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ダンジョン探索、その前に。

キリヤ君の思考能力について補足。


キリヤ君の素の状態が一話。

500%がスキル発動状態の彼。考察や情景描写もバッチリ。

この話からは250%くらいをイメージ。そしてこのまま固定。

それなりに情景描写しますが、基本はアホ。



 翌朝早朝。


 浮遊島の中央付近に病室からそのまま抜け出してきたかのような格好の男が立っている。

 勿論俺だ。

 しかし、もう少しまともな服で異世界生活開始させてくれてもよかったと思うぞ。

 例えばTシャツとジーンズとかね。

 まぁ、見た目にこだわらなければ病衣は着ていて楽だからいいんだけどね。


 さて、目の前の地面には斜め方向に大穴が開いている。

 穴の入り口まではなだらかな下り坂になっているようだ。


 …………あれ。また頭がなんか変だぞ。

 

「さぁさぁ、やって来たぞ! ダンジョンに!」


「はわ~、テンションが高いですね~」


「いいか。ダンジョンといったら冒険活劇だ。漫画やゲームの中で夢にまで見た冒険が出来る。体が動くってすばらしいっ! では、行ってくる!」


「はわっ! ま、待って下さい。流石に丸腰では危険ですよ! 防具もないんですから!」


「だいじょーぶ。俺にはバリアーがあるからね。バリアーがある間はどんな攻撃も効かないんだ!」


「はわっ。凄いスキルです!」


「でしょ。試しに殴ってみてよ。俺がバリアーって言ってからだからね」


「はわっ。本当に大丈夫なんでしょうか?」


「バリアー!」

 

リルアは殴ってこない。信用していないのかな。


「バリアー!」


…………。


「バリアー!」


「は、はわっ! ま、まさか私が殴るまでですかっ! で、では遠慮なく」


 まさかの腹パン。

 ……あ、お腹痛い!

 でも大丈夫。俺にはバリアーがある。

 バリアーがあれば痛くてもノーダメージ。


「……ぐふっ!」


「は、はわっ! 今、ぐふって言いました! 効かないはずなのに」


「効いてないよ。バリアー張ったから。ほら、バリアー」


「はわっ。ではちょっぴり遠慮して……」


「……ぐ」


「はわっ、明らかに我慢してます!」


「してない! 一番強い攻撃で!」


「わかりました。そこまで言うのなら容赦はしません」


 どうしたのかな? まーだっかなぁ。


 ん?


 ……リルアは五歩ほど距離を取ると、大地を思いきり蹴って一息に俺に向かって突っ込んできた。

 そして、俺にぶつかりそうになった瞬間くるりと華麗なターンを見せた。

 回し蹴りと違って両足で回っているせいかターンが若干早い。

 やや遅れてしなるようににやってくる太い尻尾。

 それは鞭のようにしなやかで鞭以上に鈍重な攻撃だった。

 俺はそれをまともに腹部に受ける。

 そのままもんどり打って地面を転がり回る。


 ん? なんか今の衝撃で頭の中で綺麗に何かが嵌まった気がする。

 今まで妙な違和感だった物がちゃんと一つになったような感じだ。


「ぐべらぁっはっ! ……っぐうううっ。い、痛ぇだろうが! バリアーってのは本当は我慢大会なんだからな! 本気で効果があると思っているのは小学生かよっぽどのアホだけだ!」


