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Continental of Magica   作者: ドライ@厨房CQ
第5話 水晶峡谷調査任務
23/33

水晶窟の死闘

 最深部に近づくにつれ、殺風景な谷底の様相が少しだが変化している。露出している魔力結晶が増えてきており、その大きさも人の背丈を超えるほどだ。マナが溜まったホットスポットもあちこちに出来ており、先頭を進む或斗はセンサーを頼りに避けている。

 そしてなによりも、これまで感じられていた魔獣の気配が全くないのだ。これまでは上空を飛び交う翼竜種やマムルプスが行ったであろう狩りの残骸も一切存在しなくなっている。それはつまり、この先に存在を恐れて何者の寄り付かなくなったのだろう。

 或斗たちも言葉少なめに次第に狭なくなっていく谷底を進んでいく。そして人が一人分どうにか通れるほどの隙間をしばらく歩いていくと、不意に視界が大きく広がった。


「すげえな……、まるで結晶の森だぜ……」

「つまり、ここが最深部なのですか?」


 或斗たちの目の前に飛び込んできたのは岩壁が円形に囲む漠々たる空間が広がっており、その各所に10メートルはありそうな魔力結晶がいくつも伸びている。天井はぽっかりと空いており、そこから差す光が結晶を照らして幻想的な雰囲気を醸し出している。

 その景色に呆けている或斗とステラへ槍を構えたアスールが警告する。ここが最深部なら水晶峡谷のヌシがすぐ近くにいるはずだからだ。


「二人とも構えなさい、来てるわよ!」

「一体どこから……!? け、結晶が崩れてく!」


 アスールの言葉で現実に戻ってきた或斗はすぐさま周囲を警戒するが、生物の反応が見当たらない事に不審に思うが、地面を揺らしながら何かが結晶をなぎ倒しながら起き上がってくるのを感じる。それと同時にマナ測定器が測定範囲を越えてエラー音を吐き出した。

 地面から現れたのは巨大な魔力結晶であり、それはどんどん上へ伸びていく。そして根元からぎらついた光を漏らす球体が周囲を見渡すように蠢いて、無数の牙が並んだ顎が生えてきた。そしてその全容を三人の前に晒す。

 強く地面を踏みしめる四肢はその巨体をしっかりと支えて背中から伸びる翼もその身を包めるほどだ。何よりもその表皮は水晶のように透けており、周囲の光を反射したり内部から漏れる光を透過させる。身体の各部にある発光器官がその透き通る表皮と相まって様々な色彩を見せる。

 龍種特有の無骨な体躯でありながら優美のも見える水晶峡谷のヌシの姿に或斗は呆気にとられる。


「おいおいおいおい、こんなデカくてギンギラギンな奴だとは聞いてねえぞ!?」

「結晶龍の完全成長態とは言え、これほどの大きさは異常です。やはり水晶峡谷の影響で異常成長したのでしょう。結晶龍の分類としては番外個体となるグロリュースでしょうか」

「流石の落ち着いた分析ね、或斗も取り乱してないでステラを見習いなさい。それに奴が動くみたいよ」


 目測で50メートル程あるだろう巨体から伸びる長い首をもたげながら、喉元が光り始める。そして咆哮とともに光の奔流が溢れ出した。エネルギーのブレスは一直線に伸びていき、射線上にある結晶を容易く吹き飛ばして反射したブレスの一部があらぬ方向へ飛んでいく。首を動かして周囲をなぎ払いつつ30秒ほど照射し続けて、殆どの結晶が倒れた影響で空間内は広々となった。

 身を屈めて倒れた結晶を盾にしていた三人は直撃をなんとか免れたが、その火力とブレスを浴びた箇所が結晶化していることに驚愕して、対抗策を練っていた。


「なんて野郎だ、あのブレスでここら一帯を結晶に変えていやがったのか。道理で異常に早く結晶の領域が増えてるわけだ」

「それよりも、どうするの? あの火力と巨体は相当なものよ、どうにか弱点を探してそこを突くしか倒せないわよ」

「あの、わたしに考えがあります」


 身を潜めながらも小さく手を上げたステラに二人は顔を向ける。その手には魔力結晶の欠片が握らており、それに魔法陣を当てると大きな光を発していく。これを路用すればこれまでよりも強大な使い魔を生み出せるようで、それが反撃の決め手になるようだ。

