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1/3時間  作者: 藤崎ユキオ
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セルレアンの姫(完結編)

三人は不気味なデス・バレーへ降り立つ。黒い城——デス・キングが住むパンデモニウムがそびえる暗い峡谷だ。


スカーレット(汗):「あれが……デス・キングの城、パンデモニウム……」


セルレアン(震え):「間違いないわ。あの城から邪悪な魔力が溢れてる……」


黒騎士(冷静):「行くぞ、二人とも……任務が優先だ。」


三人は未知の地を慎重に進む。地形と地理を調べ、セルレアンの姫が魔法で詳細な地図を巻物に描き込む。


スカーレットの姫は魔法石で前線の部隊を確認する。


スカーレット(優しく微笑む):「……勝ってる……よかったわ……」


セルレアン:「この区域の地図は完成したわ。次へ進みましょう。」


黒騎士:「よし。俺についてこい。」


三人はさらに探索を続ける。谷の隅々まで丁寧に地図化していく。


セルレアン(息を吐く):「もう少し……これでデス・バレー全体を網羅できるわ。」


スカーレット(笑顔):「ええ! 終わったらすぐに前線を援護しましょう!」


突然、圧倒的なオーラが辺りを押し潰す。三人とも動けなくなる。息すらできない。


セルレアン(息を飲む):「な、何!?」 *膝をつく


スカーレット(弱々しく):「体が……動かない……!」 *膝をつく


影から現れたのは、長く白い髪の巨躯。黒曜石のような紫の魔鋼鎧に身を包み、存在だけで恐怖を撒き散らす。


???(穏やかに):「ふむ……迷い込んだ鼠どもか……我が愛しき庭園に……」


黒騎士(弱々しく笑う):「この圧倒的な気配……貴様がデス・キングか?」


深紅&蒼(衝撃):「何!?」


デス・キング(かすかに微笑む):「その通り。そしてそなたが……黒騎士、ですか。我が忠実な僕たちを倒したと聞く……認めよう。そなたは侮れぬ存在だ。」


黒騎士(皮肉):「デス・キング直々の評価とは光栄だな……だが、こんなところで散歩とは、よほど暇なのか?」


デス・キング(くすくす):「ふむ……数世紀を生きた者にとって、最大の敵は退屈だ……」


黒騎士(苛立ち):「退屈しのぎに散歩して、俺たちを見つけたってわけか?」


デス・キング(微笑む):「そういうことになるな。死の使者として、死に挑む者と出会うのは珍しくない。そして吾はその呼び声に応じたまでだ。」


黒騎士ニヤリ:「死の使者、か……」 *剣を抜く


剣を抜くと、刃が強烈に輝き出す。デス・キングの存在に呼応する。


黒騎士(勇敢に):「デス・キング! これを見よ。死そのものを斬る伝説の剣——デスレイヤーだ!」


デス・キング(興味深げ):「ほう……」


彼も巨大剣を抜く。刃に暗黒のオーラが迸る。


デス・キング(穏やかに):「ならば応じよう。そなたのデスレイヤーと、我がレクイエム……どちらの剣が砕けるか、見届けようではないか……」


最強の剣士二人がついに対峙する。剣を構え、視線を交錯させる。


だが状況はあまりにも不利だ。


黒騎士(歯を食いしばる):「この力……想像以上だ……」


彼の背後で二人の王女が弱々しく震える。恐怖に囚われている。


スカーレット(心配):「黒騎士! 今挑むのは無謀よ! 退却しましょう!」


セルレアン(震え):「そ、そうよ! 彼を刺激しないで!」


黒騎士(微笑む):「それができればいいけど……デス・キングが俺たちを逃がすと思うか?」


王女たちは息を飲む。ようやく状況を理解する。デス・キングの前では、ただの追い詰められた鼠でしかない。


セルレアン(心の中で):「な、何……これ……怖い……逃げたい……!!」


冷徹なセルレアンの姫が初めて味わう感情——恐怖。


心を蝕み、脳を曇らせ、生存本能だけが叫ぶ。


スカーレット(混乱):「じゃ、どうすればいいの!?」 *涙目


黒騎士(冷静):「セル……彼女を連れて逃げろ。」


スカーレット(衝撃):「何!? 嫌よ! あなたを一人にできない!」


黒騎士(叫び):「早く!!」


セルレアンの姫は迷わず深紅の手を引き——


*パッ!


