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Continental of Magica   作者: ドライ@厨房CQ
第2話 世界樹の下にて
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向かう者、待ち受ける者

「スピカ、調子はどうだ?」

「だいぶ良くなったね、もう心配いらないよ」


 或斗とスピカの二人は陸上航行船の甲板の上で夜空を見上げていた。

 演算機とリンクした直後にスピカは戻ってきたのだが、いきなり倒れ込んでしまって一時は大騒ぎちなってしまった。もっともすぐにスピカが静かに寝息を立ていることに気付いて大事ないことで落ち着いたのだが。

 二時間ほどして目が覚めたスピカが、すぐに演算機で知り得た情報を皆に伝えた。リンクしたことで頭に浮かんできたの地図であり、それを現実の地図と照らし合わせるとある場所を指し示していた。

 そこにアーテルが居るのか、彼女に繋がる手掛かりがあるかわからないが、指し示された地点を調べるとことで方針が決まった。それからは脳を酷使したから糖分補給ということで甘みの強いココナッツミルクをずっち飲んでいる。


「ここまで良くしてもらってよかったのかな?」

「いいんだぜ、みんなの好意には甘えるもんさ。地図の場所までそこまで離れていないから処女航海には持って来こなんだしよ」


 ハカセや繊華、モニカ達が協議した結果、船の一番最初の向かう先が地図で示されたポイントに決まったのだ。ユグドラシルからそこまで離れていないが歩きや普通の車ではかなりの道程となるため、陸上航行船の出番と言わんばかりにモニカが宣言したのだ。

 船が無理せず行ける距離ではあるが間違いなくスピカの為に選んだのだろう。それに戸惑いを隠せないようだが、或斗は自分なりに助言をする。


「それに今回の調査遠征に協力するって事で一方的なわけじゃないからな。自分ができない所は他人に任せて、自分が出来る所は全力で取り組めばいいってわけよ」

「うん、アルトがそう言うならいいのかもね」


 難しい顔をしていたスピカが和らいだので自分の助言も的外れじゃないと確信できた或斗は直頷いたが、その直後に大きなくしゃみを漏らした。

 星はキレイに映るが夜風は結構きついものだった。


「アルト、そろそろ中に戻ろうか?」

「そうだなー、最後は締まらないもんだね」


 ぼやきながら帰路につく或斗に先を進んでいたスピカがくるりと回って振り返ると、満面の笑みを浮かべて右手を差し出した。


「アルト、色々とありがとね。そして、これからもよろしくね!」

「おう、こちらこそだぜ!」











 魔導演算機の始動から一週間。全ての準備は滞りなく行われて、遂に出発の時が来た。

 操縦室に或斗達は集まってその時を待つ。既にコックピットにはイサムが座って計器などのチェックを行っている。これほどの大きさの船を一人で動かすのだから相当緊張しているのだろう。が、そうでもなかった。


「確かに最初は肝心だけどさ、この船は自動航行がしっかり出来てんだから、俺の役目は航行ルートの

選定と、椅子にふんぞり返って座っているだけさ」

「流石は一等航海士殿だぜ」


 その口より軽口が出るくらいにはリラックスしているので心配はないだろう。だが、既にいつでも船が出せる状況なのにモニカから号令が出なかった。

 何事か見てみると彼女は一人、一枚の紙を前にして唸っていたのだ。


「一体どうしたんですか姐さん、そんなに唸っちゃって?」

「実はまだこの船に名前が決まってなかったのよ……」

「え、この船に名前って『飛魚丸』じゃなったんですか?」


 その名前に周囲の空気が凍った。皆口々にダサいだのもっとかっこいい名前はいいだのと言い始めた。それはモニカも同じようで、ここで祖父がつけた名前から新たな船出に相応しい名前を決めようとしていた。

 しかし、ネーミングセンスに乏しい身なのでいい案が中々出ず、或斗は多くの代案を出してきたが、それらは全て却下された。


「ギャラクシーマキシマム号の何がいけないんだ!」

「全部だよ!」


 皆からに総ツッコミに口をすぼめる或斗であった。ああでもないこうでもないと議論が続く中でスピカがポツリと呟いた。


「魔法の帆船、スキーズブラズニールというのはどうかな? でもそれだと長いからブラズニールでどうかな」

「おっ、そいつはギャラクシーマキシマムと同じくらい格好良くていいな」


 スピカの意見に或斗が真っ先に賛同した。他の皆も語感や言い方も悪くないと賛成し、モニカが高らかにそのナを叫ぶ。


「この船の名はブラズニール! さぁ出港よ!!」

『オーッ!!!』


 エンジンは既に火が入っており、底面の四足へエネルギーが送られて浮遊魔法が発動する。船体が浮かび上がったブラズニールは次第に高度と速度を上げながらユグドラシルの街並を飛び越えていく。

 手を振る街の人達に手を振り返しながらスピカは地平線の遠くを見つめる。


「待っててね、アーテル。今すぐに迎えに行くから」











「おや、センサーに反応があったわね」


 鎮座する巨大な白磁の塔。その内部で巨大なモニターや忙しなく動くコンピュータに囲まれた塔の主が手元のタブレット端末を確認する。

 今まで無かった反応にタブレット端末から視線を離して隣の部屋へ移す。


「どうやらお姉さんを見つけたようね」


 そこには全身をコードで縛り上げられたスピカに似た面持ちの黒い少女が繋がれていた。


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