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1/3時間  作者: 藤崎ユキオ
53/61

古きな炎、再び燃やす

現在に戻る——


グラシアが話を終える。声は静かで、空虚だった。


部屋に沈黙が満ちる。


エリセナが拳を握りしめ、突然前に出てグラシアを強く抱きしめる。


グラシア(息を飲む):「ちょ、ちょっと! 離して! き、きつい……!」


エリセナ(涙声):「ごめんね……本当にごめんね、セル……あなたがどれだけ辛い思いをしてきたか分からなくて……」


グラシアは困惑した顔で押し返そうとするが、エリセナは離さない。


グラシア(涙を堪え):「なんで……なんで謝るの!? 私が臆病者だって言ったでしょ……私が逃げた……みんなを裏切ってと死なせたのよ!」


エリセナはゆっくりと離れる……が、青い瞳が金色に輝き始める。淡く、光を放つ。


部屋の空気が変わる。


僕とモルアが一歩下がる。魔力の変化を感じ取る。


モルア(驚愕):「あの光……」


アストン:「これって……まさか……?」


エリセナの瞳がさらに輝く——何世紀もの闇を貫く陽光のように。記憶……いや、存在が目覚める。


スカーレットの姫が戻ってきた。


グラシアはエリセナを凝視する。金色の瞳は、かつての親友——スカーレットの姫そのものだ。唇が震える。


グラシア(囁き):「スカーレット?!本当に……あなたなの?」


彼女の埋めていた罪悪感が波のように押し寄せ、平静を崩す。


グラシア(泣きながら):「私……あなたを捨てた……一番必要な時に逃げた……私——」


エリセナは首を振り、優しくグラシアの肩に手を置く。


エリセナ(優しく):「違うわ。怖くなるのは自然なことよ。失敗したのはあなただけじゃない……私も彼を守れなかった。ヴァイオレットの姫に敗れて……黒騎士を一人残してしまった。」


