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1/3時間  作者: 藤崎ユキオ
38/55

明かされた真の自分

転移室はポータルの残留エネルギーでまだかすかに揺れている。


僕たちはリシテアの周りに立ち、息を整える。グラシアの雰囲気は変わっていた。柔らかく、落ち着いている。


全員が静まり、沈黙が続く。


アストン(目を見開く):「なるほど……だから最近、態度が変わったんだ。穏やかで優しくて……五分ごとに杖で頭を叩かれなくなった。」


グラシア(赤面):「彼女の衝動的なところは申し訳ありませんでした。」 *軽く頭を下げる


モルア(腕を組む):「じゃあ、今、彼女はどこにいるの? もう一人の自分。」


グラシア:「眠っています。心の中の感情の混乱に耐えきれなくて……だから私が代わりに目覚めたんです。」


エリセナ(静かに):「感情の混乱……? 私……なんとなくわかるかも。」


アストン(興味津々):「本当? エリ、それは何のこと教えてよ。」


エリセナ(少し赤面):「男の子にはわからないよ! 乙女心のことだから!」


アストン:「あ……そっか。」


リシテアの眼鏡が興奮で光る。


リシテア:「ふむ……興味深いわね。グラシア、私の研究対象になってくれない? 今の状態を詳しく調べたいの。」


グラシア(頷く):「もちろんです……リシテアさん。私たちのためにたくさんしてくれた。少しでも恩返ししたいです。」 *優しく微笑む


リシテアが息を飲み、灰色の瞳が輝き、涙ぐむ。


突然、強くグラシアを抱きしめる。


グラシア(驚き):「リ、リシテアさん!?」


リシテア(くすくす):「ごめんね……ちょっと感情的になっちゃって。」 *離れる


僕は二人の意外な温かなやり取りを見て微笑む。


モルア(ニヤリ):「もし前のグラシアだったら、リシはもう凍ってたかもしれんぞ。」


エリセナ(笑顔):「ほんとよ!」


リシテア(優しく):「おかえり、グラシア。」


グラシア(赤面):「ありがとうございます……」


みんなが状況を把握したところで、リシテアが詳細を尋ねる。


リシテア:「グラシア……八年前から何があったのか、教えてくれる?」


アストン:「八年前?」


グラシア(かすかに微笑む):「そう……みんなに説明しなきゃいけないわね。特に、モルアさん。私があなたと交わした約束を覚えているから。」


モルア(驚き):「本当?」


グラシア:「ええ……もう一人の私、セルレアンの姫が体を乗っ取ってから、私はずっと眠りながら彼女の行動を見ていたの。完全に休眠中でも。」


アストン(つぶやき):「見ていた……? 僕のペンダントの中の黒騎士みたいに……それに、セルレアンって……スカーレットじゃなくて……」


グラシアが深呼吸する。


グラシア:「最初からお話しするわ。」


場面は小さな、薄暗いアパート。ちらつく電球。隣室から大人の怒鳴り声。


八歳のグラシアは床に座り、ボロボロのぬいぐるみで遊んでいる。両親が次の部屋で叫び合う。


母クレア・ホワイトハートが父の酒癖を責める。


クレア:「あなた! もうお酒やめて仕事探してよ! このままじゃ私たち、家賃払えないわ!」


父、インディーズミュージシャンのジェイソン・ホワイトハートが酒に酔って逆ギレ。


ジェイソン(酔っ払い):「うるせえなこのクソ女!! 俺はベストを尽くして曲売ってるんだ! 世間の音楽のセンスがクソなんだよ! 俺の傑作よりゴミみたいなポップス選ぶんだから!!」


