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真実の追求 1

街に着き、騎士団支部に到着すると、私はすぐに取り調べを受ける事になった。

目の前には、支部の長らしい騎士さんと、その副官さん、そして私を護送してきた騎士の男性がいる。

全員私に厳しい視線を向けていて、とても居心地が悪い。

唯一の救いは、隣にヴェルとユフィルがいる事だ。

ヴェルもユフィルも、王都で私とほぼ一緒にいた事から、私の証人として立ち合う事が許されたのだ。


「それでは、聴取を始めます。訴えた村人は、さる11月1日から4日間、王都に滞在したそうだ。つまり、犯人はその4日間で被害者に目をつけ、犯行を企て実行した事になる。その間の、貴女の行動を事細かく話して戴こうか」

「え、11月1日、ですか? ……ええっと……?」


そ、それって、いつ?

ついうか、今日は、何月何日?

それがわかれば、逆算してその時の行動を説明できるんだけど……。

ゲームでは、日付なんて出てこなかったし……聞くしかないかな。

支部長さんに尋ねられた内容に返せる答えを見つける為、私はまず理解すべき事を聞く事にした。


「あの、そもそも今日は、何月何日ですか?」

「………………は?」

「私がこの世界に来て、今日で……ええと……8日目、ですから、今日が何月何日なのかがわかれば、逆算してお答えできます」


私がそう言うと、支部長さんは一瞬ぽかんとした顔をした。

けれどすぐに厳しい表情に戻ると、再び口を開く。


「……貴女は、自分の置かれた状況を理解しているのかね? ふざけていないで、真面目に答えなさい。それが貴女の為だと思うが?」

「え?」


ええと……ふざけているつもりはないんですが……。

ああでも、普通は今日が何月何日かなんてわかるよね。

そんな当たり前の事を聞かれればふざけていると思われるのも仕方ないかぁ。

とは言っても、今日が何日かわからないと答えられないし……困ったなぁ、どうしよう。

私は返答に困ってうつむいた。

しかし、助けはすぐにもたらされた。

私の横から。


「アカネ様、今日は11月7日です。ですから、11月1日はアカネ様がこの世界に来て2日目になります」

「え……あ、ありがとうヴェル!」

「いえ、どういたしまして」


そっか、ヴェルに聞けば良かったんだ!

ヴェルなら、事情は全部知ってるもんね!

で、えっと、この世界に来て2日目からの、私の行動だね。


「えっと……2日目はまず、魔法士団長に魔法の訓練を受けて、午後は……あ、ヴェルと街に行ったんだよね?」

「はい。旅用品を売る店に、アカネ様に適した武器を確認しに行きましたね」

「うん。帰ってからは、部屋でお茶しながらユフィルが来るのを待って、あとは寝るまでユフィルにこの世界の文字を教わったんです。あ、食事と入浴も、もちろんしましたけど。ね、ユフィル」

「はい。王都では、毎日夕方からは寝るまでずっとアカネ様と一緒でした」

「……ずっと? ……入浴もかね?」

「へ!? ま、まさか!! 入浴以外は、です!! 変な誤解しないで下さい!!」


怪訝な顔でとんでもない事を尋ねてきた支部長さんに、私は全力で否定を返した。

大体、何でそんな所に突っ込むのよ!?

普通に考えれば入浴は別だって事くらいわかるでしょうが!!


「そうか……別か。それで、残りの3日は?」

「……翌日は、午前中に、騎士団長とアレクに棍の訓練を受けて、午後は……ヴェルに誘われて、お茶をしました」

「そうですね、本部で。あの時は少し残念でした。私のお願いを保留にすると、アカネ様は逃げるように立ち去ってしまわれたのですから」

「うっ……! そ、そのあとは部屋に戻って、ユフィルが来るまでメイドさんに文字の勉強を見て貰って、ユフィルが来てからは、寝るまでユフィルと一緒でした!!」


肯定と共にヴェルが呟いた言葉にその時の事を思い出し、僅かにヴェルから顔を反らしながら、私はそれまでより若干大きめの声でそう一息に告げた。

横から、ヴェルの視線を感じる。

やめて、見ないで!!


「よ、翌日は、また魔法の訓練を受けました! 午後は、獣士団本部に向かおうとしたらメイドさんが来て、ユーゼリクス王に謁見の間に呼ばれて」

「は!? へ、陛下に!?」

「はい。それで、旅立ちを告げられて。そのあとは、ユフィルと一緒に、お互いの荷造りを手伝い合って、それが終わったら、その日は早めに入浴と食事を済ませて、寝たんです」

「へ、陛下に謁見できるとは……。そ、それで、最後の1日は?」

「朝食を食べてすぐ、荷物を持って旅立ちました。ヴェル達と」

「そのあとは、ずっと一緒だった。アカネ様に誘拐などする暇はないよ」

「むぅ……し、しかし! 貴方様方と過ごす合間に、彼女は一人になっています! その隙に行動を起こす事は可能ですし、共犯者がいれば」

「いや、それはない」

「え?」


ふいに聞こえた声に、その場にいた全員の視線が扉に集まった。

そこには何故か、王都にいるはずの騎士団長が立っていた。

後ろにはジオル君を連れていた騎士さんと、アレク、そしてこれまた何故か、私の世話をしてくれてたメイドさんがいる。

四人とも、どこか疲れた表情をしていた。


「勇者様は……アカネ様は、ヴェルと街に出て以降、王城の敷地からは出ていない。城門を警護していた騎士達に確認を取ったから間違いない。それに、ユフィルの件があってからアカネ様には密かに見張りがついていた。故に、共犯者などという人物と会えば報告が上がる。アカネ様に子供を誘拐するなど不可能だ」


騎士団長は歩きながらはっきりとそう告げると、私の前に立ち、支部長さんを見据えた。


「勇者様の行動についてなら、私も証言できます! 王都にいる間、身の回りのお世話をさせて戴いていたのですから!」


メイドさんは声を張り上げそう言って、私の横に来ると支部長さんを軽く睨んだ。


「恐れながら。(くだん)の子供は一人で泣いていた所を王都の自警団の者に保護されています。記録にもしかとそう書かれていました。故に、迷子だと判断されたのです。なのに誘拐だなどと……それも、勇者様が容疑者などと。ありえません」


ジオル君を連れていた騎士さんは、私達から一歩離れた場所でそう告げた。


「む……し、しかし、これは誘拐だと……現に、身代金の要求があったのです!」

「何?」

「……それが、わからないんだ。迷子のはずなのに、何故身代金の要求などがあったのか……。団長、アカネ様の無実をしかと証明するには、その矛盾について調べねばなりません」


支部長さんの言葉に訝しげに眉を寄せた騎士団長に、ヴェルは考え込むように呟いたあと、そう声をかけた。


「……そのようだな。シルヴェルク、陛下から伝言だ。"勇者様にかけられた濡れ衣をしかと晴らせ"、だそうだ」

「え」

「元より、そのつもりです。身代金を要求したという輩には、心の底から後悔して貰わねば」

「無論だ。勇者様に、こんな迷惑をかけたんだからな」


そう言って、ヴェルと騎士団長は頷き合った。

……えっと……どうやら私は、ヴェル達はもちろん、騎士団長やユーゼリクス王にも信頼されているようだ。

それはいい、単純に嬉しい。

けど……ひとつ聞きたい。

"ユフィルの件があってから、私には密かに見張りがついていた"って、どういう事?

信頼されてるんだよね私?

何で見張りがついていたのかな?

ねぇ、誰か教えて?

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