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Rejecter  作者: ソウさん
1章 出会い
9/22

村までの道のり②

こんな作品でも読んで頂けることに感謝をしつつ、創作をもっと楽しみたいですね

 それ以後も何度か戦闘はあったが、受付嬢がイズミを守りシュウが魔物を狩るというスタイルで特に危なげなく森を進む事が出来た。


「今日はこの辺りでいいでしょう」


 村から駆けつけた受付嬢がそう言うのならば間違い無いだろう。

 近くの木にもたれかかると、久しぶりに腰を下ろしたような感覚になった。かなり疲労が溜まっているようだ。


「そういえば、名前、なんていうんだ?」


 仮にとはいえ、パーティーを組んで背中を預ける仲間だ。イズミが襲われた時のように咄嗟(とっさ)の判断が求められる場合、名前を知っていた方が良いと感じた。


「そういえば言ってませんでしたね。私はティールといいます!弓使いの元冒険者で、訳あって冒険者を辞めてギルドの受付嬢をしています」


「そうか。ならティールと呼ばせてもらおう。俺の名前は…」


「知ってますよ。ギルドの受付嬢ですから!シュウさん、ですよね。ギルドでもちょっと話題なんですよ〜」


 まさか名前を覚えられているとは。しかもギルドで話題になってる?


「話題ってどういう…?」


「それはもちろん、ソロでランクをどんどん上げてると色々噂にもなりますよ!実は裏でパーティーを組んでるとか、凄い家系の出自だとか!」


「…そうなのか」


 自分がそんな噂になるほど異常なランクの上がり方をしているとは思ってもいなかった。

 興味が無くて聞き流していた話の内容がそんな感じだった気はするし、昇格依頼を受ける時にやたらと止めてくるなとは思っていた。思えば結構心当たりがあった。


「まあ、私の場合は特殊なレアスキルを持っているのだとばかり思っていたんですけど…戦闘中にそれらしきものがほとんど確認出来無かったですからね」


 まさかスキルを詮索(せんさく)されていたとは。それに中々鋭い。


「おかしいと思ったのが魔物の動きですね。シュウさんに近づいた途端、動きが悪くなっていたように見えました。あれがスキルなんですか?」


 本当によく見ている。あの弓の技術といい、冒険者としては上位だったんじゃないか?只者では無さそうだな…

 そんな事を考えているとティールが声を荒げる。


「あ!ごめんなさい!私の悪い癖で…スキルの内容を聞くなんて、非常識ですよね…職業柄どうしても色んな人のスキルとかに興味が湧いてしまって…申し訳ないです」


「こちらこそすまない。少し考え事をしていた。さっきの話だが、あながち間違って無い。俺も自分のスキルを理解しきっている訳じゃなくてな。恐らくスキルによって動きが鈍くなっているんだと思う」


 スキルは個人情報だ。特に冒険者にとっては切り札を知られる様なものだ。故に基本的には信頼できるパーティー内でスキルの情報を共有する事はあるが、他人にスキルの情報を聞くのはタブーになっている。

 シュウはあまり気にしておらずサラッと言ったが、人によっては怒る者もいるだろう。


「後は体験した方が早いだろう。なんでもいいからスキルを発動した状態で俺に近づいてくれ」


 ティールは不思議に思いつつも「肉体強化」を発動しながらシュウに近づく。


「え!?スキルが、消えた…?スキルが発動出来ない!」


「これが俺のスキルだ」


 自分を中心に一定範囲内のスキル効果消失。現状はっきりと判明しているのはそれぐらいだ。


「こんなスキル…聞いたことも無いですね…質問していいか分からないですけど、このスキルを発動中って他のスキルは使えるんですか?」


(まあ、そう思うよな)


