仲間集め 2
お城に帰ると、私はユーゼリクス王の元へ連れて行かれた。
ユーゼリクス王の執務室に入ると、何故か各団の団長と副団長が勢揃いしていた。
全員の視線が私に集まり、私が緊張に身を強ばらせると、ユーゼリクス王が静かに口を開いた。
「……勇者様。騎士団長より念話にて報告がありました。街へ行き、私物を売ってまで金銭を得て、奴隷を買われたとか」
ユーゼリクス王はそこまで言うと一度言葉を切り、ちらりとユフィルを見た。
そして再び口を開く。
「……どのようなお考えがあっての行動か、お聞かせ戴けますでしょうか」
静かな声だった。
ユーゼリクス王は、怒るでもなく、呆れるでもなく、無表情でただ淡々とそう尋ねてきた。
それが更に私を緊張させる。
どうしよう、その場しのぎの誤魔化しは通用しなさそうな雰囲気だ。
かといって、ゲームがどうの、エンディングがどうのと言い出せば、正気かどうかを疑われるだろう。
困った、なんて言おう……。
「……勇者様。お答え下さい」
「うっ……。……えっと、ですね。……こ、この子には、魔法の才能があるんです。だから、えっと、魔王討伐の旅の仲間に適しているかと、思いまして……」
「……魔法の才能が? ……何故、そんな事がわかるのですか?」
「そ、それは、えっと…………そう! 鑑定スキルです! 鑑定スキルを使ってこの子を鑑定したんです!」
「…………鑑定スキルで、人の才能の有無がわかる、と?」
「は、はい! そうなんです!」
「………………」
私の返答を聞くと、ユーゼリクス王は手を額に当て、目を閉じ、口を閉ざしてしまった。
う……やっぱり鑑定スキルでっていうのは、無理があったかな……?
「……まあ、それに関しては、ひとまずいいでしょう」
少しの沈黙のあと、ユーゼリクス王は少し疲れた声色で、再び口を開いた。
「勇者様。貴女様は彼に魔法の才能があると知り、魔王討伐への仲間に適していると考え彼を買われた……という事ですね?」
「は、はい、そうです」
「なるほど。……ならば、その彼の魔法の才は、魔法士団の者達よりも上だという事でしょうか? 望めば仲間に加えられる魔法士団の者には見向きもせず、即座に彼を買いに行かれるほどに、その彼には才能があるのですね?」
「あ、はい、そうです。訓練を積んで成長すれば魔法士団の部隊長クラスの使い手になります」
ハッピーエンドでのユフィルは仕官し、そうなっていたから間違いない。
その事から私はさらりと答えてしまったのだけれど、すぐにそれが失敗だった事に気づかされた。
「……ほう、それは興味深いですね。誇り高き我ら魔法士団の部隊長達と同等の使い手、ですか」
「私のすぐ下に列席するというわけですね。魔力を探ってもあまり感じられない、その彼が」
「え? ……っ!?」
ふいに横から聞こえた声に視線を向けると、魔法士団の団長と副団長がその瞳に怒りを宿し、ユフィルに厳しい視線を向けていた。
「訓練を積めば、というならば、勇者様が魔王討伐に出発なさるまで、彼の訓練は我々魔法士団の者がつけましょう。勇者様のお供として恥ずかしくないよう、しっかりと鍛えて差し上げます」
「えっ! ……ええと~……!」
ま、まずい、あれ、失言だった!
魔法士団の面々の不興を買ったっぽい!
このままユフィルの訓練を任せたら、ユフィルは訓練という名の元に痛めつけられるかも……!!
「……そうだな。許す。彼に訓練をつけてくれ。本当に才能があるのなら、そなた達に任せるべきだろうからな」
「えっ!?」
「は、承りました」
「あ……っ!!」
う、嘘、どうしよう、決定しちゃった!!
このままじゃユフィルが酷い目に……!!
「あっ、あの! ユーゼリクス王が任されたのは、訓練ですから! こ、この子に酷い事したら、許しませんからね!?」
「……それはどういう意味でございましょう」
「勇者様は、我々がその子をぞんざいに扱う、とでも……?」
「……あ……っ!」
し、しまった、これも失言だった!
「すっ、すみませ」
「そう言われても、仕方がないだろうな。勇者様は間違ってはおられぬぞ、二人とも」
「……えっ?」
「「 陛下……!? 」」
私は謝ろうと口を開いたが、その言葉はユーゼリクス王に遮られた。
ユーゼリクス王から告げられた言葉に、魔法士団長と副団長は、揃って困惑の声を上げた。
「そなた達が今、どんな目でその少年を見ているのか、わからぬのか? 勇者様に団の者の力を軽んじられ、憤る気持ちはわからなくもないが……だからといってそのように少年を敵視するような目で見てよいわけではない。頭を冷やせ」
「っ! ……申し訳、ございません」
「御前にて、お見苦しい姿を晒してしまいました……お許しを」
続いたユーゼリクス王の言葉に、魔法士団長と副団長は恥じ入るように頭を下げ、謝罪した。
……う~ん……私は別に、魔法士団の力を軽んじたわけじゃあ、ないんだけど……ああ、失敗したなぁ。
反省しなきゃ。
「勇者様。その少年がまこと勇者様の仰るような才能の持ち主ならば良いのですが、現状として、それは判断できかねます。よって、残り二人の仲間は実力を重視し、各団の副団長か団長をお選び下さるよう、お願い申し上げます」
「あ……はい。わかりました。そうします」
ユフィルの事で我が儘通しちゃったからね。
あとはちゃんと、言う事を聞きますよ。
「お聞き届け下さり、ありがとうございます。……騎士団長、念の為、そなたも彼に訓練をつけてくれ。魔王討伐の為には、魔法の才のみならず、剣の才も見て、伸ばしておきたい」
「は、かしこまりました。すぐに魔法士団長と話し合い、この者の訓練スケジュールを立てます」
「ああ、そうだな。時間は限られている事だし、効率重視で訓練スケジュールを作らねばな」
「うむ、頼むぞ、二人とも」
私の行動についての話はこれで終わったのか、すぐ横で、そんな会話が交わされていく。
……ユフィルの訓練かぁ。
魔王を討伐できるかどうかは別として、旅に出て魔物と戦うんだし、私も何かできたほうがいいよねぇ。
よし、ユフィルの訓練に、私も混ぜて貰おう。
……何らかの才能が私にあるかどうかは、わからないけどね。
さて……とりあえずは、と。
私はユフィルのほうに向き直った。
「ねえ、そういえば自己紹介とか、まだだったよね? 私、アカネ・カジ。17歳だよ。貴方は?」
「あ……。……ユフィル、です。14歳、です」
「ユフィルだね! これからよろしくねユフィル! 私の事は、アカネって呼んで!」
「は、はい。よろしくお願いします、アカネ様」
よし、自己紹介終了!
これをせずに、いきなり名前を呼ぶわけにはいかないからね、自己紹介は大切です。
こうして、私は一人目の仲間に、ユフィルを加えたのだった。
さて、楽しんで戴けてるでしょうか?
これは、恋愛ものです。
今のところ、何故か、乙女ゲームという言葉とそのキャラが出てくるだけの異世界ファンタジーものになってますが、ちゃんと恋愛ものになっていくはずです。
ただ今はちょっとだけファンタジー要素が強いだけなのです。
……うん……何がどうしてこうなったのでしょう……orz




