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1/3時間  作者: 藤崎ユキオ
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紳士の涙

朝陽が医療棟のカーテンを通して柔らかな光を投げかける。モルアが鋭い息を吸って飛び起きる。


モルア(驚愕):「はっ!?」


彼女が周囲を見回し、場所を理解する。信じられないという顔で瞬きをし、涙が溢れる。


モルア(静かに):「……夢……だったんだ……よかった……」


近くでリシテアがタブレットをめくっていた。顔を上げ、安堵のため息をつく。


リシテア:「やっと起きたのね。あなたにしては無茶が過ぎたわよ。」


リシテアが言い終わる前に、モルアが飛びついて強く抱きつく。


モルア(声を震わせ):「みんな……失うかと思った……!」


リシテア(少し赤面):「ちょ、もー……大げさなんだから……」


ゴロンが手を揉みながらそばに立つ。ゆっくり近づき、モルアの手を優しく握る。


ゴロン:「モルアさん……ごめんなさい……ゴロン……守れなかった……」


モルアが振り向き、目がまだ潤んでいる。


モルア(優しく微笑む):「そんなこと言うな。あなたが心配してくれただけで……十分だ。」


ゴロンが恥ずかしそうに目を伏せる。


しばらくしてドアが開き、他のスレイヤーズが入ってくる。僕はベッドに座った師匠に近づく。


モルア(明るく):「アストン! 無事だったのね!」


アストン(笑顔):「それはこっちのセリフですよ、師匠。体調はどうですか?」


モルア(ニヤリ):「もうお元気さ!でも、キスしてくれれば……もっと良くなるかもね、えへ……なんちゃって〜。」


アストン(慌てて):「えっ!? だ、だめだよ師匠!それは……不適切です!」


部屋の女子たちが一斉にため息。


アイビー(頰を膨らませ):「ブー、盛り上がらないのね。」


レミア(からかう):「本当に、アストン? ロマンスポイント足りないわよ。」


モルアが僕と話すときの生き生きした表情を見て、ゴロンは苦笑する。静かに離れ、遠くのソファに座る。


しばらくして、僕も近づいて隣に座る。


アストン:「ゴロン、大丈夫?」


ゴロン(ため息):「うん……ゴロンは大丈夫……でも……ゴロンの心が……痛い……」


アストン(察して微笑む):「モルア師匠のこと、好きなんだね。」


ゴロンが息を飲む。


ゴロン(赤面):「え!? でも……ど、どうしてわかったの!?」


アストン:「僕ね、いろんなことに鈍感だけど……周りの人の気持ちは……なんとなく気づくんだ。」


ゴロン(感嘆):「アストン……すごい……ゴロンは……こういうの……全然経験ない……」


アストン(くすくす):「大丈夫だよ。あんな気持ちって……間違ってないから。」


僕は背もたれに寄りかかり、ゴロンに穏やかに微笑む。


アストン:「恋愛ってさ……無理に押し通さなくていい。自信を持って、でも押しすぎない。それが大事だよ。」


ゴロンが目を見開く。


ゴロン:「つまり……女の子は……頑張りすぎると……嫌がる……?」


アストン(頷く):「その通り。自然に気持ちを流すんだ。」


ゴロンの目が子犬のように輝く。


ゴロン:「アストン……今から……ゴロンの先生になって!!」


アストン(苦笑):「え、僕が? 資格ないと思うけど……」


その時、ドアが勢いよく開く。セトレが王子様オーラ全開で入ってくる。


セトレ:「おごきげんよう、我がレディたち〜! 偉大なるセトレ・グレッグソンが、ただいま戻りましたぞ〜!」


女子たちが一斉にうめく。


グラシア(無表情):「うわ、また来た……」


ヴァルヨネッセ:「誰かミュートして。」


セトレは盛大に拒否され、ため息をついて僕とゴロンの方へ。


突然、僕にアイデアが閃く。セトレの女の子に対する経験値を知ってるから。


アストン(ゴロンに囁き):「実は……セトレが僕よりずっと詳しいよ。あいつ、めっちゃモテるし。」


ゴロン:「ほんとに!?」


アストン(セトレに):「なあ、セトレ。ちょっと時間ある? ゴロンの……状況について、どう思う?」


ゴロンの状況を説明。セトレが立ち止まり、目を見開く。


セトレ(絶望):「何!? まさか! 我がレディたちの一人に!? 誰にも渡さん!」


アストン(急いで囁き):「しっ! 小声で。彼の初めての恋なんだよ。手伝ってくれよ?」


セトレがまた大げさにため息をつき、完璧な金髪をかき上げる。


セトレ:「フム……いいだろう!このセトレ様のような偉大な紳士には、魅力を広める義務があるんだからな!ははは!。」


ゴロン(輝く目):「本当なの!? ゴロンを……教えてくれるの!?」


セトレ(自信満々):「よく聞け!第一歩はマナーだ!第二は服装。そして第三は姿勢だ!自信! これを身につければ、女の子たちは衛星のように回り始めるぞ。」


ゴロンが熱心に頷き、弟子のように耳を傾ける。僕は静かに微笑む。


アストン(心の中で):「意外と……上手くいくかも……」


数分後、ゴロンが緊張しながら女子たちに近づく。最初に気づいたのはモルア。


モルア:「ゴロン? 何か用?」


ゴロンは無言で折り畳んだ手紙を差し出し、真っ赤になって逃げる。


アイビー:「えっ——今、モルアにラブレター渡した!?」


エリセナ(興奮):「ラブレター!? マジで!?」


レミア:「でも……あの子、字書けるのかしら……」


グラシア:「とりあえず開けてみたら?」


モルアが手紙を開き、殴り書きに目を細める。


モルア:「何……この言語?」


ヴァルヨネッセ(覗き込む):「見せて……ん……これは古代悪魔文字ね。書いてあるのは:


