愛
生きていて良かったと思うこと。
美味しい物を食べた時。空がキレイだった時。
キミと何気無い会話ができた時。
いつからだろう?
私の前を通り過ぎた君から目が離せなくなる。
キミを見てるだけで、ドキドキが止まらない。
ただの友達のはずだったのに、いや、今でもキミにとっての私はただの友達であることに変わりはないんだけど。
きっかけは何だったのだろう?
気が付いたら大好きだった。
朝起きてから眠りにつくその瞬間までキミのことばかり考えてる。
「カナ、今日の部活休むって言っておいて。」
昼休みの教室で、ふいに君から話しかけられた。
分かったと小さく言ったものの、胸の中は穏やかじゃない。
放課後のキミはどこで、誰と過ごすの?
胸の中が不安でいっぱいになる。
キミとは友達以上の関係を望んでる訳じゃない。
ホントに?ホントにそう思ってる?ホントにそれでいいの?
自問自答しながら、友達以上になれないこと分かってるから胸が苦しい。
「ちゃんと聞いてる?」
私の目をのぞきこむキミの目を見ることができない。
「お前、今日調子あまり良くないだろう?」
え?
「弁当進んでねーし、顔色あんま良くねーし。」
「……。」
「これでも飲んで元気出せよ。」
ポケットから私の大好きなドリンクを出して、私の目の前に置いた。
「部活、無理すんなよ。今日も暑いし。」
何て言いながら、私の頭をぽんぽんと叩く。
あー、やっぱり大好き。いつも通りの何気無い優しさ。
キミの優しさはいつも全く同じ。
数ヶ月前、キミに想いを打ち明けた時、キミは意外そうな顔をしてたけど、真摯的な態度で、
『自分にはお前を受け入れる事はできないけど、こんな自分を好きだと言ってくれるならできる限りで答えたいと思う。』
正直、私には、その言葉だけで充分だった。
キミとは一緒になれないの分かってるから。
でも……。
いらない嫉妬ばかり増える。
「まぁ、あんま無理すんなよ。」
こんなんじゃ、いつまで経っても嫌いになれない。
いずれ諦めなければいけないって分かってるのに。
『お前さ、自分は傷付いた傷付いたって言って、人のことは傷つけてもいいって言うのかよ。』
私の友達がキミと仲良くしてるのを見ただけで、私はその友達をひどい言葉で傷付けた。
傷付けた友達はキミにとっても大切な友達なのに、一方的に悪い私のこと、見捨てたりせず、厳しく叱咤しながらも、私のことを守ってくれて、私が変な嫉妬しないようにいつも気を使ってくれる。
いつも正しく、真っ直ぐなキミがとても愛しい存在。
そんなキミにこれ以上迷惑かけたくないから、諦めなくちゃいけない。
「何かあったら、夜、連絡して。」
そう言って、自分の席に向かって行く、キミの制服のスカートが風で揺らめいた。
キミと結ばれないこと分かっていても、キミが好きで仕方ない。
明日も明後日も大好きだよ、愛ちゃん。