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葛藤と新たな決意

翌日から、王都への旅路には彼女と彼女の仲間も加わった。

彼女と、彼女の仲間の一人、自警団の少年も馬には乗れないという事で、王子殿下のはからいで馬車がもうひとつ用意された。

あと二人くらいなら余裕でこの馬車に乗れると思うのにどうしてもうひとつ用意したのかわからないけど、正直彼女と一緒の馬車に乗るのは辛かったので、助かった。

何を話したらいいのかわからないし、かといってすぐ側に座っているのに話さないのも気まずいし。

それに…………個人的に、彼女と接触するのは、避けたかった。

王都へと進む中、魔物に遭遇すると馬車を止め外へ出て、王子殿下を守る騎士様方の援護を受けながら退治する。

あの港町を出てからずっと行ってきたそれは、彼女が加わってから格段に楽になった。

本来のヒロインであり勇者である彼女はかなり強く、未だ一人では魔物を一匹倒すのも厳しい私とはまるで正反対で、ヴェル達に混じり、雄々しくもしなやかに剣を振るい、魔物をほふっていった。

そして戦闘が終わると、彼女の仲間達は勿論、ヴェル達ともお互いの健闘を讃えて笑い合うのだ。

それを見るたびに、私の胸にもやもやした感情が広がる。

……悔しい、辛い…………怖い。

彼女はこのまま、勇者の称号と共に、ヴェル達をも私から奪って……いや、取り戻してしまうのだろうか。

称号もヴェル達も全て、本来なら彼女が得るはずだったものだ。

私はこのまま、それをただ見ているしかないんだろうか。


「……嫌だ……っ」

「え? ……今何か、言ったかい?」

「っ、あ……いえ、何も」

「……そう? ……もうすぐ次の街に着くはずだ。陽も傾いてきたし、今日はそこで、宿泊する事になると思うよ」

「あ、はい。わかりました」


王子殿下と短く言葉を交わし、私は馬車の窓から外を見た。

近くで馬を走らせているヴェルとその後ろに同乗するユフィル、そしてアレクの姿が見える。

……やっぱり、このままなんて、嫌だ。

私は何もできないけれど、それでも足掻いてみようと、ヴェルへの想いを自覚した時、既に決意したはずだ。

彼女に敵う気は、とてもしないけれど……それでも。

足掻いてみよう。

その結果、やっぱり全てを失っても……何もせずにただ諦めてしまうのとは、きっと、何かが違うはず。


「……よぉし……っ!」


とりあえず、次に魔物が現れたら、私も前に出て、ヴェル達と並んで戦おう!

彼女とヴェル達の間に入らなくちゃね!

頑張ろう、まずは、そこからだっ!!



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