学園祭
僕は凍りついた。ブラシがまだ滴り、手袋をした手が震える。生徒会長の衝撃発言に目が点になる。
アストン(衝撃):「え、なんだって!?」
アナスタシア(首を傾げ、動じず):「だから、生徒会に——」
アストン(手を激しく振る):「いや! 繰り返さなくていいです、会長!」
ドアの外でクリップボードを強く握るユズが、心の中で感嘆。
ユズ(心の中で):「会長直々のスカウト!? なんてドラマチック……!」
アナスタシアが腕を組み、僕の反応にニヤリ。
アナスタシア:「何だ……聞こえたのか? じゃあ、答えは?」
アストン(慌てて):「待って待って待って! 急すぎます! まず説明をお願いします!」
アナスタシア(瞬き):「あ、そうか……じゃあ説明するわ——」
突然、背後からレオンが無音でドアに現れる。いつもの落ち着いた表情。
レオン(淡々と):「アナスタシア様、ここは話し合いの場ではありません。」
アストン(激しく頷く):「そうよ、会長! 男子トイレに入ってはいけません!」
長い、気まずい沈黙。
アナスタシアの頰がゆっくり赤くなる。ようやく現実が追いついた。彼女は迷わず男子トイレに突入していた。
アナスタシア(慌てて、笑いながら):「ま、まあ! 悪いことしてるわけじゃないからいいよね!?」
アストン(即答):「よくないです!」
僕の即座のつっこみで、アナスタシアが盛大に笑い出す。頭を後ろに倒して。
アナスタシア(大笑い):「はははは! やっぱり面白いな! アストン・ヘイルファイア!」
僕は完全に困惑。ユズがクリップボードで口を押さえ、静かに笑いを堪える。
長い笑いの後、アナスタシアの表情が落ち着く。黄金の瞳はまだ興奮で輝いている。
アナスタシア(温かく微笑む):「ついてきな!」
僕は放心状態でアナスタシアを追い、柚子が静かに後ろを付いてくる。レオンはどこかで消えていた——他の仕事だろう。
大きな装飾扉「生徒会室」の前に到着。アナスタシアが派手に開ける。
中は広くて優雅な部屋——中央に磨かれた木製テーブル、柔らかな午後の光が入る高い窓、トロフィーと書類の棚、かすかな紅茶と紙の香り。学校の部室というより小さな会議室のよう。
アナスタシアが上座に優雅に座り、僕に反対側の席を指す。
僕はゆっくり座り、目を丸くする。
アストン(心の中で):「これが生徒会室!? この部屋だけでうちの家より広い……!」
一人ずつメンバーが入ってきてテーブルを囲む。
アナスタシア(優雅に):「では改めて自己紹介! パール! 最初はあなただ!」
パール(渋々、眼鏡を直す):「え!? なんで私から……えっと……生徒会会計、パール・ラベンダーズです……よろしく……」
アストン(丁寧に頷く):「こちらこそ……」
マヤが新しいお茶のトレイを持って入ってくる。明るく手を振る。
マヤ(温かく):「私は書記長、マヤ・ストームヘッジよ! 私の弟と仲良くしてくれてありがとう!」
僕は瞬きし、処理する。
アストン:「弟? ストームヘッジ? まさか……フリック!?」
穏やかで母性的な姉と、猛々しく爆発的な弟の対比に僕は驚く。
レオンが静かに席に滑り込む。姿勢は完璧。
レオン(淡々と):「生徒会副会長、レオン・コパフィールド。よろしく。」
アストン(緊張):「は、はい……」
アナスタシアが少し身を乗り出し、黄金の瞳を輝かせて両手を広げる。
アナスタシア(明るく):「ようこそ、デュラン高校生徒会へ! アストン・ヘイルファイア!」
部屋中の視線が重い。空気が濃い——エリート生徒たち、完璧な姿勢、自信たっぷりの笑み。プレッシャーが本物。
アストン(心の中で):「座ってるだけでプレッシャーが……さすがエリート……」
マヤがお茶を注ぎ終えると、アナスタシアが温かい笑顔で身を乗り出す。
アナスタシア(温かく):「緊張しなくていいわ、アストン! 生徒会のモットーは『すべての生徒に公平と平等』……どんな出自でもね……」
アストン(緊張):「おお! 立派なモットーですね……」
マヤ(優しく微笑む):「だから緊張しなくていいのよ。吸って……吐いて……」
僕はゆっくり息をする。マヤの導きに従う。
アストン:「ありがとう、ストームヘッジ先輩……」
