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神藤家の退屈しない日常  作者: 三都花実
千尋のお見合い編
12/33

千尋のお見合い3

第12話です。今回でお見合い終了です!

 千尋はため息をつく。いつまでこんな軽薄男に絡まれ続けなければならないのだろうか。まあ、それも恐らく今日まで。父と大和家当主がなんとか説き伏せてくれれば。この時はまだ千尋は希望を持っていたのだった。千尋はそういう楽観的な所が昔からある。それが間違いだったと気づくのはそう遠くない未来である。




「...本当ですか。総帥。」


 雅房が聞くと、信哉は自信たっぷりに頷く。


「...もしそれが本当なら、我が一族としては反対できません。このお見合いお受けいたしましょう。」


 雅房はちらり、と聡の様子を伺いながら言う。聡は非常に険しい顔つきだ。無理もないだろう。あんな事を聞かされては。


「神藤様は如何ですか?」


 信哉が聞くと、聡はため息をつく。


「受け入れられるわけもない。またあの惨事が起きない理由にはなっていない。」


 聡が言うと、信哉は呆れたように聡を見る。この男は全く変わらないようだ。彼女が惹かれたあの頃の神藤聡から。


「少し神藤様に話があるので、席を外してもらっても構いませんか?大和様。」


「それは構いませんが。...失礼します。」




「君は相変わらずだな。聡。」


 信哉は微笑みながら言う。微笑んではいるが、苛立っているのが、聡にはわかる。


「お前も自分の願いのためには手段を選ばない所は変わらないな。」


 聡は信哉を睨みながら言う。信哉はふ、と頬を緩める。


「神藤の直系には真っ直ぐで誠実な性質の人物が多い。逆に大和の直系は一癖も二癖もある人物ばかりだ。だが、大和の方が柔軟だな。神藤は頑固者が多い。」


 信哉は呆れたように言う。


「確かにそうかもしれない。...お前が俺を嫌っているのは知ってる。だが、娘には関係ない。あの子を狂わせたくはないんだ。俺は。あの子にはもう苦労させたくない。」


「聡。君の親心はわからないでもない。私だって芙由子ちゃんの愛娘に危ない橋を渡らせたくはない。でもそれは無理だろう。神藤千尋と大和深月が結婚したら、最近起こっている五大家の弱体化は防げるかもしれないんだぞ。夢にはそう出たのだから。」


「本当なのか?なんで、どうしたら弱体化は防げるんだ。あれは呪いだろう。あの呪いがなんで、二人が結婚することで防ぐことになるんだ。」


「大和深月は知らないが、君の娘、神藤千尋は歴代でも稀なほどの力を持つ当代の神子姫だ。あの子は先祖返りなんだろう。」


 信哉の問いに聡は黙っている。先祖返り。千尋は確かに先祖返りだ。先祖の魂返りではないが、能力は遥か昔の先祖そのものだと聡は見ている。だが、それを口に出してしまえば後には戻れない。だから、聡は黙っていた。


「まあ、言いたくないならいい。どうやら、君と私の因縁はまだ終わってなかったらしいし、今度こそは望みを叶えさせてもらうよ。...私が何かをしなくても、きっと運命は勝手に回るんだろうけどね。」


 信哉は不敵な笑みを浮かべて言う。聡は厳しい眼差しで、信哉を見つめるだけだった。




「大和君...顔が近い!あと1mは離れて。」


 千尋は不機嫌そうに言う。深月はまだ顔を千尋の耳元に寄せていた。深月は微笑んでいる。


「本当に堅いなあ。神藤は。普通は落ちてくれるんだけどな。」


 深月はとんでもない発言をしてきた。千尋は眉間のシワを深くする。


「普通は?」


 千尋が聞き返すと、深月は微笑みを深くする。その微笑みはとても嬉しそうなものだ。


「気になる?」


 深月の問いに千尋は非常に嫌な予感がする。


「やっぱりいい。気にならないわ。」


「まあまあ。そう言わずに。...神藤も知っているだろう。俺はなんでもすごく軽薄で女たらしで近づくとろくなことにならない女の敵みたいに、君に思われてるみたいだからね。」


「私そこまで言ってないわ。」


「まあ、確かにあながち間違っちゃあいない。今までたくさんの女の子と関係を持ったのは嘘ではないからね。」


 深月は何とも思っていないような表情で言う。千尋はなんだか不思議な感じがした。今の深月は空っぽだ。何もない。何故か千尋はそう感じた。根拠はないが。千尋はこの時に初めて思ったのだ。大和深月という人物を知りたいと。


第12話如何でしたか?

今回はたくさんの伏線を、はってしまいました。

よろしければ感想などお聞かせください!^ ^

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