僕の目が見開く。


アストン:「待ってよ……じゃヴァルヨネッセの先祖がデス・キング側にいたってこと?」


エリセナが重々しく頷く。


エリセナ:「ええ。ヴァイオレット王国はかつてデス・キングに忠誠を誓っていた。でもすべてが変わったのは……黒騎士が彼の使者たちを次々と倒し始めた時よ。」


彼女が四本の指を立てる。


エリセナ:「彼は一人ずつ倒したの。


魔女、

雷光、

ナイトワィング、


そして最後に……ヴァイオレットの姫。」


グラシア(涙を拭う):「皮肉なことに……彼はただ倒しただけじゃない。ある者は改心させたわ。」


エリセナ:「そう。ヴァイオレットの姫は戦争中、呪いにかけられていた。でもそれ以前は……私たちと一緒に戦っていたわ。」


グラシア(かすかに笑う):「あの女殺し……魔女は優しくされただけでメロメロだったわね。」


エリセナ(微笑む):「ヴァイオレットの姫は強さを尊敬していた。黒騎士は正々堂々の戦いで彼女の忠誠を勝ち取ったの。」


グラシア:「雷光は戦闘狂だったわ。モルアみたいな女ね。倒しただけで惚れるとは思えないけど。」


モルア:「私みたいに? 家系なんて調べたことないから知らなかったけど……」


女子たちがくすくす笑い合う——昔のような響き。


だが笑顔が消える。一つの名前が影のように浮かぶ。


エリセナ(静かに):「そして最後……ナイト・ワィング……」


表情が暗くなる。


グラシア:「デス・キングで最も忠実な使者。」


エリセナ:「黒騎士とナイト・ワィングの戦いは……私が今まで見た中で最も壮絶だった……」


彼女の声が柔らかくなる。記憶が重く蘇る。


エリセナ:「ナイト・ワィングは恐ろしい呪いを使ったの。黒騎士の最も深い恐怖を暴き出す幻覚……意志を破壊する悪夢だった。」


僕が身を乗り出す。息を飲む。


アストン:「どうやって耐えたんだ?」


エリセナ:「彼は最も危険な能力を使った。ソウル・シンクロ。」


全員が静まり返る。


グラシア(頷く):「ただのシンクロじゃなくて……彼がマルチ・ソウル・シンクロ使ったわ。」


アストン(目を見開く):「マルチ……だと?!」


グラシア:「ええ、五つ以上の勇敢な魂を同時に同期させるの。一撃ごとに、一呼吸ごとに、魂が入れ替わる。」


エリセナ:「ナイト・ワィングの呪いは魂が絶えず変わるせいで根を張れなかった。あれは奇跡的な戦術だったわ……」


エリセナが僕を見る。瞳に感情が溢れる。


エリセナ(静かに):「あなた……本当に彼に似てる……」


指先が僕の頰に触れる。涙が溢れる。


エリセナ:「ごめんね……つい……全部が蘇って……」


僕は赤面し、圧倒される。


グラシアが手を伸ばし、エリセナの手を優しく握る。


グラシア:「わかるわ……あなたがどれだけ彼を愛していたか……」


突然、リシテアが部屋に飛び込んでくる。目が真剣だ。


リシテア:「ゴロンが悪魔の気配を検知したわ。すぐ近く。廃墟の建設現場よ。」


モルア(立ち上がる):「学校の外にも動き出したのね……広がらせちゃダメだ。」


ナイフを掴み、出口へ走る。


リシテア(命令):「全チーム出動! モルアの後を追って!」


全員が動き出す。


グラシアが体を起こす。


グラシア:「私も戦うわ。」


リシテア(厳しく):「ダメよ。ソウル・スイッチ後のあなたの魔力核がまだ不安定。無理はさせられないわ。」


グラシアは悔しそうに下を向く。


エリセナ(温かく微笑む):「心配しないで。今は私が代わりに戦うから。」


グラシアは無理に笑顔を作るが、心の中で罪悪感がさらに深く刺さる。


みんなが出て行き、部屋に残ったのはグラシアとリシテアだけ。


リシテア(優しく):「……すべての記憶が戻ったのね?」


グラシアがゆっくり頷く。


リシテア(興味深く):「一度にそんなに知識が戻ってきて、どんな気分? 痛い?」


グラシア:「ええ……でも何が一番痛いかわからない。記憶……それとも私があの人たちにしたこと……」


沈黙。


リシテアが深呼吸し、眼鏡を外し、後頭部に手をやる。


グラシアの心臓が跳ねる。


グラシア(息を飲む):「あなたは……まさか……魔女?!」


リシテアが悲しげに微笑む。


リシテア:「ふふ……久しぶりね、セルレアンの姫。」


場面転換。廃墟の建設現場。建物内の闇が不気味に蠢く。


ゴロンは静かにしゃがみ、錆びた梁とセメントの残骸に隠れる。かすかな悪魔の気配がここに導いた——学校から遠くない廃墟だ。


ゴロン(独り言):「へへ……モルアさんが来る前に片付けたら、褒めてもらえるよね……」


奥へ進むと気配が強くなる——そして突然消える。


ゴロン(困惑):「え……?」


遠くの廊下から足音。


制服姿の少年がのんびり現れる。


ゴロン:「ん? 生徒……?」


少年:「あ、迷っちゃった。学校への道、教えてくれる?」


ゴロン:「学校は……あっちだよ。」


少年が丁寧にお辞儀。


少年:「ありがとう。」


通り過ぎる瞬間、ゴロンが頭をかく。


何か……違和感。


空気に薄く残る魔力の気配。


ゴロン(つぶやき):「変だな……一瞬悪魔の気配がした気が……気のせいか?」


その時、モルアが上部の梁から飛び降り、少年の背後に着地。


モルア(冷たく):「新顔ね。」


少年が止まり、振り返る。穏やかな笑顔。


少年(丁寧に):「こんにちは、お嬢さん……私、グスタフです! 数日前に転入したばかりで、まだ知らない人も多いですよね。」


モルア:「いいや、違うわ。私は学校中の顔を覚えてる——生徒、教師、職員……給食のおばちゃんまで。あなたはそこにいないぞ。」


彼女が彼の肩を掴む。力が強まる。


モルア:「正直に言え、あなたは誰だ?」


ゴロンが近づく。


ゴロン:「そうだよ。さっき……君から悪魔の気配がした……薄いけど……確かにあった。」


グスタフは黙る。


やがて、穏やかな表情が歪み、ニヤリと笑う。


グスタフ(くすくす):「へへ……気づくの遅かったね。」


軽くでモルアの手を払う。驚くほどの力でモルアがよろめく。


モルア:「なっ?!」


背中から黒い翼が爆発。圧倒的な悪魔のオーラが炸裂し、モルアとゴロンを吹き飛ばす。


少年の姿が変わる。ボロボロの黒と紫のローブを纏った長身の悪魔。


翼は影のように黒く、瞳は深淵そのもの。


グスタフ?(ニヤリ):「改めて自己紹介をしようか、凡人ども……私はスヴェグスト・ドレンツァイガー、七つの大罪の一つで、傲慢の罪! そして伝説の悪魔、ナイト・ワィングの末裔だ!!」


――


第53章 古きな炎、再び燃やす 終

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