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100話 「リッカルドの王 2」

(え、まって。異世界きて初めて会う王様がこれ!? 怖いんですけど! むっちゃ怖いんですけどおお!! え、これ逃げたほうがいい?)


八木の心の葛藤知ってか知らずかのそりとその身を起こし八木へと近づいて行くリッカルドの王。

思わず後ずさろうとする八木だが背中を抑えられそれすらできない。後ろを振り返るとそこにいたのは半笑いのヒューゴがいた。


「ちょっ……あ」


抗議の声を上げようとするがその前に手をがしりとつかまれる。

歯をむき笑う男が目の前に迫っていた。



「よく来てくれた。貴方のおかげでこの国は窮地を脱する事が出来る……今宵は宴をと言いたいところだが長旅で疲れているだろう? 宴は明日としては今日は普通に食事としよう、用意が出来れば声をかける……それまでは部屋を用意しているのでそこで休んでくれ。もちろん護衛の方も一緒にな」


「あ、はい」


手をつかまれたのはただの握手であった。

見た目はともかくとして予想外に気さくな人ではあるようだ。

王が立ち上がり自ら近づいても周りにいた兵士らは誰も制ししようとはしなかった、

おそらく普段からこうなのだろう。


割り当てられた部屋へと向かうべく廊下を進んで行く一同。

廊下の壁はどこも黒みがかった木材……黒鉄で作られており、その辺りはさすが産地と言ったところだろうか。


「あー……思ったより良さそうな人でよかった」


「まーな、見た目こえーけど良い人だぜ……八木むっちゃびびってたなあ」


思い出したようにくくくと笑うヒューゴ。

背中を抑えたあたり、八木がびびってるのを見て楽しんでいたらしい。


「あれはびびるなってほうが無理でしょ……というか皆さん面識あるんですね、オークションがらみか何かで?」


「あの人もともと探索者だったんす! PTくんだことはないすけど、酒場で何度か話したことはあるっす」


「へー……あの体格だもんな、納得」


壁と同様に黒みがかった扉をあけ部屋へと入る八木。

思ってた以上に広い部屋に感嘆の声を上げる。


「おぉ、むっちゃ広い……これ一人で使っていいの?」


「ええ、もちろんです。……何かご入用でしたら私共へお声がけくださいませ。王から八木様の世話をするようにと申し付けられております」


さらには仕事の期間中は八木の世話をする者がつくようである。

それも一人ではない、部屋を開けて中を案内したものが一人、外で待機しているものが二人の合計三人が八木の世話係のようだ。

うち二人は剣を帯びていることから世話係というよりも護衛と言ったほうが正しいかも知れないが。なんにせよ八木はかなりの好待遇で迎えられたようだ。


「ありがと、それじゃ食事の時間までは横になってようかな……何かあったら声かけますね」


八木に一礼しそっと部屋の外へと出る世話係の者。

扉を完全にしまったのを見てベッドに体を投げ出す八木。緊張の糸が切れたように深く息を吐く。


「……世話係って普通女性じゃ……まあ、気を使ってくれたって事だろうけど」


ダメなのは貴族のお嬢さまであってメイドなら問題ないと思うんだけどなーと、どこか釈然としないといった様子の八木。

そのまま寝がえりを打ち動かなくなったかと思うと静かに寝息を立て始める。



「……様、八木様」


「んお?」


自分を呼ぶ声に意識を覚醒させる八木。

顔を上げると目の前にはさきほどの世話係の人物がいた。


「……そっかもう食事の時間か」


かなりぐっすりと眠っていたようで、少し気だるい体をベッドから起こす。

世話係に案内され向かった先では、もうすでに大勢の人がテーブルを囲み椅子に腰かけていた。


「遅くなったようで申し訳ないです」


「いや、なに問題ないよ。 それじゃ杯も行きわたった所で食事としようか。八木殿の口に合えばよいのだがな」


王の言葉を受け料理へと手を付けだす一同。

八木もナイフとフォークを持ち料理へと手を伸ばし、ふと既視感を覚える。


(あれ……なんか見たことある料理だな)


「お、うまい」


声をしたほうを見れば探索者たちは皆、機嫌よさげに料理を口に運んでいた。

少なくとも不満を持っているものは居なさそうである、それを見て八木もフォークを口へと運んでいく。


「あれ……これって」


「もう一人の神の落とし子が公開したレシピを使用しているんだ。どうかな? 口に合っただろうか」


八木を見てにやりと笑うリッカルドの王。その顔はいたずらが成功した子供のようである。


「うん、おいしいです。そっかもうレシピ公開してるんですもんね……」


でも加賀のが美味しいな。と心の中でこっそり呟く八木。

出された料理はおいしいにはおいしいが、どこか普通である。

おそらく加賀は基本的なレシピしか出しておらず、店の秘伝のレシピのようなものは出していないのだろう。


(基本は教えるから、あとは工夫してねってことかな)


基本的なレシピだとしても、食べなれた味に近い料理であり八木も含め皆の料理を消費する速度は中々のものである。

王もそれを見て満足げに頷くとぐいと酒杯を煽る。


「気にいってくれたようでなによりだ。長距離の旅で疲れてるときは普段食いなれた食事のほうが良いだろう? 明日の宴では我が国の名物もだすのでな。楽しみにしといてくれ」


八木達を気遣うための料理。

実際食べてほっとした気持ちになった八木。この様子なら問題なく仕事ができそうだと軽く笑みを浮かべるのであった。

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