再燃する絆
翌朝学校に戻り、疲れ果てて教室へ。徹夜の代償が体に重くのしかかる。席に崩れ落ち、机に頭を預けて眠りに落ちる。
突然、足音が駆け寄ってくる。エリセナとグラシアが息を切らして現れる。
アストン(驚いて):「うわっ! 二人とも!びっくりした……」
グラシア(申し訳なさそう):「ごめんなさい! 昨夜はエリセナの家に泊まってたの。私がそばにいれば……」
アストン(微笑む):「いいんだ、グラシア。本当に大丈夫だから。」
エリセナは何も言わず、僕の隣に跪き、そっと両手を取る。僕は息を飲む。
アストン:「え、エリセナ……何してるの? 立って——」
彼女は答えず、ただ静かに抱きついてくる。温かく、無言の抱擁。
アストン(赤面):「エ、エリ……」
少し迷った後、僕もゆっくりと抱き返す。
エリセナは立ち上がり、前髪で顔を隠す。手が震え、瞳に涙が溜まるが、声はしっかりしている。
エリセナ(静かに):「思い出したわ……私がしなきゃいけないこと。これからは……私がずっとあなたを守る。」
グラシア(誇らしげに微笑む):「そうね……これが私のしってるエリセナだね。」
アストン(慌てて):「ま、待って、何の話!?」
エリセナ(僕の鼻をつまむ):「とにかく安心して。これからは……私があなたの背中を守るから。」
アストン(遊び心でうめく):「いたっ! ちょっと!」
グラシア(くすくす):「ふふ……やっと二人とも普通に戻ったわね。」
生徒たちが席に着き始める中、クリスタルが入ってくる。こっそり僕の席に近づく。
クリスタル(明るく):「おはよう、アストン~昨夜は無事でよかった……」
僕はもう寝落ちしている。
クリスタル(囁き):「本当に疲れてるんだね……」
しばらく僕の寝顔を見つめる。表情が真剣になる。
クリスタル(心の中で):「こんな可愛く寝てる子が……昨夜、私を守るために勇敢に戦った男なんだ……」
彼女は優しい笑みを浮かべ、そっと頰にキス。
クリスタル(囁き):「これがご褒美ね、私のヒーロー。」 <3
彼女の顔が真っ赤になり、慌てて席に戻る。
後ろの席からグラシアがすべてを見ていた。心臓が激しく鳴る。
グラシア(心の中で):「キ、キス……頰に……!」
彼女が一瞬固まる。やがて目が冷たくなる。
教科書を掴む。
*バシッ!
背表紙で僕の頭を叩く。
アストン(驚愕):「いってぇ! 何だよ!?」
振り向くと、グラシアと目が合う。だが……その視線は違う。
姿勢は気高く、表情は冷徹。存在感が完全に貴族。
アストン(囁き):「待って……グラシア……? いや……またあの人だ……もう一人の……」
グラシア:「久しぶりね、馬鹿。」
そこに立っていたのはセルレアンの姫だった。
僕を睨み、鋭く問う。
グラシア(冷たく):「あの女は誰?」
僕は困惑する。
アストン:「どの女?」
彼女がラベンダー色の短髪ギャルの方を指す。
アストン:「あれはクリスタル、僕たちのクラスメイトだが……」
グラシアが鋭くクリスタルを睨む。視線がさらに冷たくなる。
アストン:「あの子はどうしたの?」
グラシア(苛立ち):「本当に気づいてないの? あの子、今あなたの頰にキスしたわよ!」
僕は息を飲み、手で頰を覆う。顔が真っ赤になる。
グラシア:「ま、まじ!?信じ乱ない!!」
言葉もなく、グラシアは踵を返して教室を飛び出す。
アストン:「ちょっと、グラシア! 待って——!」
彼女が止まらなかった。
エリセナ:「アストン!何が起きたの?」
アストン(真剣):「姫が戻ってきた……」
エリセナの目が見開く。
エリセナ:「まさか……もう一人のグラシア——セルレアンの姫がまた目覚めたってこと?」
アストン:「うん……あの優しいグラシアは眠ってるみたいだ。」
エリセナ(拳を握る):「すぐにリシ先生に報告しなきゃ。」
アストン:「そうだな。」
屋上。グラシアは一人、空を見上げている。表情が混乱に歪む。
グラシア(心の中で):「私……なんであんな態度を取ったのよ? いったいどうしちゃったの……?」