 全く持って順当な質問だろう。もしも「拒ム者(コバムモノ)」を発動中に他のスキルが使用できるなら、相手にスキルを使用させず一方的に絶大な力を振るうことになる。

 それはもはや、対人最強といっても過言ではない。しかし、


「残念ながら、他にスキルは無い」


「え…?では、戦闘中での動きや剣技は…?」


「スキルを使用していない、素の肉体と技術だな」


「そんな…あれでスキルを使っていないなんて…一体どれ程の鍛錬を積めばそこまで…」


 ティールは言葉を失った。もちろん、スキルを使わない状態でも同じ様に動ける者もいるはずだ。とはいえそれは、冒険者ランクが上位の僅かな人物だけだろう。

 20歳にも満たない青年がその境地にたどり着くには強靭(きょうじん)な意志と、凄まじい鍛錬が必要なはずだ。


「そこまで難しい話じゃない。死ぬほど努力すれば誰でもこうなれる」


「はぁ…そういうものでしょうか…」


 これ以上は聞くべきでは無い。そう感じたティールは明日の段取りをシュウと確認した。

 その後、見張りを交代しつつ仮眠をとって夜が明けた。








 ティールの話通り、日が暮れる前に整備された道を発見し、ようやく村に辿り着いたのだった。


 ディン村。街というほど繁栄していないが村にしてはかなり大きく、北に向かう馬車が出ている為、ここでも冒険者が集いやすく徐々に村を大きくしたのだ。


「村に着いたことですし、馬車の手続きをしますか?」


「いや、そうしたい所なんだが…出来ればこの村で今後の馬車代を稼いでおきたい。イズミを疲れさせる訳にもいかないし、何よりも危険を伴う事は極力避けたい」


 この先もイズミを守りながら一人で戦闘する事になれば、昨日の様な非常事態が起こるかもしれない。それを考慮(こうりょ)した結論だ。


「なるほど。賢明な判断だと思います」


「そこで相談がある。俺が金を稼ぐ間、イズミと一緒に居てやってくれないか?一人でずっと宿に引き籠もらせるのは気の毒だからな」


「そういう事でしたら喜んで引き受けますよ!イズミちゃんと二人きり…」


 さっきから自分の名前が挙がっているからかイズミがこちらに視線を向ける。


「少しの間、このお姉さんと一緒に居てくれないか?出来るだけ早く戻ってくる」


 話の内容を理解しきってはいないが、今もじっとりと見つめてくるティールと一緒に過ごさないといけない事は分かる。不安な状況ではあるが、シュウの気遣いを感じ取れない訳では無い。


「分かりましたです。シュウお兄さん、イズミ、ちゃんと待ってるです」


 早く、稼ごう。

 シュウは、何故か分からないがそう思った。何かに目覚めそうだったが、あまり深くは考えずに、より一層と決意を固めた。


((すそ)持ち、上目遣い、目潤わせとは…イズミちゃん、末恐ろしいですね…それにしてもこれは保存しておきたい可愛さ…)


 保存する手段がないことに煩わしさを感じながらも、目に焼き付けておくのは忘れない。


「今からだと遅くなってしまいますし、今日は休みましょうか。シュウさんも結構お疲れみたいですし」


「そうだな。それなら適当に食事をとれる場所を探すか」






 ひとまず今後の予定が決まり、食事をとった後、宿屋に着いて部屋割りを決める際にちょっとした争いが起きた。


「イズミ、シュウお兄さんと一緒がいいです」


 イズミがそう言い放った瞬間、ティールに雷が落ちた。もちろんただの比喩表現ではあるが、この世の終わりといった顔で硬直している姿はまさに、雷に打たれたという他無いだろう。


「な、なな、なんでですかーーー!?」


 冷静さのカケラもないティールがシュウの胸ぐらを掴み大きく揺さぶる。


「普通に考えれば、女の子同士で一部屋ですよね!?シュウさんもそう思いますよね!!?」


 実際、シュウもそうしようとしていたし、ティールの考えが間違っているとは思わない。しかし、今までのやり取りを見ていたシュウから咄嗟(とっさ)に出た言葉は、


「…まあ、仕方がないんじゃないか…?」


「どぉぉしてですかぁぁぁぁぁ!!」


 ティールは激しくご乱心になった。

 メンドくさいなぁ…なんて思っていると「あらあら、痴話喧嘩かしら」とゆったりとした口調で宿屋のおばさんが楽しそうに呟く。


(あらあら言ってる前に、助けて欲しいんだけど…)


