深月の真実の告白
「ちーひーろ!」
そう言って千尋に飛びつくのは鞘花だ。その手には弁当箱がある。
「わ、鞘花。」
千尋は鞘花を抱きとめた。
「千尋。婚約したんだって?」
そう聞く鞘花はとても千尋を心配しているみたいだ。千尋は頷く。
「なんとなくそうなる気がしてた。だって理事長が自分の意見を曲げることって中々しないもんね。だけど、千尋。貴女が本当に嫌ならなんとかしてあげたい。私の力を全て使ってでも。」
鞘花はそう真摯に言う。千尋は微笑む。
「私はいいの。...とりあえず伝承をどうにかできたら、結婚してもいいの。」
千尋の言葉に鞘花はまだ心配そうだ。
「大和君。」
鞘花はにっこりとして、深月に喋りかける。ここもまた学校で滅多に人が来ない特別室で、そこに鞘花は深月を呼び出したのだ。
「こんなところで親友の婚約者と逢引をもちかけるなんて、古藤もやるなあ。」
「ふざけないで!大和深月。あのね、私にはちゃんと好きな人がいます。あんたなんかお呼びじゃないわよ。」
鞘花はきつく睨みながら言うと、深月は肩をすくめる。
「ね、私本当は普段はやらないんだけど、千尋の記憶を読んだの。...ねえ、貴方。千尋の事、本当に好きなの?私、家の仕事柄、他人を見抜く力だけは鋭いつもりだけど、貴方、千尋の見た目に惹かれてそのまま一途に愛するような単純な人間じゃないでしょう。」
鞘花はそう言った。大和深月。あの大和家本家の次期当主。あの家はただの家ではない。血に塗れた家なのだから。鞘花の言葉で深月は微笑んだ。
「なあ、古藤。俺は一度も彼女自身が好きだって言ったことない。彼女の見た目は確かに好きだって言った。でも彼女の中身は好きとは言ってない。...そうだな、彼女は側に置いておきたかった。彼女が俺の側で墜ちていくのを見るのはきっと何よりも快感だ。」
深月はそれまでの明るいちゃらさはどこかに消えていた。とても昏い表情で笑う。瞳には闇がおちている。
「狂ってる。」
鞘花は吐き捨てた。こんな狂った男に千尋を渡すわけにはいかない。
「当たり前だろ。大和の人間は何かしら狂ってる。大和本家で狂ってない奴はいないよ。なあ、神藤。君は本能でわかっていたんだろう?だから、うなずいてくれなかった。」
深月は鞘花の後ろに目線をうつして言う。鞘花が慌てて振り向くと、そこには千尋がいた。千尋はとても無表情で深月を見つめている。その瞳はとても静かな水面のようだ。
「神藤。君はどこまでも神子姫だ。清廉で純粋で、どこまでいっても水の清らかさを忘れない、真白の姫君。そんな少女が俺に恋して、狂っていく様はどれだけ美しいんだろうね?それが見たかった。だけど、駄目だった。君は堕ちない。最初の神子姫のように。最初の神子姫も完璧には堕ちなかった。君はそうだってわかった。だから、君をせめて側に置いて、ずっと見ていたかったんだ。」
深月はそう言った。千尋の瞳は一度も揺れない。そして、微笑む。その微笑みはとても美しかった。
第16話どうでしたか?
なんかすみません。
とんでも展開になってます...
もうちょっとでコメディに
なりますんで!