 ステラの強化使い魔を受けてアスールが作戦を立案する。これまで通り使い魔で目眩ましをしながら、高速移動可能な使い魔を用いて或斗が牽制してアスールが懐へ飛び込んで弱点を探りながら戦うのだ。ステラを独りにしておくのはアスールは反対であったが、攻撃の要を任せられるのはアスールだけでステラ本人も大丈夫だと強く言うので決行となった。


「よし、じゃあオレはいつも通りにド派手にいかせてもらうぜ」

「牽制は任せたわ、ステラも無理はしないでね」

「大丈夫です。さぁいきますよ」


 ステラが作り出した魔法陣が大きく光を放つと、羽を明滅させながら大量の蝶が舞い上がる。一つの巨大な生物のように一塊となって結晶龍グロリュースに向かっていく。その間を鳥型の使い魔に捕まった或斗が

飛んでいく。

 近づいてくる蝶の群れに向けてグロリュースはブレスを吐く。光線が群れの真ん中を打ち破るが、元々小型の群体であるのですぐに元通りとなる。ブレスでは効果が薄いことに気付いてすぐに攻撃方法を変え、表皮の鱗を飛ばしてきた。かつて或斗が戦った地下牢獄の成長態も同じような攻撃をしてきたが、威力や命中精度は比にならないほどで、使い魔達を次々と切り裂いていく。

 掴まっている使い魔を高く飛ぶように指示を出して、使い魔の群れの中から或斗が躍り出る。それを放っておくこともなく、巨大な角から稲妻状のエネルギー波が放たれて或斗に襲いかかる。使い魔から咄嗟に手を離して間一髪回避するが、使い魔はまるっきり消失してしまい重力に従って下へ落ちていく。


「いくぞ、ジェフティ。あの時と同じくこの逆境をひっくり返してやろうぜ!」

『フン、貴様の余興に付き合ってやったのだ。しっかり決めろよ』


 或斗の背後に現れたジェフティがその身体を青白い炎をが包み込む。そこへ飛び交う鱗片が殺到してその身を切り裂こうとするも、巻き上がる炎が全てを吹き飛ばす。その中から蒼い焔の仮面とオーラを纏い、黒いバトルコート『コラウス』を身に着けた或斗が姿を表した。

 これが或斗のとっておきである、ジェフティとのユナイトにコラウスの自動装着を組みこんだものだ。スピカがドレスを首輪の中に仕舞っていたことから着想を得たもので、瞬時に戦闘体勢を取ることができる。その反面、コラウスを魔力に変換してジェフティに収めているので双方に掛かる負荷が大きかった。

 飛び交う鱗片と使い魔の蝶を避けながら、或斗はグロリュースへ肉薄する。より強固となった表皮を抜くには相当の火力が必要だが、白銀のブレイズ構えて撃ち放った。拳銃型のレイヴンでは耐えられないジェフティの黒炎を弾倉に詰め込むことが出来たのだ。


「食らいやがれ、イルミネーション野郎! オレの魔力はそこら辺のとは一味違うぜ!」


 コラウスから黒炎が砲弾のように撃ち出されて龍の顔面に直撃する。全く堪える素振りを見せぬグロリュースに構わず撃ち続ける。焔のオーラで宙を舞いながら、右手に構えたレイヴンで飛んでくる鱗片を撃ち落とし、左手に構えたブレイズが黒炎を撃ち出してグロリュースを攻撃していく。

 主だったダメージは与えらぬも、周囲をちょこまかと飛び回ってチクチク攻撃してくる存在は相当鬱陶しいのだろう。事実、結晶龍の攻撃は使い魔たちを無視して或斗へ集中していた。