 もちろん助けなど入るわけもなく、振り回されているこちらを見ながらニコニコしている。途端に何かを思い出したかのように会話に入ってくる。


「3人部屋も空いてるわよ?お風呂もついてるし」


 イズミが、お風呂!と反応する。この前の宿で気に入ったのだろう。

 場が沈黙し、シュウが目の前のティールを見て、数秒硬直した後、顔をそらした。


「シュウさん、いま、何を、考えましたか…?」


 勘の鋭いティールは即座に反応する。宿屋のおばさんのおかげ?で解放され、静かにはなった。望んでいなかった形で。完全に状況は悪化した。


(あまり気にしていなかったけどティールって…)


 スタイルも良くて顔は整っているし可愛い系。それでいて愛想もいい為、受付嬢としてかなりの人気を誇っていた。今まで意識していなかったが、かなりレベルは高い方だろう。


「いや…何もやましいことは考えていない」


 シュウも年頃の青年だ。意識してしまえば止まらない。先程とは異なるトーンの小さい声でもごもごと呟く。誰が聞いても説得力など微塵(みじん)もなかった。


「シュウさん…ギルドで働いているときは全く気づきませんでしたが、そういう目で私を見てたんですね!?へんたい!」


 再び胸ぐらを掴まれる。心なしか先程より力が強く感じる。

 イズミが何かを考える素振りを見せながら口を開く。


「へんたいって何です?」


「っちが!?ティール、誤解だ!それと、イズミに変なことを吹き込むな!」


「変なことってなんですか!事実じゃないですか!そうやって誤魔化すんですねっ」


「あらまあ、どうしてこうなったのかしらね?」


 とても白々しく会話に入ってくる人物が1名。これは宿屋のおばさんがわざと引き起こした状況だと確信した。

 しばらくカオスな状況が続いたが、各々の意見をまとめ、条件付きで3人部屋に泊まることになった。


「お風呂はイズミちゃんと入りますから、その間は部屋から出てくださいね」


「分かっている。ティールこそ、必要以上にイズミを触ったりして困らせない事が条件だからな」


「分かってますよ…」


 かなりいじけていたが、イズミからの要望ということもあり、仕方なく条件をのんだ形だ。


「シュウお兄さんと一緒♪」


 上機嫌なイズミの様子を見て、シュウは照れ臭くなり、ティールの機嫌は分かりやすく直った。同じく3人の様子をずっと見ているおばさんは「まあ、微笑ましいわねぇ」と呟いた。


 その夜起こる事となるお風呂でのハプニングや、またもや色々あって三人川の字で寝ることになるのだが、それはまた、別のお話。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 シュウ(主人公) 19歳


 アンノウンスキル「拒ム者(コバムモノ)」:世界のあらゆる事象、恩恵から拒まれる。特殊空間の形成が可能。




 見た目:くすんだ紺色のショートヘアー、金色の目、服装は動きやすい物が多い。身長は178㎝で体重が71kg


 特徴:すべてを失ったあの日以来、世界に対して否定的になった。しかし、性格は以前ほどではないがポジティブ。身体能力がさらに向上し、空白の3年間にてとある師匠から剣を学び、戦闘に特化している。イズミと出会ったことで何かが変わるのではないかと期待している。


 ティール 22歳


 レアスキル「必中」:飛び道具全般において命中率を格段に引き上げる。

 スキル「肉体強化++」:身体能力全般の上昇(そこそこ)


 見た目:黒色のロングヘアー、濃い茶色の目。スタイルがよく、笑顔がよく似合う。胸が大きいわけではない。身長は163cmで体重が61kg


 特徴:元冒険者だったが、ギルドの受付嬢に転身した。冒険者時代に色々あったみたいだが詳細は不明。明るく人懐っこい性格。イズミが関係すると変態っぽくなる。追いかけてきた理由の大半はイズミを守る為。

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