「……は、はわ。やれって言ったのにまさかの逆ギレ! 意味がわかりません!」


 しかし、リルアの尻尾。飾りかと思いきや立派な殺人兵器じゃないか。

 硬いし縦横無尽に動くし。

 あんな攻撃俺には出来ない。ずるい。俺も尻尾欲しい。

 しかし、あれは放置するには危ない。

 夜中のうちにこっそり根元から切り落としてしまった方がいいかもしれない。

 それに肉厚で身が締まっていて何となく美味しそうな気もする。

 どうやって食べよう。じゅるり。


「……は、はわわっ。キリヤさん。今なんか恐ろしいこと考えてませんでした?」


「…………いや」


「何ですか今の間! 絶対考えてましたよね!」


「……全然」


「そうですかぁ?」


 疑うようにじとっと見つめてくるリルア。

 視線が痛い。どうにかしよう。


「あれはなんだ!」


 俺はリルアの背後の空に向かって指さした。

 するとリルアは釣られるように振り返ってそちらを見た。

 くっくっく。俺の狙いも知らずに。


「スキ有り!」


リルアの尻尾がこちらを向いた瞬間、俺はその先端を思い切り掴んだ。

そして綱引きの要領で引っ張ろうとする。


「は、はわああああああああああっ!」


 しかし、俺が引っ張るよりも早くリルアが変な声を出した。

 そして嫌がるようにぶんぶんと尻尾を振り回した。

 凄いパワーで持っているのがやっとだ。

 俺は尻尾の動きに揺さぶられて、ついにははじかれるように吹き飛んだ。


「お、乙女の尻尾になんて事しようとしてくれるんですか! 結構敏感なんですからね。触らないで下さい」

 

「いや、ちょっと引っこ抜いて食べてみようと思って」


「は、はわっ! そんな恐ろしいこと思ってたんですか」


 リルアはささっと回転して俺の正面に体を向けた。


「やだなぁ。そんなに警戒しなくても取らないよ。だから安心して背中をこっちに向けるといい」


「絶対嘘ですよね! またやる気満々ですよね! 絶対に! 触らせませんからね!」


「え~ケチ」


「ケチで結構です! 絶対、ぜぇったいに駄目です!」


 リルアは尻尾を大事そうに抱えながらがるると唸った。

 しかし、そこまで言われるとやりたくなるな。

 よし、俺に対する挑戦状だと受け取った。今後も隙を見て狙ってみよう。

 何度か挑戦すれば案外ポロッと取れるかもしれないし。


 警戒されたのでリルアの尻尾は一回諦めよう。

 美味しそうなんだけどなぁ。

 

 仕方ない。今はダンジョンだ。


「……どうするんですか。あんまりふざけていると私帰りますよ。この島にはたった二人きりですから仲良くしようと思っていましたけど、尻尾だって触ってくるし段々愛想が尽きてきました」


「そりゃ、行くしかないだろ」


「……武器がないんですよ。防具も」


「……おお、そうだった。格好だけじゃ無くて本当の意味で患者になってしまう」


「は、はわっ。ようやくわかってくれましたか」


 流石にテロテロの病衣に防御力を期待するのは無理だ。

 なんとかなるさの精神ではどうにもならなそうだ。


「と、いうわけで丈夫な服を貸してくれ」


「はわっ! そんな期待に満ちた目で見られてもこの島には今、私の着ている服しかありませんよ」

 

 リルアの服を見る。俺は布に詳しく無いからわからないが、麻か綿で出来た簡素な服だ。

 草の煮汁か何かで色を付けたのか薄い緑色だ。

 見た目は俺の病衣とどっこいどっこいだな。見ようによってはペアルック。

 でも、化学繊維を使っている分だけ多分通気性の面で俺の服の方が優秀だ。

 そもそもリルアの服には尻尾と羽を通すための穴が開いているからな。

 俺が着たら穴だらけのボロみたいになってしまう。

 ならば取り替える意味は無い。


「どうせ、遅かれ早かれ俺達は餓死する運命にある。だからその前になんとしても魔物を狩るぞ! 合い言葉は当たらなければどうと言うことはないだ! 有名な軍人が残したありがたい言葉だ!」


「キリヤさん。ノリがウザイからサクッと死んできちゃってもいいですよ。私の心は痛みません」


「おう、言いやがったな。もし俺が魔物肉を取ってきてもやらないからな!」


 売り言葉に買い言葉。俺はリルアに言い返す。

 そして黙る。


「あれ、行かないんですか?」


「……そ、そういうリルアはついてこないのか?」


「ダンジョンは危険ですからね。昨日入ってみようと思いましたが、武器がないのでやめました。辞めたところで食べ物無いからどうしようもないんですけどね。それでも魔物に殺されて即死するより餓死の方が長く生きられます。多分、三日くらい?」