マヤ(柔らかく):「マヤでいいわ。マヤお姉ちゃんでもいいよ……」
アナスタシア(大笑い):「ははは! マヤ、わかりやすすぎ!」
僕は瞬きした。マヤの優しく、ほとんど母親のようなアプローチに驚く。一度深呼吸すると、本当に肩の力が少し抜けた。
アナスタシア:「本題に入りましょう! アストン・ヘイルファイア——生徒会に入って!」
アストン(躊躇):「光栄です、会長。しかし……なぜ僕を誘うのか、その理由によっては……お断りするかもしれません……」
レオン(苛立ち):「無礼だ! アナスタシア様の決定に逆らう気か!?」
アナスタシア(穏やかに):「やめなさい、レオン……」
レオン(即座に):「……了解しました。」
パールが衝撃で口をあんぐり開け、目を丸くする——普段無口なレオンの突然の爆発に、完全に予想外だった。
マヤが口を押さえて小さく笑う。
アストン:「申し訳ありません。無礼なつもりでは全然ないです。ただ、僕にも事情があって……もし生徒会に入ったら、義務や書類仕事に縛られてしまうなら……受けられないと思います……」
スレイヤーズの活動と死の時計の監視で手一杯なのに、さらに生徒会の仕事まで背負う余裕はない。
アナスタシア(首を傾げ):「『事情』って、具体的にどんなこと?」
僕は息を飲む。スレイヤーズの活動はメンバー以外に秘密のはず。
アストン(どもりながら):「それは……」
レオン(真剣に):「我々の情報によると、お前はどの部活動にも入っていない。」
マヤ(微笑む):「そうよね。私の弟のわがままに付き合うくらい、時間はあるみたいね……」
アストン(衝撃):「え……!?」
理路整然とした反論に、僕は完全に追い詰められる。今逃げるべきか、それとももっと話を聞くべきか。
突然、隣に座るパールがテーブルの下でこっそり僕の袖を引っ張る。
パール(囁き):「ねえ……奴らの言うこと、全部聞かなくていいよ。嫌々入った新人は、入れないより迷惑だから……」
僕は彼女に小さく頷き、感謝する。
アナスタシアは構わず続ける。
アナスタシア(真剣に):「アストン・ヘイルファイア……私ね、あなたには大きな可能性を感じるの。成長して、本当にふさわしい優等生になって、見てほしいわ……」
アストン(静かに):「会長……」
アナスタシア(急にふざけて):「……って言うつもりだったけど、正直に言うと——あなたが面白いから! ははは!」
マヤ(ため息):「も〜 アナスらしいわね。」
レオン(淡々と):「何があろうと、私の意見では——アナスタシア様の決定なら従います。」
アナスタシア(柔らかく微笑む):「レオン……ありがとう。」
レオンがわずかに頰を赤らめる。普段の冷静さとは裏腹に。
僕の頭の中では、正直これ以上関わりたくないと思っていた。
アナスタシア:「それに——もうすぐ学園祭が来るでしょ? 人手が足りないの。あなたならぴったりだと思ったけど……」
「学園祭」という言葉が出た瞬間、僕の目が輝く。
アストン:「学園祭……!?」
隣のパールが僕の急なテンションの変化に息を飲む。
アナスタシア(ニヤリ):「ほぉ……アストン! 乗り気ね? 学園祭が好き?」
マヤ(からかう):「あらあら、可愛いわね〜」
アストン(慌てて):「興味は……あるけど、ごめんなさい……やっぱり無理だと思います。」
アナスタシア(明るく):「じゃあオファー変えるわ! 生徒会に入る代わりに——学園祭実行委員に入って!」
アストン(呆然):「学園祭実行委員!?」
アナスタシア:「そう! 学園祭をスムーズに成功させる責任者たちよ! どう? やる?」
心が揺れる。特別な学校行事に参加したくてたまらない……でも、これ以上忙しくなったら体が持たない。
アストン:「……少し考えさせてください。」
アナスタシア(陽気に頷く):「いいわ! 明日また来て、答えを聞かせてね!」
話し合いが終わる。
皆が立ち上がる中、レオンが静かに近づき、僕の肩に手を置いて耳元で囁く。
レオン(囁き、威圧的に):「アナスタシア様を失望させない方がいい……さもないと……」
アストン(汗):「は、はい……」
