カミングアウト
なんか、疲れた。
一限目の現国が終わって休み時間。私はぐったりとしていた。あの後教室に入れば何だか針のむしろ。えっと。
これは……彼女さんは公にできないよね。映見君は。私だったら嫌だもん。
ついでに縁は隣のクラスなんだ。ぼんやりと映見君を探すと何処かに逃げたのかその存在は見当たらなかった。
その代わり私の周りに群がられても。影が……何かのいじめなのかな? コレ。
「ちょっと! ちびっ……五木さん」
「なに?」
ちびっ子とか言おうとしたでしょう? 今。知ってるんだから、私が影でちびっ子とか言われてることはっ!
……悲しい。
「映見君と何話してたのよ?」
「あーー」
彼女さんの話とかはやっぱりダメだよねぇ。大騒ぎになるし、私が言うべきことではないし。
……。
というか、縁の存在は軽く消してるよねこの人たち。
……。
縁頑張れ! 私は縁の味方だからね。
「ええと。縁と、話してただけだよ? こんど遊びに行くとか」
まぁ、嘘じゃないし。
「吉岡ぁ? あいつ、仲良かったの? 映見君と」
まぁ、良いといえば、いいのかな? ちなみに縁と私の関係は知れ渡ってるから何も言われない。
もう付き合えと言われるんだけどね。うーん? そんなこと考えたことは一度もないんだよね。多分縁もそう。何度も言うけど、兄弟みたいなんだよね。私達。
それに私こないだまで好きな人いたし、縁だってそうだよねぇ。だから無理な話。
「五木さんも遊びに?」
なんでお前まで行くんだよ! 辞退しろよオーラが……怖い。思わず隙間から救いの手ーー親友の顔を探すが彼女は死んだ目でこちらを見ている。生きろ。口元がそう言っているようにみえる。
無理かぁ。ダヨね〜。
でも、約束だし、せっかく誘ってくれたし。見込んでくれたってことだよね。彼女さんのために!
私は頭の中で考えを巡らせようやく思いついた。
じゃあ。こうすればいいよねっ!
私って頭いい! 皆。仲良し! ふふっ。あ、この際だからクラス全員とかいいかも。男子もね。
そしたら縁の好きな人探れるかもしれない! このクラスにいるって言ってたし!
プレゼントはこっそり大作戦で行けばいいよね。
「あ、じゃあ。……皆も行く?」
「ええ? いいの? 私達も行って?」
いや、かなりわざとらしいけど気のせいかなぁ? まぁ、嬉しそうだしいいのかなぁ?
「うん。まぁーー後で縁には言っておくし。あ、映見君。聞いてた?」
丁度教室に戻ってきていた映見君に私は声をかけると彼はニコリと微笑みを浮かべる。
私はなんとも思わなかったんだけど、周りの女子がかすかに沸き立った。
まぁ、たしかにイケメンだしね。私は縁で馴れてるから何も思わないのかもしれない。
そう言えば私好きになる人って目立たないタイプなんだよなぁ。ふと思う。
「いいけどーー僕の趣味に付いて来られるなら……」
「何ですか?」
声音も表情も違うんだけ……それは置いといて。趣味って何だろう?
音楽鑑賞ですか? それとも日本的に華道とか茶道。ピアノなんて似合う。
イロイロ妄想に入ってしまったけれど次の言葉に私はーーいや、女子全員の夢は打ち砕かれた。
「僕アニヲタだから」
……。
……。
まさかの?
言い切ったよ。ドヤ顔で。イケメンだしキラキラしてるけど、周りはフリーズ。驚きすぎて声も出なくなってるみたい。
ああ。鐘の音が静まり返った教室に虚しく響く。
なんとなく嫌な予感に私の顔は引きつっていた。