 リルアは遠い目をしながら言った。


「だったらその尻尾を食べればいいじゃないか。むちむちと肉が詰まってて凄く美味しそうだぞ」


「はわわわっ。忘れたと思っていたのにまだ狙ってたんですかっ! お、美味しそうって……た、食べるのは駄目ですからね!」


「わかった。気が変わったら言ってくれよ」


「変わりません!」


「よーし。武器無し。防具無し。食料無し。水も無し。薬草も無し。目的地はダンジョンだけ! わかった。そういう事なんだろ。俺も腹をくくった。行ってやる。初期配置がこれってなんのクソゲーだ。死んだら神の野郎化けて出てやるからな!」


 俺はリルアを背に一人ダンジョンに踏み込んだ。

 さながら気分は制限プレイの勇者のようだ。


 洞窟内を五歩ほど歩いていたら宝箱が落ちているのが見えた。

 洞窟の入り口から明かりが差しこんでいてまだ明るい場所だ。

 中を明けると一枚の紙と、いくつかの物資が入っていた。


 暗くて紙に描いてある内容が読めないので、俺は一端紙だけ持って引き返す。


 「あれ、もう戻ってきたんですか?」


 言うと思ったよ!

 なので無視だ無視。


 紙を読むとこう書いてあった。


『はろはろ~、キリヤ君。元気しとる? ワシじゃよワシ。神さまじゃよ』


 あれ? こんな話し方だったっけ? まぁいいか。


『早速ダンジョンに潜ってみたようじゃの。まぁ潜るしか無かったじゃろうがな。だから、攻略に必要な道具を宝箱に入れておいたぞ。この紙を見つけたと言うことは問題ないじゃろ。箱の中身は自由に使ってくれて構わんぞ。本来は一つの箱には一つしかアイテムを入れないものなんじゃがぎっしり入れてみたぞ。途中からどれくらい入るか試していたら楽しくなってしまってな。ねぇ、ワシ偉い? 偉い? 褒めてくれてもいいんだよ?』


「うざいわ!」


 俺は紙をびりびりに破いて投げ捨てた。


 改めて宝箱に引き返す。中身だけを抜き取って往復すること四度。俺は洞窟の入り口に物資を全て運ぶことに成功した。そこにもう一枚紙が入っていた。


『どうせキリヤ君のことだから最初の紙は無くすか捨ててしまったじゃろう。なので、こっちには箱の中身を書いておく。内容物が全て入っているか確認するように。あれ、入れ歯がないんじゃがどこいった?』


 ・肩提げ型収納鞄。

 ・D級魔石六個セット

 ・C級魔石六個セット

 ・魔力補充式水筒

 ・革の鎧×2

 ・鉄の剣×2

 ・ピカピカ石

 ・ワシのブロマイド×1


 「入ってたよ!」


 俺はヤニで汚れた入れ歯を地面に叩き付けながら言った。

 神さまのくせにタバコでも吸ってたのだろうか?

 すると、地面にボコォッとクレーターが出来た。


 「……あれ、この入れ歯めっちゃ強くね」 


 よし、これを俺のメインウェポンにしよう。

 俺は攻撃力が高ければ見た目は気にしない主義なのだ。

 入れ歯を使っての握撃。ゴッドバイトとでも名付けよう。


 「その剣はリルアが二本とも使っていいぞ。双剣使い。格好いいじゃないか。あと、ブロマイドもやる」


 「おじいさんはちょっと……。剣を貰うのはいいですけど。私、ダンジョンには入りませんからね」


 「そうか。ならいいや。それよりも皮の鎧は着方がわからん! リルアは着方わかるか?」


 「……いえ。鎧を身につけたことは無いです」


 「良し。ならばすっぱり皮鎧は諦めよう。慢心の元だ。代わりに絶対に被弾しない覚悟を持って行こう。極限状態に陥ったとき、俺の潜在能力が開花するかも知れない!」


 「覚悟じゃ防御力は上がりませんよ。尤も防御のステータス値が高いなら別ですが」


 「ん? ステータスってなんだ?」


 「はわわわっ! まさか、キリヤさんステータスすら知らないでダンジョンに潜る気でした? 行きすぎた蛮勇は身を滅ぼしますよ! 今までで一番の驚きです。あまりに自信満々だったのでキリヤさんは戦い慣れた戦士かと思っていました!」