 これが三人の狙いであり、既に使い魔に紛れてアスールが懐へ潜り込んでいる頃合いであろう。それを示すように強い魔力の奔流を下から感じた或斗はほくそ笑む。


「アルペジオ……!」


 四足歩行型の使い魔に跨ったアスールは槍を天高く掲げて、穂先よりウォータージェットが勢いよく噴出してグロリュースを貫いた。身体の各所にある発光器官は体表が薄く弱点となりうると考えたアスールは、胸部の発光体に狙い付けたのだ。

 その読みは正解であり、水の刃は容易く表皮を抜いて発光器官を貫いてグロリュースが呻き声を上げる。これほどの巨体にダメージを与えることが出来たと判断したアスールは、次の発光器官を攻撃しようと移動に移ったその時だ。

 グロリュースは大きく咆哮すると、その全身を発光させてゆく。そして大きな衝撃が周囲を揺るがした。


「クッ、あんな事も出来たなんて……! それよりも!!」


 大きく吹き飛ばされながらも使い魔が盾になってくれたおかげでアスールには大きな怪我はなかったが、上を見上げて或斗の姿を追うが、どこにも確認できなかった。グロリュースが放った全身からの魔力放射によって空中にいた或斗は大きく吹き飛ばされてしまい、使い魔もほとんどが消失してしまっており、視界は一気に広まった。

 そして、結晶龍は後方に控えていたステラの姿を視界に捉えた。今まで使い魔を操っていた大元だと感づいてか、またしても大きく咆哮すると周囲の結晶が浮かび上がる。結晶体はその矛先をステラに向けると、一斉に放たれた。


「ステラっ!!」

「アスールさん!?」


 グロリュースの意図を理解したアスールが全力でステラの元へ駆けつける。その小さな体躯を抱えるのと同時に結晶体の雨霰が降り注いだ。地面を砕くほどの結晶による爆撃によって辺り一面はクレーターが出来上がり、砂塵がもうもうと立ち込めている。

 嫌なほどに静まり返る中、ステラが恐る恐る目を開けた。舞い上がった砂塵で小さくむせ返りながらも、傍らには自身をかばうように身を挺していたアスールがいた。頭から流血しながらもステラが無事なことに安堵の表情を浮かべた。


「良かった……あなたに大きな怪我なくて……」

「アスールさん……わたしを庇って……こんな酷い怪我を!」

「大丈夫よ、ただ額を切った程度だから」


 ゆっくりと身を起こしたアスールは今にも泣き出しそうな顔をしたステラの頭に手を置いた。こんな状況だからこそ彼女を落ち着かせる必要があった。現にグロリュースはトドメのブレスを吐き出そうと喉に光を溜め込んでいる。

 今すぐ回避行動に移るべきだが、思った以上に肉体へかかった衝撃は大きくて身体が思うように動いてくれない。ステラの使い魔は全て霧散しており、もう一度使い魔を生み出す為の魔法陣を作り出す必要があるが、今のステラの精神状態でしっかりとした魔法陣を構築できるかわからない。万事休すだ。

 無常にも結晶龍よりブレスが吐き出されて、破壊の光芒が二人に迫る。それでも目をそらさずに眼前を見据えるアスールの視界に黒い影が割り込んだ。


「或斗!?」

「これしきの事で諦めると思ったか!! テメエをブッ飛ばすまでは終わらねえぞ!!」


 両腕に最大限まで高めた黒炎を纏わせてレーザービームを受け止めていたのは、或斗であった。黒炎が持つ魔力を糧にする作用で手のひらで受け止めている魔力ビームを己の黒炎へ変換させているが、大元の魔力量が違いすぎて徐々に押されていく。それでも或斗は強く地面を踏みしめて叫ぶ。


