順調に進んでいるようである。

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