 「まぁ、ステータスが無くたって何とかなるだろ。駄目だったらその時考えればいい」 

 

 「気づいたときには死んだ時ですよそれ。いいですか。ステータスってのは魔石を消費して上げることのできる能力値です。一般に、倒したモンスターの一つ下のランクの魔石がドロップすると言われています」


 「ああ、魔石ってこれか。紙に書いてあった。CランクとDランクが六個づつあるみたいだぞ」


 俺は宝箱にあった丸い石を手に取りながら言った。


 「なら、今ある分だけの魔石で出来る限り能力値を強化してから出発するといいと思います」


 「そうか。どうやるんだ?」


 「アブリティボードオープンと宣言して下さい」

 俺はリルアに従ってアビリティボードをオープンする。 


 すると、半透明のモニターのような画面が中空に映し出された。

 俺のボードの内容は読めるが、リルアのボードの内容はノイズがかかったように見ることができない。


 「そしたら、ボードメニューが出たと思います。ここからトライヴボードとパーソナルボードを選択することができます。トライヴボードには種族事に固定のステータスボードが設定されていて、パーソナルボードには個人事のステータスボードが設定されています。見てみた方が早いと思います」

 

 俺は何となくトライヴボードを選択してみた。

 すると、幾つかの丸いアイコンのような物が表示された。


 「おお、確かに表示されたぞ。三つくらい光っている丸があるな」


 「はわっ! 三つ。たった三つしか無いんですか! ちょっと見せて貰ってもいいですか?」


 「別にいいけど、どうやるんだ」


 「右上の方にパーティ申請がありますよね。これは五人まで登録できます。登録すればお互いにボードの内容を見ることができるんです。他にパーティメンバーを範囲スキルや範囲魔法の対象に指定することもできます」


 じゃあ、ぽちっと。

 すると、リルアのボードの中身が見えるようになった。

 俺とは違って百個以上の丸が浮かんでいる。


 「はわわっ。本当に三つしかありません。パーソナルボードの強化マスは人によって千差万別ですけど、ここまで少ないこともあるんですね。ちなみに光っているマスは既に発動済みのアビリティマスです。トライヴボードの強化マスは種族事に共通ですからそちらに魔石は使いましょう!」


 「……いやこれ、トライヴボードの方なんだけど」


 「え? ヒュームの方のトライヴボードは確か五十マスくらいで固定だったはずですよ」


 「そうなのか?」


 俺は自分のボードをじっと見る。

 その上部にはこうあった。


 【異世界人ストレンジャー


 異世界人の文字を注視するとこんな解説が頭の中に浮かんだ。

 内容はこうだ。


 種族を決められない優柔不断なキリヤ君のために、特別に用意した種族じゃ。

 元の世界での容姿情報を完全に再現しておる。黒髪黒目の至って普通の日本人じゃな。

 その為、この世界の者とは根本的に遺伝子構造が異なる。

 そこだけは注意するべきじゃな。

 具体的なデメリットは、魔力制御器官を持たないので魔法を使えないこと、この世界の者と遺伝子が異なる故に子が成せないことにある。そこさえ目を瞑れば普通に生きていけるから安心していいぞ。

 尚、これらのデメリットはトライヴボードに記載された固有スキルを使えば解決するので熟考して使うかどうか考えるといい。

 あと、キリヤ君が長生きしたいって言うから絶対に病気にならないスキルを付けたぞ。

 これに関しては前述の固有スキルを使っても引き継ぐので心配しなくてもいいぞ。


 ……なるほどなぁ。

 って魔法使えないのかよ!

 異世界に来て一番楽しみにしていた要素だったのに!