クレアの深い青い瞳が大きく見開く。夫の侮辱に涙目になり、逆に罵倒。


クレア(叫び):「だったら酒やめてまともな仕事探しなさいよ、このバカ野郎!!」


ジェイソン(暗く):「今何て言った……? 生きるのはもう飽きたかこら?!」 *近づく


ドアの隙間から小さなグラシアが両親の喧嘩を覗き、震えている。


クレア(泣きながら):「もう死なせてよ! こんな生活、もう嫌だ!!」


ジェイソン(くすくす):「へっ! なら望み通りだ!!」


クレア(息を飲む):「え……!?」


ジェイソンがクレアの首を両手で絞める。クレアは抵抗するが、夫の力に敵わない。


恐怖に駆られ、グラシアが叫びながら飛び出す。


幼いグラシア(ぬいぐるみを抱いて):「パパ! ママ! 喧嘩やめて!!」


ジェイソンが息を飲み、クレアがその隙に押し返して逃げる。荷物を詰め、部屋を飛び出す。


ジェイソン(叫び):「てめえ!待て! どこ行くんだ!?」


クレア(叫び):「もうあなたとは終わりよ!!」 *荷物を抱えて去る



グラシアが母に駆け寄り、袖を掴む。


幼いグラシア(涙目):「ママ……行かないで!」


母は振り返り、冷たい視線を向ける。涙目だが、暗い。


クレア(冷たく):「その目……あいつの呪われた目……大嫌いよ。」


幼いグラシア(目を見開く):「え……?」


幼いグラシアが凍りつく。母は荷物を抱き、急いで去る。虐待的な父と二人きり。


ジェイソン:「グラシア……お前のせいだ……お前のせいで母ちゃんがいなくなった!」


幼いグラシア(目が暗くなる):「パ、パパ……?」


父が殴る。何度も激しく。


ジェイソン(叫び):「これがお前の罰だ! うるさいガキ! お前のせいで俺の人生がこうなった! お前なんか生まれてこなければよかった!!」


幼いグラシア(叫び):「パパ! お願い……やめて! 痛い……!」 *泣く


父が殴り続け、グラシアは本能的に反撃。父の顔を蹴る。


幼いグラシア:「パ、パパ!? ごめんなさい……わざとじゃ——」


ジェイソンが怒りに吼え、グラシアはキッチンに逃げ、ダイニングテーブルの下に隠れる。


ジェイソン(ニヤリ):「かくれんぼか? 生意気なガキだな! 見つけたらぶっ叩くぞこら!!」


グラシアは息を殺し、ぬいぐるみを抱いて震える。父の足音が近づく。


足音が遠ざかると、彼女は息を吐く。


だが父に見つかる。


ジェイソン(ニヤリ):「見つけた!」


幼いグラシア(息を飲む):「ひっ!?」


父に引きずり出され、ナイフを振り上げる。


ジェイソン:「俺の目をこんなに腫らしたな……お前のせいだくそガキ!」


幼いグラシア(泣きながら):「ごめんなさい! ごめんなさい! 本当にごめんなさい!!」


ジェイソン(絶叫):「これは罰だ!!」


ナイフが振り下ろされる瞬間、頭の中に声が響く。


声:「自分を守れ。生き延びろ。」


幼いグラシアの目が暗く冷たくなる。体から魔法の波が爆発。父の腕が一瞬で凍る。


彼女が立ち上がる。


ジェイソン(パニック):「な、何だこれは!?」 *凍った腕を押さえる


後退し、娘の突然の力に恐怖する。


ジェイソン(恐怖):「お前……俺の娘じゃない! 怪物だ!!」


幼いグラシア(冷たく):「なら怪物に近づくな。」


*ザアアッシュ!


氷柱が父の胸を貫く。即死。


幼いグラシア:「愚かな親……子育てできないくせに子を産むなんて……」


小さな手を握り、新しい体に不慣れな感覚を感じる。


幼いグラシア:「まあ……少なくとも人間の体は手に入れたわ……」


突然頭痛が襲う。子どもの体には耐えきれず、倒れる。


数時間後、リシテアがグラシアの魔法覚醒を感知して到着。


現場を見て凍りつく。凍った男と倒れた子ども。


リシテア(静かに):「魔法暴走……この年齢で?」


意識のない幼いグラシアに近づき、脈を確認。安堵の息。


リシテア(かすかに微笑む):「よかった……生きてる……」


彼女はグラシアを抱き上げる。


リシテア:「可哀想な子……これからは私が守るわ。」


三日後。


幼いグラシアが柔らかいベッドと温かな部屋で目覚める。


幼いグラシア(冷静に):「ここは……?」


ドアが開く。リシテアが温かいお粥を持って入ってくる。


リシテア(微笑む):「よかった、目が覚めたわ。」 *近づく


警戒したグラシアが手を上げる。


幼いグラシア(威圧的に):「誰!?」


氷柱がリシテアの胸に浮かぶ。だがリシテアは動じない。


リシテア(優しく):「私は味方よ。もう安全だから。」 *手を握る


グラシアが瞬き。氷柱が消え、頰に涙が伝う。自分でもわからない。


幼いグラシア(困惑):「涙……? どうして……?」


リシテアが優しく抱きしめる。


リシテア(微笑む):「たくさん辛い思いをしたのね。これからは……私が守ってあげる。」


――


現在、転移室に戻る。グラシアが頭を下げる。


グラシア:「これが私の話です。」


エリセナ(涙目):「そんなの……ひどすぎる。あなたはそんな目に遭うべきじゃなかった……」 *手を握る


モルア(優しく):「ごめんね、グラシア……私、知らなかった。」 *抱きしめる


アストン:「話してくれてありがとう。」


リシテア(真剣):「引き金は心理的トラウマね。感情の不安定さが魂の分裂……いえ、この場合はソウル・スイッチ……興味深いわ……もっと研究しなきゃ。」


リシテアが考えにふける中、グラシアが近づく。


グラシア(微笑む):「今までありがとうございます、リシテアさん。」


リシテアが驚き、瞳が輝く。そして強く抱きしめる。


リシテア:「あなたは愛されてるわ。私だけじゃなくて……友達にも。」


グラシア:「友達……?」


彼女は僕、エリセナ、モルアを見る。


エリセナ(満面の笑み):「うん! どっちのグラシアでも、私たちは友達だよね?」


グラシア(優しく):「そうか……ありがとう。」 *涙目


モルア(ニヤリ):「氷龍も面白いけど、この雪の子犬も可愛いから、まあいいか!」


グラシア(驚き):「雪の子犬!? 私が!?」


僕はみんなのグラシアへの受け入れを見て微笑む。


するとグラシアの目が僕と合う。彼女は赤面し、可愛く微笑む。僕の心臓が一瞬強く鳴る。


アストン(心の中で):「やばい……このグラシア……前のよりずっと危険だ……」


――


第38章 明かされた真の自分 終

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