千尋と深月の再約束
第17話です!
「とりあえず!金輪際、千尋に関わらないで。婚約の事だけど、貴方が責任持ってどうにか揉み消しなさい。それぐらい貴方には簡単でしょう。」
鞘花は親友の婚約者に言い放つ。鞘花の親友千尋はまだ澄んだ目で深月を見つめている。ショックのあまりどこかおかしくなっちゃったのだろうか。千尋本人も気づいていないようだが、千尋は深月を気に入っていたようだから。あの記憶を見たらよくわかる。
「わかったよ。そうする。もう神藤も限界だろう。」
深月は千尋を見つめながら言う。
「ちょっと待って!それじゃあ大和君と私の約束はどうなるわけ?伝承を解決してくれるっていう約束は?」
千尋はもう元に戻っている。
「いや、それはもうなしだろ。」
深月が言うと、千尋はつかつかと深月に近寄って深月の胸ぐらをつかむ。
「男に二言なし!って言葉知らない?一度言ったことなら責任持って最後までやりとげてよ。もし伝承を解決してくれたら約束通り婚約者のふりだって上手にしてあげるし、結婚してあげる。そしたら貴方は私が側で望み通り狂っていくさまがみれるでしょう。私は狂うつもりなんてこれっぽっちも全くないけど。」
千尋はぱっと手を放す。深月は呆然としている。それから、千尋は手で軽くぱちん、と深月の頬を叩く。
「これで私をからかったことはゆるしてあげる。」
千尋は微笑んで、そう言うと、部屋から出て行ったのだった。
「くくっ。はははっ。」
深月は笑っている。鞘花は固まっている。千尋があそこまで言った理由はわかる。彼女はそうまでして神子姫の呪いを解きたいのだろう。今までの呪われた神子姫は全員大和を愛していたせいで狂ってのなんとも言えない切ない話なのだから。千尋はともかく他の神子姫は愛したが故なのだ。
「ほんっと。古藤の親友は馬鹿だよ。今なら離してやろうって思ったのに。」
深月は笑いながら言う。
「千尋を悲しませないで。もう私にはこれしか言えないわ。じゃあね。」
鞘花はそれだけ言い残して去ろうとする。
「古藤。感謝するよ。君のおかげで、彼女とより良い関係を築けそうだ。」
深月はそう言った。鞘花はひょっとして自分はとんでもないことをしてしまったのかもしれないと後悔するようになる。
千尋は怒っていた。相当だ。
「千尋?帰っていたのか。帰っていたなら返事ぐらいしなさい...って。お前、どうした?」
家に帰って部屋にこもっていると、長兄の千歳が千尋を尋ねて、千尋を見てぎょっとしている。
「え?」
「え?じゃないだろう。この阿呆が。ほら、いつまでも手のかかる。」
千歳はそう言って懐からハンカチを出して、千尋の目を拭う。どうやら千尋は怒りながら泣いていたようだ。
「お兄様。私すんごい怒ってるの。私ね、でもなんで怒ってるのかわかんないんだっ。だって初めからあの人の事信用してなかったのに、どうしてこんなに嫌な気分になるのかなあ。」
千尋は泣きながら言う。千歳はため息をついて、千尋を引き寄せる。そして千尋を撫でた。
「わけはわからないが、お前はいい子だよ。千尋。俺の大切な妹だ。だからもっと家族を頼って、辛いことがあったら、俺達も一緒に辛いことを背負ってやる。だから、泣きたい時くらい泣きなさい。」
千歳はそう言って、千尋を幼い子のようにあやすのだった。千尋はそれにとても安心する。
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