過去の魂、未来の道
道場の縁側に座り、木々がそよぐ音と池の水の静かな流れが、満月の下で穏やかに響く。
叔父サイモンが話し終えると、ステラが突然涙を溢れさせ、父に抱きつく。
ステラ(泣きじゃくり):「どうして……もっと早く教えてくれなかったの……お父さん……そんなに辛い思いしてたのに……!」
叔父サイモンは優しく笑い、ステラを抱きしめる。
叔父サイモン(温かく):「君たちさえいれば……私は大丈夫だ。君たちが私の光であり、希望なんだ。」
ステラはさらに強く父の胸に顔を埋めて泣く。
僕は黙って聞いていた。両親の最期の瞬間が心に重くのしかかり、唇が震える。気づけば涙が頰を伝っていた。
ステラ(からかうように):「あは~……お兄ちゃんも泣いてる……なんか可愛いね。」
アストン(鼻をすすり):「な、泣いてないし! ただ埃が入っただけだ!」 *涙を拭う
叔父サイモンが心から笑う。
叔父サイモン:「久しぶりに坊主の泣き顔見たぞ。」
彼は後ろから僕とステラを両腕で抱き寄せる。
ステラ(赤面):「うう……顔近すぎ、バカ兄貴……」
僕も思わず笑ってしまう。サイモンは深く笑い、家族の温もりに浸る。
突然、お腹の鳴る音が静寂を破る。
ステラ(つぶやき):「う……恥ずかしい……」
アストン:「ステラ? お腹空いた?」
ステラは恥ずかしそうに頷く。
叔父サイモン:「じゃあ、一緒に夕飯にしようか……」
アストン:「うん! ステラのカレーまだたっぷり残ってるよ!」
ステラ:「え!? だめだよ、そんなの——」
アストン:「なんで? 僕はさっき、ちょっと食べちゃったけど……見た目はアレだけど、味は最高だったよ。」
ステラ(目を見開く):「ほ、本当に……食べたの?!」
アストン:「うん。食べたよ…… それはどうした?」
ステラの顔がトマトのように真っ赤になる。叔父サイモンがニヤリと笑う。
叔父サイモン:「私もいただこうかな、娘の特製カレー。」
アストン:「だろ? 冷めないうちに行こう!」
ステラ(つぶやき):「でも失敗作なのに……」
叔父と僕が先にダイニングへ向かうと、ステラが慌てて追いかけてくる。
ステラ(怒り):「ううっ……! ちょっと待ってよ二人とも!」
その夜、僕はベッドに横たわり、考えが渦巻く。ペンダントを強く握る。
アストン(囁き):「これが……僕の原典か……」
目が閉じ、深い眠りに落ちる。
いつもの夢の世界。黒騎士が堂々と立っている。
黒騎士:「ようこそ、若き後継者……」
アストン:「黒騎士卿! やっと会えた! 質問が山ほどあって……姫たち、デスレイヤー、ソウル・シンクロ、それに——」
黒騎士:「落ち着け。一つずつ答えてやろう。」
僕は深呼吸して頷く。
黒騎士:「まず……姫たちについてだ。スカーレットの姫とセルレアンの姫、どちらも三世紀前の俺の最愛の同志だった。」
アストン(驚き):「待って……じゃあグラシアのもう一人の自分って、まさにそのセルレアンの姫本人なの?!」
黒騎士:「その通りだ。ヴァイオレットの姫のように血統を継いだ者とは違い、グラシアの中にいるのは……まさに吾輩の友人だったあの陰気な姫その人だ。」
アストン(息を飲む):「え……ってことは……300年以上生きてるってこと?!」
黒騎士:「え……彼女は天才だ。禁断の魔法で時間を跳躍したのだろう。タイム・リープ……危険な術だ。魂を無傷で保てる者はほとんどいない。」
僕は目を丸くする。
アストン:「他の姫たちは? ヴァイオレットの姫と深紅の姫は?」
黒騎士:「ヴァイオレットの姫か……お前のリーダー、リシテアが言った通り、かつては敵だった。デス・キングの配下だ。俺は彼女と戦い、何とか味方に引き入れた……だが……」
