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神藤家の退屈しない日常  作者: 三都花実
千尋の自覚編
22/33

閑話1

お久しぶりです!

「ん?千尋か?こんなとこで何してるんだ。」


 千尋に声をかけたのは幼稚園から一度も千尋と違うクラスになったことのない理事長子息である。定平信広だ。


「あれ?広ちゃん。久しぶりーでもないね。」


 千尋がちゃらけたように言うと、信広はため息をつく。信広は千尋がちゃらけれる世にも珍しい人である。それには幼い頃からの付き合いということ点に加えて、ある理由があるのだが、関係ないので今ははしょることにする。千尋は信広のことを友人として気に入っていた。彼といると気どらなくてもいいからだ。千尋は地面に這いつくばって何かを探しているのだ。


「千尋はコンタクトだったか?」

「まっさか。私視力めっちゃいいよ。コンタクト探してるわけじゃないよ。...ここにいらっしゃったんですね。付喪神様。探しましたよ。...神藤の血をもって命じる。この方をあるべき場所へ導け。」


 千尋は目的物を見つけると、微笑み、術紙を取り出し言う。術紙は鳥の形になり、付喪神を乗せどこかに飛び去った。千尋は満足そうに見る。どうやら千尋の探し物は付喪神だったようだ。


「相変わらず顔色一つ変えずにあんな芸当できるとはな。流石神子姫だな。」

「まだいたんだ。そんなんじゃないよ。人から頼まれたことだったからね。仕事の一環だよ。舞うよりは楽だし。それより、こんなとこで会うなんて珍しいね。」


 千尋は笑って信広を見つめて言う。信広は頷く。ここは異信学院高等部の旧校舎だ。取り壊し予定であり人は滅多に寄り付かない。


「ああ。ここで、深月と待ち合わせてたんだ。」

「広ちゃんと何故か仲良いもんね。大和くん。まあ、仲良きことは良いことだよね。」


 千尋はその場を立ち去ろうとしたが、信広はまだ何か言いたそうだ。


「千尋。こないだは親父が悪かったな。」

「いーや。おかげで目が覚めた。理事長にはお礼言わなきゃね。そして自覚もできたわ。どうあっても私は神藤千尋で変わりない。」

「...俺が言っているのは深月との婚約の話だ。」

「あ、そう。うん。その話ね。うんうん。」


 ちょっとかっこつけた手前恥ずかしくなった千尋なのだった。


「大和君ともより良い婚約関係を築くつもりだから安心して!」

「は!?お、おい。千尋」

「大丈夫。伝承も忘れてないから。」

「伝承って。それもだけどな、お前波宮はいいのかよ。」

「いっちゃん?何でいっちゃんが出てくるわけ?」


 千尋は不思議そうに小首を傾げる。信広は口をぱくぱくと動かしている。どうやら何かに彼は驚いているようだ。大きなお世話かもしれないが、彼は父親を見習い、もう少し信哉ぐらいには落ち着くべきではないだろうか。


「千尋。お前、ほんっっっっと鈍感だな。昔から思ってたけど。まあいいや。これって本人同士の話だし。」


 信広は何かを悟り諦めたように言う。千尋には何を言っているのか、ちんぷんかんぷんである。


「えーと、じゃあね?」

「おー、またな。」


 信広はひらひらと手を振る。



第22話如何だったでしょうか?

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