 俺は改めて【異世界人】に記載された三つの光るマスについて確認する。


 種族オリジナルスキル【健康第一】

 絶対に病気をしない。毒や麻痺などの状態異常にもならない。

 健康な体を持っているため、若干の頑強補正がかかる。

 VIT+5


 種族オリジナルスキル【トライヴ・コンバート】

 他者のトライヴボードを譲渡して貰うことでその種族になることができる。

 その代償としてトライヴボードを譲渡した者は死亡する。

 尚、発動は一度きりで元の種族に戻すことはできない。


 種族オリジナルスキル【異世界人】

 その種にかかるスタンダードなステータス補正。種族ごとに上昇数値は異なる。

 また、ステータスの最低保障値。


 STR(攻撃力) +3

 DEX(器用さ) +1

 MAG(魔法力) +0

 VIT(頑丈さ) +2 

 AGI(素早さ) +3

 MID(精神力) +0



 よし、確認終わり。

 俺の知っているゲームと違ってHPやMPの要素は無いようだ。

 怪我の状態はわざわざ記載しなくても見た目でわかるでしょって事かな?

 魔力数値は0なのは体の構造上、仕方ないとして、精神力0って俺を馬鹿にしてるんだろうか?

 堪え性が無いって言いたいのか? 


 「はわわっ。これは凄いですね~。ことごとくヒュームの平均値を下回ってます。それどころか小人族よりも下ですね。そもそも一桁のステータス補正なんて初めて見ましたよ。しかし、表記を見る限り異世界人ってのは本当だったんですねぇ。それにしても異世界の人って弱いんですね。これはちょっと酷すぎます」


 「……そ、そんなに酷いのか!?」


 「……そうですね。私の種族パラメータ見てみますか? その方が早いと思います」


 種族オリジナルスキル【竜人ドラゴニュート

 その種にかかるスタンダードなステータス補正。種族ごとに上昇数値は異なる。

 また、ステータスの最低保障値。


 STR(攻撃力) +100

 DEX(器用さ) +40

 MAG(魔法力) +75

 VIT(頑丈さ) +80

 AGI(素早さ) +65

 MID(精神力) +55 


 合計数値415。

 ……ねぇ、俺の合計値10しか無いよ。

 【健康第一】のVITボーナスを足してもそれで15だ。

 リルアの方が俺の40倍くらい強いって事?


 「なんだか、あのステータスでダンジョン突撃しようとしていたキリヤさんを見ていたら。私でもダンジョンに潜れる気がしてきました」


 ……おお、そうか。俺の方は潜れる気がしなくなってきたところだ。


「……キリヤさん。ダンジョンに潜る気なら、一応パーソナルボードの方も確認してみましょうか? もしかしたら種族数値が悪くても個人才能で覆せるかも知れません」


 ……そ、そうだな。


 俺はパーソナルボードを選んだ。

 そこには、丸いマスが一個だけ浮かんでいた。こちらもなんと光っているぞ。

 魔石を使わずに済んだぞ。やったね。


 一応内容を確認してみる。


 【アンリミテッド・アビリティチェイン】

 倒した他者のパーソナルボードに記載される才能を一つランダムドロップとして獲得できる才能。

 また、このスキルがあることでパーソナルボードのメニューからボード編集が選択できるようになる。

 ドロップによって獲得した才能はチップと言う名称でチップ保管庫に保存される。

 こちらもパーソナルボードのメニューから設定可能。

 チップ保管庫にはチップを100個までストックできる。 

 神が一人の人間に与えられる才能の上限は決まっているため、このスキルを与えるために通常のスキル取得マスや身体強化マスを極限まで削ってようやく作り出した。凄まじい力を秘めた神渾身のスキル。


「……キリヤさん。私甘えてたって思いました。魔物が怖いからダンジョンに潜らないと言っていましたけど、世の中にはやる気があっても能力的にダンジョンに潜ることすらできない人もいるんですね。キリヤさんはここで待っていて下さい。私、魔物を狩って持って帰ってきます」


 おい、今そこはかとなく俺を馬鹿にしただろ。

 

