広花の忠告
新キャラ登場です!
千尋は今日はお墓参りのために道を歩いていたのだが、目の前で歩いている美女に声をかえるか悩んでいた。美女の名前は定平広花。信広の姉であり異信会会長の長女である。ちなみに年は25。千尋はやっぱり声をかけることにした。
「広花さん。」
「あらあら。やっと声をかけてくれたのね?千尋ちゃん。」
広花は千尋の方を向き、艶やかに微笑む。相変わらず食えない人だ。
「気づいてたんですね。」
「ええ。いつ千尋ちゃんが声をかけてくれるのかしらと今か今かと待ってたわ。」
広花はふふっ、と笑いながら言う。そんなに親しいわけではないが、会話をする程度の仲ではある広花。広花はとてもフレンドリーな人間であった。そして、とても美しい人だ。外見は顔も体も完璧な美女である。
「そういえば、深月君と良い仲なんですって?素晴らしいことだわ。」
広花は嬉しそうに言う。それから真剣な表情を浮かべ、千尋の手を取った。
「ね、千尋ちゃん。本当に大切なものは手放しちゃだめ。何があっても。」
広花は真面目に言う。千尋はそんなことを広花に言われると思っていなかったので、驚いたように目を見開く。
「広花さん?」
広花に声をかける人の声で広花は我に戻る。広花に声をかけたのはとても美しい青年だ。千尋の記憶が正しければ西六日家筆頭、神功家の跡継ぎ息子である神功鞘征だ。広花は艶やかな笑みをすぐ浮かべて鞘征の方を向く。
「ごめんなさい。今行きますわ。」
そうやって広花は言って千尋の横を通る。
「貴女たちは私達のようになっちゃだめよ。千尋ちゃん。」
広花は千尋の横を通る時に本当に小さな声で言った。
「え?」
千尋は思わず聞き返してしまう。だが、そこにはもう広花も鞘征もいなかった。
「やあ、神藤。なびく気になったかな?」
深月はにこにこと千尋に声をかける。お墓参りの後で深月と会う約束をしていたのだ。
「どんな声のかけ方よ。」
千尋はげっそりしながら言う。
「えー、そろそろなびく頃だろ。ははっ。今は何%ぐらいはなびいてるのかな、うーん。」
深月はそうやって考え込む。千尋は心の中で70%くらいと思った。おそらく千尋は深月に傾きかかっている。それがわからないほど千尋だって鈍くない。
「70%だ。」
深月がそう言って微笑むと千尋は驚いたように深月を見つめる。
「あれ、図星かな?」
深月はそう言う。千尋は何も答えなかった。
「いつでも大歓迎だよ。神藤。」
深月はそう言って手を広げる。千尋は少し腹が立った。仕返しのつもりで深月に飛びつき、さっと呪い符を取り出す。だが、深月はぎゅっと千尋を抱き締める。
「神藤。日ごとに君を離したくなってくる。」
深月は切なそうに囁く。さっきと打って変わった様子に千尋は訝しげに思い、呪い符をしまう。そして、深月の頭に手を伸ばして撫でる。深月は一瞬目を見開き微笑んだ。




