セルレアンの姫(前編)
レミアがグラシアを優しくマナベッドに横たえる。光のビームがゆっくりと彼女のマナを回復していく。エリセナは隣に座り、しっかりと手を握ったまま。
リシテア(優しく):「おかえりなさい……セルレアンの姫。」
グラシアは苛立たしげに舌打ちするが、何も言わない。表情は遠く、警戒心に満ちている。
アストン(優しく):「たくさん聞きたいことがある……君のこと、過去のこと、300年前の旅のこと……」
その言葉を聞いて、グラシアの体がわずかに震える。顔に痛みが走る。
エリセナ(なだめるように):「もう一人で抱えなくていいの。私たちがいるんだから。」
モルア(真剣に):「本当のグラシアの話は聞いたけど……あなたの話はまだよ。」
グラシアはモルアとの約束を思い出す。深く息を吸い、記憶の重さに耐えながら、僕の優しい視線に気づく。少し頰を赤らめ、ため息をついてようやく口を開く。
グラシア(静かに):「……わかったわ。話す。でもちゃんと聞いてよね。」
スレイヤーズ全員が身を乗り出す。セルレアンの姫の本当の物語を聞く準備が整う。
物語はセルレアニア、輝く蒼の王国から始まる。
魔法と論理に天才的な才能を持つ若い王女は、塔にこもって呪文を編み出し、魔法を革新し続けていた。
セルレアンの姫として知られる彼女は、まさに天才だった。彼女の魔法は国を豊かにし、繁栄の時代を築いた。しかし彼女は人前に出ず、塔に閉じこもり、研究に没頭していた。
一人娘の様子を心配した王と王妃は、彼女を外へ連れ出そうと説得を試みる。
だが王女にはそんな時間はなかった。社交は彼女にとって単なる邪魔でしかなかった。
王:「私たちの娘、いつまで塔に閉じこもっているんだ?」
王妃(眉をひそめて):「……あの子はもう一ヶ月、外に出てないわ。」
王(目を見開く):「一ヶ月!?」
王妃:「ええ……もし彼女が出たとしても、魔法研究の材料を集めるためだけですわ。」
王(額に手を当て):「うう……最悪だ。セルレアニアの未来の統治者として、彼女は人々と交流しなければならないのに。」
王妃(優しく微笑む):「そうですわ……国民を知らなければ国は治められない。だから、彼を呼んだわ。」
王:「彼?」
王妃:「どうぞお入りなさいませ。」
優雅に歩み寄るのは、あの有名な黒騎士。王族の前に跪き、挨拶する。
黒騎士(跪いて):「陛下、王妃陛下のお呼びに応じて参りました。」
王が手を振って、近衛騎士たちを下がらせる。より私的な会話のため。
王妃(微笑む):「久しぶりね、坊や……いえ、今は黒騎士卿なのね。また会えて嬉しいわ。」
王(咳払い):「顔を上げなさい、黒騎士卿。」
黒騎士:「かしこまりました。」 *顔を上げる
両親は娘の引きこもり状態について相談する。
黒騎士(心の中で):「あの女……やっぱり変わってないな……」
王(真剣):「だから、外へ出て世界を見るよう説得してほしい。黒騎士卿、頼めるか?」
王妃(懇願):「あの子の幼馴染で唯一の友人であるあなたにしかできないのです。お願いしますわ、黒騎士卿。」
王妃が頭を下げる。黒騎士は少し驚き、微笑む。
黒騎士:「ご命令とあらば。安心してください。王女はお任せを。」
翌日、黒騎士はセルレアンの姫の塔を訪れる。
ドアを叩くが返事がない。
黒騎士:「外に出てるのかな?」
すると高層の窓から紫の煙が漏れているのに気づく。
黒騎士(微笑む):「いや……やっぱりか。」
跳躍を繰り返し、窓まで登る。部屋の中ではセルレアンの姫が最新の研究に没頭している。
黒騎士がゆっくり近づく。
黒騎士:「まだ塔に閉じこもってるのか……」
馴染みの声に驚き、姫が振り返る。表情は無感情。
セルレアンの姫(平坦に):「……あんた。もう私のこと忘れたと思ってたわ。」
黒騎士(笑顔):「忘れるわけないだろ。幼馴染なんだから。久しぶりだな、セルレアン。」
無言で彼女は紅茶とパンを出し、革張りの椅子と丸い木製テーブルに座る。
セルレアン:「久しぶりに客が来たわ。」
黒騎士:「本当か? ご両親は定期的に訪ねてきてると思ってたけど。」
セルレアン:「違うわ。大抵は使いの者を寄越すだけ。」
黒騎士(気まずく):「そ、そうか……」
セルレアン(真剣):「で……用件は? あの有名な黒騎士さまがわざわざここに、暇つぶしに来たわけじゃないわよね?」
黒騎士:「もうばれたか……さすがだな!実は……」
両親の心配を伝え、そして本当の目的を明かす。
セルレアン(ニヤリ):「あんたが……助けを求めてくるなんて。あの誇り高き裏切り者の黒騎士が?」
黒騎士(ため息):「好きに呼べ。スカーレティシアの姫の協力を得るには、それしか方法がなかった。」
セルレアン(冷たく):「悪いけど、お断りよ。帰って。」 *立ち上がり、去ろうとする
黒騎士:「待て! 取引だ! 俺がお前の研究を手伝う。その代わり、デス・キングを倒すパーティーに参加してくれ。」
彼女が足を止め、急いで席に戻る。
セルレアン(ニヤリ):「今度は話がわかるわね。」
彼女が求めるのは白龍の鱗。伝説の雪白氷龍からしか得られない超希少素材で、彼女の最大の呪文に欠かせない試薬。
黒騎士:「なるほど……わかった。鱗を手に入れてやる。けど、その龍の生息地は心当たりがあるか?」
セルレアン:「噂では北域の最高峰に棲んでるらしい。でも正確な場所はわからないわ。」
黒騎士:「最高峰……フロストヴェルツ山か。以前、任務で登ったことがある。」
セルレアン(冷静):「頂上まで行ったことある?」
黒騎士(懐疑的):「ああ……けど、あの時は吹雪と雪嵐で三週間かかった。戦争前にそんな時間はないと思うけど。」
セルレアン:「なら決まりね。」
黒騎士(困惑):「待て、何が?」
彼女はすぐに行装を整え、準備を始める。
セルレアン(興奮):「行くわよ……今すぐ!」
黒騎士:「マジかよ!?」
彼女は小さな子どものようにスキップしてドアへ向かう。
黒騎士(ため息):「わかった、わかった……」
セルレアン(ニヤリ):「足手まといにならないでね。」
黒騎士:「冗談じゃない。俺がこのチームを勝利に導く。見てろよ。」
二人は子ども時代のように笑い合う。
――
第50章 セルレアンの姫(前編) 終