「まだまだッ! ジェフティ、このマナを取り込んで黒炎を増幅させるんだ!」

「正気なの!? このマナの濃度だと身体が無事で済む保証はないわ!」

「そんなの百も承知さ、これもスピカの真似事だよ」


 有無を言わさずにマナを取り込んで黒炎が更に火力を増す。それと引き換えに意識が飛びそうになるほどの衝撃が頭に中を駆け巡るが、それを気合で吹き飛ばす。雄叫びをあげつつ、ブレスを真ん中から叩き割って周囲に拡散させる。だが、弾ききれなかった光芒の一部が左腕の上腕を貫いた

 ドクドクと出血していくが基にすることなく、身を屈めていた二人の元へ駆けつける。互いにボロボロの状態であったが、まだ健在だということに或斗を口元を緩める。


「或斗さん、ありがとうございます。でも左腕が……」

「ああ、しばらくは左腕は使えねえな。でも、二人とも守りきれたわけだし、腕一本なんともないぜ」

「まだ脅威は去ってないわ、向こうは依然建材でこちらは満身創痍。でも、これだけは言っておくわ。或斗、わたしを守ってくれてありがとう」


 二人の感謝の言葉に笑顔で応えると、視線を結晶龍の方へ向ける。片腕が使えない状態でまだ戦う意志を持っている或斗を頼もしく思う反面、これ以上の無茶はさせられないと不安を感じる二人に心配することはないと或斗は示す。


「或斗さん無茶です! そんな身体ではさっきみたいに動けるわけでもないし、怪我だってしてるのに」

「なーに動き回るわけなじゃないさ、渾身の一撃をアイツに叩きつけてやるだけさ。まぁ、それを出したらオレは完全に戦闘不能になるけどな」

「渾身の一撃ね……、こっちも一か八かの賭けがあるんだけど、乗ってみる?」

「当たり前だ、分の悪い賭けほど燃える奴はないさ」


 一辺の迷いもない或斗の肯定にアスールもニヤリと笑ってその準備に入る。これからする一か八かの賭けとはどんなものかわからないが、今することは全力で目の前の敵へぶつかっていくだけだ。

 或斗から少し離れたところで槍を構えるアスールは穂先を目の前の結晶に合わせる。ステラも魔法陣を張りながらもポツリと不安を漏らす。


「本当にこれで上手くいくのでしょうか? もし失敗したら……」

「まあその時は皆死ぬでしょうね。私が立案者なのだし、あの世でたっぷりと責を受けるつもりよ」

「そんな、縁起でもない事言わないでください! 絶対成功させて皆で生き延びるんです!」

「その心構えを忘れないでね、生きようとする力は何よりも強いんだからね」


 そう言って少し意地悪げに笑うアスールに、彼女が何を言いたいのか理科したステラは強く頷く。そこに恐怖に怯える少女の面影などどこにもない

 グロリュースも最後の一撃とすべく、全身を光り輝かせながら発光器官より生みだされたエネルギーの奔流が巨大な角へと集約していく。互いに最大の攻撃を放つというシチュエーションに思わず或斗は笑みを浮かべる。


『こんな時にも笑みをこぼすか。ピンチになればなるほど燃えるタイプかお前は?』

「そんなものさ。それによ、こんな時だからこそ笑うんだぜ?」

「或斗! そっちのタイミングに合わせるから、思いっきりやってきなさい!」


 アスールの言葉を背中に受けて或斗は地面を踏みしめる。一度深呼吸して意識を集中させてから、巨龍を見据える。その角から極太の稲妻が走って或斗に向けて飛んでくる。それに突っ込んでいくよう、或斗も駆け出す。

 地面を蹴り飛ばしながら走る或斗と重なり合うジェフティが、膨大な黒炎へ姿を変えてその周囲を取り巻く。地面を踏み切って飛び上がって右脚を突き出してグロリュースの稲妻と激突する。


「零を超えた、終わりの一撃を見せてやるぜ!!」


 右脚に集中した爆炎は蒼い焔となって或斗を大きく包み込む。それでも稲妻とは圧倒的な差があるが、それでも或斗は力を込め続けた。正面から打ち破るように稲妻に深く食い込みながら、蒼い焔は回転していく。やがてそれは巨大な渦巻きとなって、その流れは強靭無比なはずの稲妻する飲み込もうとしていった。