二人は消える。黒騎士を一人、デス・キングの前に残して。


二人はスカーレティシアの宮殿前に再出現。雨が降り始め、セルレアンの姫の震える息と重なる。


スカーレット(必死):「いやだ! 戻して! 彼を置いていけない! 時間を稼いでくれてるのに!」


だがセルレアンの姫は動けない。膝が折れ、床に崩れ落ち、頭を抱える。


セルレアン(震え):「私……戻れない……戻れたくない……!死にたくない……!!」


声が震え、割れる。論理ではない。純粋な恐怖だ。どんな炎よりも熱く、心を焼き尽くす恐怖。


スカーレット(優しく):「セル……あなた……こんなに震えてる……」


彼女はそっと手を伸ばすが、セルレアンの姫が弾く。


セルレアン(叫び):「そんな目で見ないで!! 私……英雄なんかじゃない!!」


スカーレットの姫が手を止める。驚きで固まる。


セルレアンの姫は再び転移魔法を放つ——今度は一人。淡い青の光に包まれ、消える。


スカーレット(心配):「なんてこと……私が……彼女の恐怖に気づけなかった……」


突然、前線からの伝令が駆け込んでくる。


伝令(慌てて):「大変です、王女陛下!」


スカーレット(ため息):「言え。」


伝令:「ヴァイオレットの姫が到着しました! 彼女が悪魔軍を援護し、強力な魔法で我が軍を瞬時に壊滅させました!!」


スカーレット(衝撃):「ヴァイオレットの姫!?」


伝令:「スカーレットの姫! ご命令を!」


10秒ほど考え、彼女は決断する。


スカーレット:「一旦撤退よ! 生存と被害最小化を優先だわ!」


伝令:「了解です、陛下!」


伝令が去る。彼女は膝をつき、涙を堪える。


スカーレット(震える声):「ヴァイオレット……どうして……!?」


セルレアンの姫はセルレアニア、彼女の塔に戻る。巻物と封印された魔法が並ぶ、彼女の聖域。息が荒い。手が震える。


セルレアン(パニック):「何か方法が……逃げる方法が……」


書庫を荒らす。羊皮紙が飛び散る。袖に埃が積もる。そして見つける。


セルレアン(囁き):「……タイム・リープ。」


禁断の呪文。肉体から魂を切り離し、永遠へ飛ばす。利己的な逃避……だが確実なもの。


白龍の鱗を鍵に儀式を開始。魔法陣が淡く輝く。だが……彼女は躊躇する。


黒騎士のことを思う。スカーレットの姫のことを。両親と国民のことを。


だが論理が勝つ。


セルレアン(冷たく):「私が死ねば……私の知識はすべて失われるし、無駄になる。それは絶対嫌だわ。」


彼女は長年作り上げたミスティック・ドールを見る。魂を固定するためのもの。


セルレアン:「あなたが……私を運んでくれるわね……最後まで。」


転移を開始。魂が人形に繋がる。


突然、輝くセルレアニアの城が揺れる。


衛兵が塔に駆け込む。


衛兵(叫び):「王女! スカーレティシアが陥落しました! デス・キング軍が迫ってきております!! 急いで——!」


だがそこにあったのは、床に横たわるセルレアンの姫の亡骸。目を見開き、魂のない抜け殻。


ポータルが閉じ、時間の中に消える。


ミスティック・ドールは時の回廊を漂う。魂はリンボに浮かぶ。


日、月、年、世紀が過ぎる。


彼女の記憶は耐えがたい痛みゆえに薄れていく。


失敗したこと。恐怖。裏切り。


すべて忘れたかった。


ただ消えたかった。


そして——


ポータルが開く。現代の静かな町に大雨。ゴミ箱脇の汚れた路地に、人形がぽとりと落ちる。破れた包装紙と壊れた傘に埋もれる。


数日、人形は動かず横たわる。


すると——


幼いグラシア(優しく):「あれ……? 人形?」


大きな好奇心の目で拾い上げる。汚れと傷だらけでも、彼女は明るく微笑む。


幼いグラシア(嬉しそう):「かわいい! これからは私の子だよ!」


家に帰ると、母クレアが人形を見て眉をひそめる。


クレア:「グラシア、そんなゴミを家に持ち込んじゃダメよ……」


だがグラシアは人形を強く抱きしめる。


幼いグラシア(笑顔):「でもママ……私、こんなの初めてなんだもん……特別な子なの。お願い……」


クレアは何も言わず、そっとグラシアを抱き寄せる。雨漏りのする粗末な家の下で。


人形の中の魂——数世紀凍りついていたものが、初めて感じる。


温もり。


――


第52章 セルレアンの姫(完結編) 終

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