彼女は拳を強く握る。自分の感情が理解できない。
突然、明るい声。
レミア:「やっぱりここにいるわね、グラシア! 紅茶の時間よ。あなたの大好きなピーチスコーン持ってきた~」
グラシアの顔が無表情になる。
グラシア(冷たく):「今日は魚と遊ぶ時間はないわ。」
レミアが凍りつく。瞬き。
レミア:「……今、何て言った?」
グラシアの態度に既視感。威厳ある傲慢さ、鋭い舌……トロイジール城での初対面と衝突を思い出す。
レミア(静かに):「あなた……あの人よね?」
グラシアが苛立ったようにため息。手首を振ると、優雅な氷の杖を召喚。杖の先端に氷の欠片が不気味に輝く。
グラシア:「凍らせてやりたいけど……今は学校だからね。消えなさい。」
レミアが一歩下がる——そしてニヤリと笑う。
レミア(挑戦的に):「やっとね……再戦を待ってたわ。」
オーシャントライデントを召喚。水が盾のように周囲を渦巻く。
レミア(冷静):「あなたがまだ昔の切れ味を保ってるか、見せてもらいなさい。私を止められるなら止めてみな。」
グラシア:「ちっ……ごちゃごちゃうるさいわね、この魚女……」 *杖を構える
グラシアがタイムレス・ドメインを発動。屋上全体がエーテルの氷に包まれたポケット領域に変わる。
レミア(息を飲む):「領域……?」
グラシア:「安心なさい。あなたに不利になるようなことはしないわ。ただ学校を守るため……そして私たちの舞踏に十分な空間を確保するためよ。」
レミア(ニヤリ):「いいわ。なら私も手加減しない。」
レミアがトライデントを掲げる。
レミア:「波崩れ!」
津波のような奔流が押し寄せる。グラシアは氷の板に乗って優雅にかわす。そして反撃。
グラシア:「アイシクル・バレージ!」
氷の矢が雨のように降り注ぐ。レミアが即座に対応。
レミア:「私のあらたの力、味わうがいい……津波!」
巨大な波が氷柱を防ぎ、グラシアを飲み込む。水中で苦しむグラシアが氷の柱を生成し、水面に浮上。
グラシア(困惑):「ちっ……私の魔法……こんなに弱いはずがないのに! なぜ!?」
レミア(詠唱):「雨嵐!」
風が咆哮し、雨が弾丸のように降る。グラシアが重い雨に押さえつけられる。
グラシア(歯を食いしばる):「くっ……体が……動かない……?!」
レミアが渦巻く柱に乗り、目を輝かせる。
レミア:「これで終わりよ! オーシャニック・スパイラル!!」
グラシア(目を見開く):「まずい……!」
螺旋の水のドリルがグラシアを直撃。領域の壁に叩きつけられる。体が渦巻く波に沈む。
戦うことなく溺れる姿を見て、レミアが異変に気づく。
レミアが魔法を解除。水が消える。グラシアが腕の中に落ち、激しく咳き込む。
レミア:「捕まえたわ……」
タイムレス・ドメインが揺らぎ、消える。
僕とエリセナが屋上に駆けつける。レミアが濡れたグラシアを抱えている。
アストン(衝撃):「レミア!? 何があった!?」
レミア(謝罪):「すまない……前のグラシアが戻ってきたとわかった瞬間、挑戦に応じずにはいられなくて。」
エリセナ(心配):「グラシア……」
グラシアがまた咳き込む。
グラシア(弱々しく):「そんな目で見ないで……痛いわ……昔、スカーレットの姫が私を見たときと同じ目……」
アストン(驚き):「スカーレットの姫……?」
エリセナが優しくグラシアの手を取る。
グラシアが顔をしかめ、引き抜こうとする。
グラシア(叫び):「離して!!」
エリセナ(きっぱり):「嫌よ。離さない。」
グラシア(涙目):「なんで!こんなことするの……? もうわかんないよ……何もかも……」
声が震える。涙が頰を伝う。
エリセナ(叫び):「だったら全部教えて! あなたのことについて! 300年前に何があったのか!」
グラシアが震える。
アストン(穏やかに):「エリセナ、レミア。とりあえずHQに連れて行こう。」
エリセナ:「……うん。」
レミア:「私が運ぶわ。」
グラシアは無言のまま、瞳を大きく見開き、不安げに階段を降りていく。
――
第49章 再燃する絆 終