アストン:「だが?」
黒騎士:「結局、彼女はデス・キングの側に戻った。そしてスカーレティシアへの侵攻を率いた……それが悪魔と人間の戦争の始まりだ。」
アストン:「ヴァイオレットの姫が……戦争の引き金を引いたってこと?!」
黒騎士:「正確には違う……再会した時、彼女は別人のようだった。目は虚ろで、感情が平坦。まるで記憶を消され、操られているようだった。共に過ごした時間すら覚えていなかった。」
アストン:「じゃあ……利用されてたんだ。」
黒騎士:「おそらく、デス・キング本人によってな。」
アストン:「デス・キング……」 *拳を握る
短い沈黙の後。
アストン:「それじゃあ……スカーレットの姫は?」
黒騎士は振り返り、声を柔らかくする。
黒騎士:「スカーレットの姫……俺が仕えた方だ。温かく優しい心を持ちながら、時に大胆で毅然としていた。お前の仲間、エリセナ……まさに彼女の分身だ。」
アストン:「じゃあ、エリセナはスカーレットの姫と繋がってるってこと?」
黒騎士:「それはわからない……だが彼女の魂とエリセナの……一つに感じる。いや、忘れろ。俺の思い込みだ。」
アストン(困惑):「エリセナとスカーレットの姫が……同一?」
黒騎士:「さて、次の君の質問だ……デスレイヤーについて。」
アストン(頷く):「うん。」
黒騎士:「デスレイヤー……元は平凡な剣だった。だがその核は別物だ。英雄の魂を吸収する霊的遺物。一つの魂が宿ると、あらゆる悪を斬り、死そのものすら倒せる剣となる。」
アストン(振り返る):「だからトロイジール戦で、みんなの力を借りられたんだ……」
黒騎士:「その通り。ソウル・シンクロは橋だ。他の魂にアクセスし、その全力を引き出す。」
アストン:「だからエリセナの魂を通じて、高度な火魔法を使えた……魔法の才能なんて僕にはなかったのに。」
黒騎士:「魂を切り替えるたびに力も変わる。非常に汎用性が高い……だが危険でもある。」
アストン(緊張):「……どんな危険?」
黒騎士:「使いすぎると融合が永続する。君の元の魂が消えて、新しい魂に置き換わる。」
僕は拳を強く握る。
アストン:「なら……本当に必要な時だけ使う。みんなを守るために。」
黒騎士(優しく):「賢い選択だ。」
突然、光が夢の世界を包む。
黒騎士(薄れながら):「時間だ、若き後継者。また会おう。」
アストン:「待って! まだ——!」
目が覚める。
目をこする。もう朝だ。月曜日。
アストン(ぶつぶつ):「もう学校か……」
顔を洗い、歯を磨き、鞄を詰める。廊下でステラが現れる。
ステラ(もじもじ):「お、おはよう、お兄ちゃん。」
アストン:「おはよう、ステラ。何か用?」
彼女が手作り弁当を差し出す。
ステラ(赤面):「べ、別にお兄ちゃんのために作ったわけじゃないからね! 自分が作りすぎちゃったから、分けてあげるだけ!」
アストン(笑顔):「ありがとう、僕の可愛い妹!」 *頭を撫でる
彼女はムッとするが、抵抗しない。
ステラ:「お兄ちゃん……一緒に学校行こ?」
アストン:「いいよ。久しぶりだな。最近はずっと友達と一緒だったから、なんか寂しかったよ……」
ステラ(からかう):「あ~可哀想なお兄ちゃん……私と歩くのそんなに恋しかった?」
アストン:「冗談だけど……」 :p
ステラ(驚き):「え!?」
アストン(遊び心):「先に着いた方が勝ち! 遅い方は腐った卵だ!」 *玄関へ走る
ステラ(怒り):「ううっ……お兄ちゃんのバカ! 腐った卵じゃないもん!」 *追いかける
サイモンは二人を見送り、温かく微笑む。
叔父サイモン:「行ってこい、子どもたち……世界が待ってるぞ。」
――
第41章 過去の魂、未来の道 終