放課後、僕は教室を抜け出し、まっすぐスレイヤーHQへ向かった。誰かに相談したかった——僕の普通の生活と隠された戦いの両方を理解してくれる、賢い誰かに。
メイン・ホールは静かだった。リシテアが大きな中央テーブルに座り、輝くタブレットと散らばったデータパッドに囲まれ、スヴェグスト戦の最新戦闘ログをチェックしている。眼鏡に柔らかな青い光が映る。
僕はゆっくり近づく。前回の会話で彼女がとてもがっかりした顔をしていたのを、まだ覚えている。
アストン(小さく):「し、失礼します……」
リシテアが顔を上げ、驚きが優しい笑みに変わる。
リシテア:「いらしゃい、アストン! 今日は予定ないけど……どうしたの?」
その優しい笑顔を見て、僕はホッとする。あの時のことはもう忘れてくれたみたいだ。
アストン(緊張):「リシ先生……ちょっと相談したいことがあって……時間、いいですか?」
リシテアが小さく息を飲む——長い人生で、こんなプライベートな時間は初めてだった。スレイヤーのリーダーと部下ではなく、先生と生徒として。
リシテア(からかう):「ふふ……まさか恋バナ?」
アストン(慌てて):「ち、違います! でも大事な話で……」
リシテアがくすくす笑い、温かい笑顔で立ち上がる。
リシテア(明るく):「いいわよ……ゆっくり話して。かわいい生徒のアストンの悩み、優しい先生のリシテアが聞いてあげる……」
アストン(恥ずかしそうに微笑む):「リシ先生……ありがとうございます。」
彼女は二つのコーヒーカップを用意し、僕の前に一つ置いて、向かいの席に座る。
リシテア:「それで、どんな悩みなの? 私の可愛い生徒さん♪」
僕は驚く。普段は厳格で科学オタクのリシテアが、こんなに優しくお母さんみたいな先生になるなんて……笑いを堪える。
リシテア(頰を膨らませ):「ちょっと! 先生を笑うなんて失礼よ!」
アストン(笑いを堪え):「すみません、リシ先生……いつもは立派なリーダーなのに、こんなに優しい先生になるなんて……」
リシテア(遊び心):「ふん! 私がこんなに優しくして、特別扱いするのに……悪い子ね!」
彼女がテーブル越しに僕の両頰をつねる。
アストン(痛がる):「いって! ごめんなさい! リシ先生、ごめんなさい!」
遊びの叱責の後、僕はすべてを説明——生徒会のオファー、学園祭実行委員の誘い、スレイヤー活動と死の時計監視で手一杯なこと。
リシテアがじっくり聞き、頷く。
リシテア:「学園祭実行委員!? 最高のオファーじゃない!」
アストン:「でも……スレイヤーズの活動と、いつ出てくるかわからない死の時計のせいで……楽しむ余裕がないんです。」
リシテアが少し頷き、僕の負担を完全に理解する。
リシテア:「アストン……責任感と義務感はあなたの良いところよ。でも覚えておいて。あなたはまず生徒なの。生徒会活動やイベントに参加する権利があるわ。そして……」
アストン:「そして?」
リシテア(優しく):「実行委員に入れば——特に責任ある立場なら——生徒や来場者を直接見守れる。死の時計が出たらすぐ動ける。まさに一石二鳥よ?」
僕の目が見開く。シンプルで、感動的な言葉。
アストン:「確かに! 影でやるより、内部からの方が効果的……! 権限のある人たちと直接繋がれる!」
リシテア(ウィンク):「その通り! だから……迷わずやりたいことをやりなさい、アストン。あなたまだ若いんだから!」
アストン(優しく微笑む):「リシ先生……素晴らしい知識で本当にありがとうございます!」
リシテアが小さく息を飲み、少し頰を赤らめる。僕の笑顔が、遠い昔の愛した黒騎士を思い出させる。
突然、スマホが振動。モルアからのメッセージ:
「おい、弟子よ。どこだ? 訓練の時間だぞ。」
アストン(慌てて):「あ! 訓練忘れてた! リシ先生! じゃあ行きます! また明日!」
リシテア(柔らかく):「ええ……訓練、がんばってね!」
アストン:「コーヒーありがとう、リシ先生!」
彼女が手を振る。僕は急いで出ていく。
ドアが閉まる。
リシテアがため息をつき、空の席を見つめる。
リシテア(厳粛に):「黒騎士卿……やっぱり、恋しすぎたのかしら……」
――
第62章 学園祭 終




