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始まりは悲しみの中で

クローゼットを開け、小物入れを開け、引き出しを開け、ありとあらゆる場所から高価な服やアクセサリーやバッグを、次々とキャリーケースに詰めていく。

売ってやる。

綺麗さっぱり売り払ってやる。

そして、早く忘れるんだ。


『俺がお前程度の女と本気で付き合ってるとでも思った? 遊びに決まってるだろ』


嘲笑うようにそう言って別れを告げられたのは、つい数時間前の事だ。

彼の事は、以前から知っていた。

近くにある大学の大学生で、何かと噂が聞こえてくる人だったから。

年上で、イケメンで、有名な会社の社長子息である彼が、美人でもない、どこにでもいる、ただの平凡な女子高生である私に突然告白してきた時は、冗談だと、からかわれてるんだと思った。

けれど、その後も何度も私に会いに来て、熱心に好意を伝えてくる姿を見て……冗談でもからかってるわけでもなく、本当なんだと、信じたのに。

付き合って一年が経った今日、全てが嘘だったと、知らされた。


「……よし、これで全部」


この一年、彼からプレゼントされた品々を全てキャリーケースに詰め終わると、リサイクルショップへ行くべく立ち上がる。

するとその直後、足元がまばゆく光を放った。


「え?」


不思議に思って足元を見ると、そこには丸い円形の、見たこともない紋様が現れていた。


「……何、これ?」


突然現れたそれを呆然と眺めながら呟いた次の瞬間、それは強く輝いた。

あまりの眩しさに私は一瞬目を瞑り、そして再び開くと……目の前には、見知らぬ部屋と、人々がいた。

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