閑話1
遅くなりまして非常に申し訳ないです!
そして今回はちょっとお休み回。
次回は少し長く書きたいです。
白い小袖に緋い袴。長い髪は一つに結い、顔には軽く紅と白粉だけをつけている。これが千尋のお務めの格好である。一日に一回、舞を納めなければならない。神藤神社の祭神に。紅の扇子に鈴がついたものを使い、舞う。これによって神藤一族の力はより良きものになると言い伝えられている。千尋のように舞を奉納する本家の娘のことは、神子姫と呼ばれるのが通例だ。当代の神子姫は千尋である。
「67代目。我らが神子姫を大和と婚約させるというのは真なのですか?」
鋭い眼光で聡に厳しく問いかけるのは、分家筆頭の藤近家当主、藤近貢である。
「ああ。半分当たりで半分は外れ。...お見合いをさせるだけだ。」
聡がそう言うと、貢は眉間にシワを寄せる。
「させるだけ?させるだけでも問題でしょう。あの方は神子姫だ。しかも歴代随一とも呼ばれているのですよ。大和にしろどんな家にしろあの方を一族以外に嫁がせるなんて反対です!」
「神子姫の結婚に関しては君の預かり知る所ではないだろう。ここは大人しくしているのが賢明ではないかな。」
聡が穏やかに尚且つ厳しい瞳で釘をさすと、貢も言葉を失ったようだった。
「貢さんにも困ったものですわね。」
芙由子は聡にお茶を出して言った。芙由子の言葉に聡は苦笑するしかない。
「彼は真面目だからなあ。彼の言いたいことはわかる。このままもしも神藤と大和が結びつけば、破滅に向かうかもしれないのだから。」
聡は憂いを帯びた顔で言う。芙由子はそんな夫の手に自分の手を重ねる。
「あなた。神藤を破滅になどなるわけがありませんわ。私はあなたがなさっていることは正しいと思います。私は何があってもあなたと子ども達の味方ですから。」
芙由子はそう慈愛に満ちた声で言う。聡はその言葉に微笑んだ。
なんだかんだで、聡と芙由子は仲の良い夫婦なのだ。
『千尋ちゃん。忘れちゃ、だめだよ。私達は...じゃないんだからね。』
ぱちり。千尋は目を開けた。懐かしい夢を見たものだ。あの女の夢を見るなんて。
『結婚しよっか。』
急にあのふざけたプロポーズを思い出してしまった。ふざけるにもほどがある。ほんとにあんな跡継ぎで大和家は大丈夫なのだろうかと逆に心配してしまったぐらいだ。千尋はぶっちゃけると初恋だってしたことない。つまりそういう免疫がまったくないが、だからって見た目がいくらかっこよくて、頭もよくて、運動神経もよくて、家柄だっていい大和に惚れたりしないのだ。絶対にありえない。
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