エピローグ
目の前には青い空が広がっていた。柔らかな下草に身を預けながら、小高い丘の上でスピカと或斗は横になっていた。
「……ここは、どこ?」
「監獄の外さ。龍が崩壊した時の魔力を使ってここまで上がってきたわけさ」
久々の日光を浴びて或斗は伸びをした。その右手には巨大な魔鉱石、結晶龍の角の一部が握られてそれが今回の戦利品なのだ。
横になったまま朝日を浴びるスピカの隣に寄り添うと、その左眼に手を添える。色彩は薄くなってはいたが、まだ青い光をたたえている。
「スピカ、身体の調子は大丈夫か?」
「うーん、左眼はちゃんと見えるけど、身体中痛くて動けなさそう……」
「それはオレも同じだ。だからしばらくはこう横になってようか」
大の字になって深く深呼吸をする。このまま陽光を浴びていたらすぐにでも眠りつけそうだ。目を閉じた或斗だったが、それを制するようにスピカがコートの裾を引っ張った。
「どうした? 痛みが酷いのか」
「ううん、思い出したことがあるんだ。わたしが脱獄しようとした理由。わたし妹に会うためなんだ」
「そうだったのか。スピカに妹さんがいたのねー」
家族は大事だもんなと笑顔を向ける或斗であったが、スピカの表情は曇りがちだった。
「妹がいたんだよ、わたし。でも大切な存在だったのに今まで忘れてたなんて……」
「そのことはスピカは悪くねぇよ。記憶がなくても脱獄してまで会おうとしてるだから、ちゃんと心の中で覚えていた証拠さ。それに今から探して会いに行けばいいだろう、オレも手伝うぜ」
「ほんとに?」
伏せていたスピカが顔を上げて或斗を見つめる。ニッと笑うアルトにスピカも微笑んで頷いた。そして二人は強く握手を交わした。
「それじゃあ、これからもよろしくね、アルト」
「あぁ、こちらこそよろしくな、スピカ」
「フハハ、我のことも忘れるないでくれ、スピカ」
「もちろん、ジェフティもよろしくね」
こうして三人の珍道中はまだ続く。交差した白と黒を今ここで束ねられて―