『愛しいなモルアさん……あなたは草原の百合のように僕の心を捕らえた……今夜、一緒にロマンチックなディナーをしよう……あなたの秘密の崇拝者より』」


モルアの頰が赤くなる。


モルア(つぶやき):「秘密の崇拝者……? まさか……アストン!? あの馬鹿弟子がやっと私の魅力に落ちたのね? へへ……」


エリセナ&ヴァルヨネッセ:「アストン!? まさか!!」


アイビー:「冗談でしょ……」


グラシア(額に手):「本当にわかってないわね……」


一方、ゴロンはセトレの元に戻り、期待の目。


ゴロン:「やったよ! セトレ先生が言った通りだ!」


セトレ(誇らしげに頷く):「当然だ!真の紳士は待たない。優雅に、タイミング良く行動するんだ。」


僕は心配そうにセトレに囁く。


アストン:「ちょっと……ペース早すぎない? 君のやり方がゴロンに合うとは……」


セトレ(ニヤリ):「心配無用だ、平民よ!これが紳士の道だ。」


僕はため息をつき、ドラマを見守る。


その夜、ゴロンはスーツ姿で現れ、髪をオールバックにし、花束を持ってレストラン入口で緊張しながら待つ。僕とセトレは近くに隠れて見守る。


女子たちがモルアを追って現れる。モルアは華やかなチャイナドレスに軽いメイク。


ゴロン(息を飲む):「うわ……モルアさん……綺麗すぎる……」


モルア:「ゴロン? わあ、今夜はすごくかっこいいわね。」


ゴロンが赤面し、無言で花束を差し出す。


モルア(驚き):「あ……私に? ありがとう。」


ゴロンが椅子を引き、優しく案内。


ゴロン:「どうぞ……お座りください……モルアさん。」


モルア(柔らかく):「うん……ありがとう。」


ウェイターが近づく。


ゴロン:「プレミアムコースを……」


モルア:「え! 普通のメニューでいいのに——」


ゴロン(首を振る):「いえ……モルアさんは……最高のものに値する。」


セトレのアドバイスを思い出す:彼女を安売りさせない。


ウェイターが頷き、去る。


ゴロン(そわそわ):「モルアさん、いいえ、レディモルア……手紙のこと……あれは、ゴロンです。」


モルアの顔が曇る。


モルア:「あなた……? 予想外だったわ……てっきり……」


ゴロン(真剣):「レディモルア……ゴロンは……」


ゴロンが手を伸ばすが、モルアが反射的に引く。


ゴロンの目が落ちる。


モルア(優しく):「ごめん……反射的に……」


空気が気まずくなる。料理が運ばれてくると、モルアが明るくなる。


モルア:「これ、すごい! どうやってこんな高いもの……?」


ゴロン:「紳士は……秘密を明かさない……今夜は楽しんでください。」


静かに食事。モルアは気まずさを埋めようと軽く話すが、ゴロンはやがて涙目で顔を上げる。


ゴロン(静かに):「モルアさん……ゴロンは……モルアさんのこと……好きです。」


モルアが止まり、優しく微笑む。


モルア:「ありがとう……本当に。でも……ごめんね。私の心はもう他の人に……」


ゴロンが悲しげに微笑み、立ち上がる。


ゴロン:「ゴロン……わかりました……ちょっと……席を外します……」


モルアが頷き、彼を見送る。


ゴロンは近くのクローゼットルームに入り、座り込んで静かに泣く。


僕とセトレが盗み聞きして忍び込む。


アストン(優しく):「ゴロン……大丈夫?」


返事はない。静かなすすり泣きだけ。


セトレ(腕を組む):「失恋……それが真の紳士の通過儀礼だ。信じろ、俺も経験した。」


アストン:「大丈夫だよ、ゴロン。泣きたいだけ泣け。ここは僕たちがなんとかするから。」


ゴロンが大声で泣く。


近くを巡回していた警備員が気づく。


警備員:「そこで何してるんだ!?」


アストン(慌てて):「あ! 友達にイタズラしてただけです! お化けの声! 怖い系ですよ!」


セトレ(わざと):「うおおお〜〜!」


警備員に僕とセトレは追い出される。


外で女子たちが駆け寄る。


アイビー(無表情):「ゴちゃん……告白したのね。」


レミア(ため息):「可哀想に……あの子、心が柔らかすぎるわ。」


ヴァルヨネッセ(僕にしがみつく):「アストン……私も振られたらどうしよう? 振らないよね?」


アストン(慌てて):「な、なんで今そんなこと聞くの!?」


セトレ(睨む):「ちくそっ! なんでお前ばっかり可愛い反応なんだ!?」


エリセナ(静かに):「セト……昔、振ってごめんね。」


セトレ(輝く):「本当か!? じゃあ……今なら受け入れてくれるのかい、エリ!?」


エリセナ:「いいえ、それは無理です。」


セトレ(崩れ落ちる):「二度目の拒絶……同じ女の子に……」


グラシア(静かに見つめ):「恋って……本当に複雑ね。」


――


第57章 紳士の涙 終

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