終式(ついしき)紫電(しでん)(かい)』!!!」


 全てを飲み込む破壊の渦を阻むものを存在しない。結晶龍が生み出した雷撃を打ち破り、勢いを増した或斗の右脚がその角を捉えた。以前の戦いで覚えた龍種の弱点、魔力を司る角を終わりの一撃は根元より蹴り折った。そして大きく叫ぶ。


「今だ! トドメのすげえ奴、頼んだぜ!」

「もちろんよ! これで最後!!」

「しっかり決めてみせます!!」


 魔力の源を失ったグロリュースは大きく身を揺らす。それでもまだ戦えることを示すように胸の発光体を明滅させて魔力を集中させていく。そんな結晶龍―ではなく、全く方向も違う結晶に向けてアスールは溜め込んだ魔力で作り出した水の穂先を突き刺した。

 結晶に刺さる穂先は弾かれて別の方向へ飛んでいった。その先に突如として結晶が立ち上がったのだ。その根元にはステラが生み出した使い魔が控えており、結晶を立てて別の方向へ変えていき、そこにも結晶が立たさせる。

 ビリヤードの要領で弾かれ続ける水の穂先は巨大な鏃に変化していた。結晶はマナが集まったものであり、それを通り過ぎる毎に魔力として取り込んでいき、これほどまで大きくなっていったのだ。グロリュースの頭部ほどの大きさになった鏃を最後の結晶によって反射されて、その胸部にある発光器へ直撃する。


「「「いっけえええええ!!!」」」


 魔力がまともに扱えない状態で魔力を臨界寸前まで貯められていた部位に直撃を受けて、その身に宿した魔力が暴走していき、その巨体からまばゆい光とともにヒビが入っていく。そして盛大に爆発して爆ぜてていく。

 断末魔とも思える爆発に巻き込まれむようアスールとステラは身を潜めると、その頭上に衝撃波が走っていく。静まってから顔を出して辺りを見るとバラバラに砕けたグロリュースの残骸が転がっているだけで動くものは何もなかった。


「どうやら、勝ったみたいね……」

「で、でも或斗さんが、どこにも……」

「いやー、勝ったと思ったらいきなり爆発するんだからさ、ホント死ぬかと思ったぜ」


 崩れた結晶体の山から或斗はひょっこりと顔を出した。瓦礫を押しのけて起き上がると手にしていた巨大な結晶―グロリュースの角の一部を枕にするとその場で大の字に横になる。


「流石に疲れ果てたから、ちっと休むぜ」

「そう、マナの乱れも収まって通信が回復したようだし、ハカセにはこっちから連絡入れとくからゆっくりしておきなさい」


 その言葉に甘えてぐったりと脱力する横にステラもちょこんと腰を落とす。


「或斗さん、その、ありがとうございました。色々と助かりました」

「それはお互い様さ、オレもステラに助けられたんだしさ」


 互いに健闘をたたえて拳を突き合わせる。ある程度安全が確保されたこの場所で帰りの分の体力を作るべく、休みを取る或斗はコラウスを脱いでジェフティを呼びつける。


「おーと、ジェフティ出てこいよ。コラウスをしまってくれないか?」

『断る。魔力の回復が不十分で顕現は不可能だ。それにそのバトルコートは二度と入れさせないぞ』


 ジェフティはコラウスを魔力変換して取り込む事を、一貫して反対しており最後まで乗り気でないところを無理矢理入れられた感じだ。腹に異物を突っ込まれた状態に等しかったので、今回の水晶峡谷の探索に姿を表す事ができず、色々とデメリットがあるのだ。

 三行半を突きつけられた或斗に対して、ステラはぴしゃりと言い切った。


「或斗さん、ジェフティさんは大事な相棒なんですから、もっと大切に尊重しなきゃだめですよ!」

「はい、これから肝に銘じておきます」

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