神藤家家族会議1
第3話です。
ちょっと短いですがすみません。
「とりあえず、あなた。きちんと説明していただけます?どうして千尋が深月さんと婚約なんて話が出たのか。」
芙由子が冷たく聞くと、聡は身を竦ませる。
「昨日は、皆知っていると思うが、5大家と異信会との定例議会だった。いつも通り定例議会が終わったあとは全員で宴会をしたんだ。そこでだな、私は...らしい」
聡は言いにくそうに声を小さくした。芙由子はきっ!と聡を睨む。母は普段は穏やかで物静かだが、子どもを絡んだ時はひどく気性が荒れる。
「聞こえません!はっきり言ってくださいませ!あなた」
「母上。落ち着いてください。」
千歳が慌てて芙由子を宥める。
「えーと。つまりそこで私はお酒を飲みすぎたらしい。つい、千尋の自慢話をしたら止まらなくなってな。」
聡は必死に昨日あったことを思い出した。
『神藤様のお嬢さんはなんて言いましたかな。』
5大家の一つ、天立家の当主は聞いた。
『千尋です。天立様。』
『ああ、そうだ。千尋さん。そんな名前でしたな。大層できたお嬢さんだとか。』
『いえいえ。そんなことはございません。』
『そんなことあるでしょう。神藤千尋さんは学院でも有名ですよ。私も将来が楽しみです。もう婚約者がお決まりで?』
そうやって二人の会話に割り込んだのは異信会総帥兼異信学院理事長の定平信哉だ。
『まだです。娘はまだ16ですし。』
『是非、我が息子に、と言いたいところですが、神藤様にはもっといい嫁ぎ先があられるようだ。』
『おや、そうなのですか。』
信哉の言った言葉に興味を持ったように天立は聞き返す。聡は耳を疑った。
『はい?』
思わず間抜けな声で聞き返すと、信哉はふ、と微笑む。
『またまた。隠さずとも良いでしょう。...神藤様はお嬢さんを大和様の跡継ぎ殿と婚約させるおつもりなのでは?』
信哉のその言葉にその場にいた全員がシーン、と静まり返った。5大家に名を連ねるものなら誰でも知っていることだ。よほどの理由がない限り神藤と大和が結びつくことがないことは。
『そんな話は初耳です。』
大和家当主雅房が言った。
『私もです。』
『そうなのですか?...しかし、悪くない話だ。神藤と大和の距離はもう少し近づくべきだと私は常々思っていたのですよ。是非、検討していただきたい。ついては、とりあえず神藤千尋嬢と大和深月君を一度お見合いさせてみませんか?これは異信会総帥としての要請です。』
信哉が言うと、聡も雅房も難しい顔になる。異信会には逆らいたくないが、大和と神藤を結びつけるわけにはいかない。二人の思いは同じだった。
『仕方ありません。総帥がそこまでおっしゃるからにはしないわけにはいきませんね。』
雅房はため息混じりに言う。
『とりあえずお見合いだけならば。』
聡は項垂れて言う。そんなこんなで婚約話は公で出てしまったのだった。
第3話いかがでしたか?
家族会議はもうちょっと続きます。
次回も早めに投稿できるよう頑張ります。