「……いや、俺も行くよ。もしかすると、俺のたった一つの個人才能は捨てたものじゃないかもしれない」


「はわわっ! 正気ですか!? 死んでしまいますよ!」


「だから死ぬ気でリルアは俺を守ってくれ!」


「……あの、一言言っていいですか? お荷物だからついて来ないで下さい!」


「それと無理は承知で頼むが、とどめは俺に譲ってくれ!」


「無茶いいすぎですよっ! 大体キリヤさんの攻撃力3しか無いじゃないですか!」


「大丈夫だ。そこはほら俺の必殺ゴッドバイトが炸裂する」


「そんな入れ歯どこで拾ったんですか!? ばっちいから捨てて下さい!」


「まぁ、そんなわけだ。さっさとダンジョンには入るぞ。リルアは前衛。俺は後衛だ!」


「偉そうに仕切るくせにちゃっかり後衛希望なんですね!」


「……だって俺、死ぬし。打たれ弱い系男子を助けて! 頑丈系女子のリルアさん!」


「なまじ否定できないところが憎い!」


「魔石全部あげるからお願い!」


「そもそもキリヤさんのボードに魔石使うところ無いですよね! いらないからくれただけですよね! もらいますけど。それで、痛いのやだから全部VIT強化に回します」


 リルアはアビリティボードを呼び出すと魔石を光っていないマスに押し当てていった。

 ……なるほど、そうやって使うのか。


 Cランク魔石を使ってリルアが選んだのはVIT+20×6

 Dランク魔石を使って上昇させたのがVIT+10×6


 ……わぁ、他のスキルもステータスも全部無視で防御極振りだ。合計180も数値が上昇した。


 リルアのボードにあった総合ステータスが今の強化分だけ変動する。

 数値はこうなった。


 STR(攻撃力) +100

 DEX(器用さ) +40

 MAG(魔法力) +75

 VIT(頑丈さ) +260

 AGI(素早さ) +65

 MID(精神力) +55


 防御力以外は竜人の種族能力値そのままだ。

 竜人ずるい。尻尾も美味そうだし。それに比べて異世界人弱い。シィット!

 つまり、今までリルアは魔石によるステータス強化を行っていなかったと言うことだ。

 多分、戦いとは無縁に生きていたんだろう。

 ダンジョンに入るのを尻込みしていたらしいからそれも何となく頷ける。


 ダンジョンに潜る前に、宝箱の中身を駆け足ながらに紹介してしまうことにする。

 意図せずに混入した入れ歯と使ってしまった魔石の説明はもういいだろう。

 皮の鎧は着方がわからないので保留だ。変に装着して動きにくくなるよりはない方がいいと判断した。

 リルアが防御にステータス全振りしたのでいい感じの壁になってくれるだろう。

 鎧に関しては盗難する人間はこの島にいないのでこの辺に放置でいいだろう。

 鉄剣は前で戦うリルアに二本とも渡した。

 素人剣術でがむしゃらに振るうなら二本の方が戦いやすいかも知れない。

 肩提げ型収納鞄は中に非生物なら何でも上限無く入れられる鞄らしい。

 しかも中に入れた物の重さは無かったことにされる便利な機能までついている。

 尚、取り出したいときは取り出したい物を念じるだけでいいようだ。

 魔力補充式水筒は魔力を込めると中に水が満たされる水筒。

 魔力が使えない俺には無用の長物なので、リルアに渡しておいた。

 ピカピカ石はなんか光っている石。いつまでも永久的に光っているらしい。

 ダンジョン探索用の光源として使うといいだろう。邪魔になったら鞄にでも入れておけばいい。

 神さまのブロマイド。リルアに渡したが、リルアが投げ捨てて、風に乗ってどこへやら。

 以上!


 さぁ、準備は整った。ダンジョンへ行こう。


 「おっと、その前に腹ごしらえだ! あ、あの花美味しそう!」


 もしゃもしゃもしゃ。うん、中々。雑草よりは味が上だな。


 「はわわっ。雑草食べてます!」


この作品は会話のテンポとノリを重視するために他の投稿作品と違って結構意図的に情景描写を省いてます。文章の割合としては会話文を多め。

同じ日に投稿を始めた最強なドラゴンさんとは真逆です。

主人公の性格も、会話文と情景描写の量も。なんせあっちは十五話近く台詞が一個もないですからね。

こっちはあまり書き慣れない書き方なので面白いかは謎。

主人公がアホ。

ボケ側が主人公なせいで真面目な主人公より難しい。

この話はその場のノリ>ストーリーで展開します。

面白さ重視で設定を破綻させることがあるかも知れません。

そこはご了承を。

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