千尋の反論
第9話です!
お待たせしてすみません。
「参ったな。どうしようか。」
眠り込んでしまった千尋を見つめながら深月はぼやく。眠り込んでしまったのは、おそらくなんの術も施さないままに神を降ろしたせいだろう。そのうちに目は覚ますだろうが、このまま置いておくわけにもいかないし、このまま二人で一緒にここにいるわけにもいかない。どうしたものか。
「若。探しました。」
図書室に入ってきたのは深月に仕えている葉間補行だ。深月の腕の中にいる千尋を見つめて顔をしかめた。
「そちらは?」
「今度お見合いする神藤家のお嬢さんだよ。」
深月がしれっと言うと、補行は千尋を見つめる。そう言われたらそうだ。深月の学年でも高嶺の花とされている神藤千尋。自分の家が代々仕えている大和家の敵対している神藤家の娘だ。
「若。災いをわざわざ招くような真似せずとも。」
「補行。この子が俺の唯一で永遠だ。」
「は?若。この方は神藤家の人間ですよ?しかも神子姫じゃないですか。そんな方を娶っても若のためにはなりません。考え直してください。」
補行は慌てたように言う。深月は千尋を優しく見つめている。
「いやあ、無理無理。もう決めたから。この子は嫌がってるけど俺を選ばせてみせるよ。」
そんな風に言う深月を見つめてため息をつくしかなかった補行だった。
ぱちり。千尋が目を覚ますと、身に覚えのない場所だった。ベッドで部屋は思いっきり洋風だ。
「やあ。起きた?」
ベッドの脇にある椅子に座って覗きこんでいるのは深月だ。
「ここは?」
「ここ?ここは俺の隠れ家みたいなところかな。神藤が眠ちゃったから連れてきちゃったんだ。」
深月は何気無く言う。千尋は寝起きで働かない頭も無理矢理働かせた。どうやら勝手に架稚子が千尋に憑いたせいで意識が飛んだらしい。
「それはお手数かけまして。」
千尋は一応謝っておく。
「気にすることないよ。...神藤。あんな風になるのはよくあることなのか?」
「あんな風?...ああ。意識を取り変わられちゃうこと?滅多にないかな。だってそうそうされても困るし。何か変な事でも言ってた?」
「特には言ってないよ。ただ少し気になっただけだから。ほら、これから君と付き合って行く上で困るかなと思うし、一応確認をね?」
深月は茶目っ気たっぷりに言う。千尋はその言い方にいらっとした。全くこの男といると自分のテンポが守れないのはどうしてなんだろうか。千尋は今まで大抵のことには寛大であったはずなのに。
「ふふ。大和君。きっとこれから付き合って行くことなんて未来永劫ないからそんな心配しなくても大丈夫。これ以上お邪魔しても悪いし、帰るね。」
千尋はにっこり愛想笑いを浮かべて言うと、ベッドから降りようとする。
「つれないな。君は。あと一週間後にはお見合いする仲じゃないか。」
そうやって近づこうとする深月の足を千尋は思いっきり踏んでやった。
「適当に神藤と近しい家の人と結婚して良好な仲を築いて死ぬまで神藤に献身であれ。これが歴代の神子姫に求められてきたことよ。たまにこれをしない神子姫もいたけれど、そんなの私には許されない。貴方と結婚するようなことになったら私は私の小さい頃の夢が果たせないの。...わかったら、私の邪魔しないで。これが最後の警告よ。大和深月。貴方と結婚することはない。唯一で永遠になるのは私じゃないの。」
千尋は深月を睨みながら言う。深月はそんな千尋に圧倒されているようだった。千尋はそのまま部屋を出る。
帰り道は適当にタクシーを拾って帰った千尋だった。
第9話如何だったでしょうか?
これから話が
少し進みます。