予期せぬ絆
夕陽に浴びて、レミアの水上舞踊が美しく輝く。
水滴が陽光に触れて虹を生み、観客が息を飲む。
ショーが終わり、観客たちから宝石の雨がオアシスに降り注ぐ中、彼女は優雅に一礼。
レミア(微笑み):「ポリの皆さん、本当にありがとうございました!」 *深くお辞儀
観客1(感動):「なんて美しいショーだ!」
観客2(興奮):「お疲れ様、人魚なおねぇさん!」
観客が散り始め、彼女は散らばった宝石を拾い集める。
ショーが終わると、彼女はオアシスの縁に座り、銀色の長い髪から水滴がきらめく。舞姫の衣装が体に軽く張り付き、息を整える。
僕はゆっくり近づく。
アストン:「レミア……?」
彼女は顔を上げ、穏やかに微笑む。まるで僕が来るのを待っていたように。
レミア:「あら……黒犬卿ご本人。正式にお会いできて光栄です。」
アストン(気まずく):「……ここで会うとは思わなかった。すごかったよ、さっきのダンス。」
レミア(微笑み):「ありがとう。傭兵時代が終わって、新しい才能を身につけたのよ。」
アストン:「アイビーとゴロンは? この街にいるの?」
レミア(頷く):「ええ。アイビーは小さなポーション商売を、ゴロンは得意の戦いで生計を立ててるわ。」
アストン:「そうか……」
レミア:「私たちはもう問題は起こさないよ。それが心配なら。」
アストン(安堵):「いや……よかった。本当に。」
レミアは穏やかな視線を向ける。瞳が優しく輝く。
レミア(くすくす):「ふふ……想像していたのと違うわね、あなた。」
アストン:「え?いい意味ですか?」
レミア(からかう):「さあ……それはこれからにわかるわ、きっと。」
一方、市場ではエリセナとグラシアがポーション屋台の前で立ち止まり、馴染みの緑蔦髪の店主を睨む。
アイビー(緊張):「へへ……ようこそ、お客様……」
エリセナ:「冗談でしょ……」
グラシア:「アイビー……?」
アイビー(汗だく):「もし今が買うには……あはは……割引しますよ?」
エリセナ(疑いの目):「このラブポーションって何?」
アイビー(慌てて):「名前の通りです! へへへ……」
エリセナ(怪訝):「本当……?」
アイビー(早口):「ムムム……実は媚薬なんです! 商売だから売れ筋のネタが必要で……利益率いいんですよ!」
エリセナ(赤面):「媚薬!?」 *完全に理解
グラシア(困惑):「媚薬って何?」 *全くわからない
エリセナ(慌てて):「知らなくていい! 要するに、このラブポーションは偽物よ!」
グラシア(落胆):「偽広告ね……」
アイビー(からかう):「完全に偽物じゃないですよ……でもあなたたちのように若い乙女にはわからないでしょうね?」
アイビーの言葉にカチンときたエリセナが、屋台の看板に炎をちらつかせて焦がす。
エリセナ(無表情):「恥を知りなさい。」
アイビー(パニック):「いやあああ!! 看板が!! この経済で客集めるのどれだけ大変か知ってる!?」
エリセナは炎を止める。完全に燃やす前に。
三人で見つめ合い、一斉にため息。
敵だった者たちが、今は滑稽な共通点で繋がる。
一方、地元の戦闘アリーナでは歓声が轟く。二人の強者が対峙。
アナウンサー(興奮):「試合開始!! 今日のチャンピオンは誰になる!? 鉄壁の王者ゴロンか、それとも新挑戦者風虎か!?」
観客1(叫び):「ゴロン、ぶっ潰せ!!」
観客2(ため息):「女かよ……」
ゴロンが前に出るが、凍りつく。巨大なメイスが震える。
ゴロン(恐怖):「どうすれば……!?」
モルア(ニヤリ):「大男よ……そんなに怖がらせたのか? 今度は楽しくやろうぞ……トラウマなしで、約束だ。」
ゴロン(安堵):「本当……?」
モルア:「うん……いくわよ!」 *先制攻撃
ゴロン:「うぐっ……!」 *ガード
全力は抑えているが、モルアの一撃でゴロンの巨体が後退。
モルア(興奮):「どうしたの、大男よ! ガードばっかりしてんじゃねよ、反撃してくれ!」 *容赦なく攻める
アナウンサー:「驚愕の展開!? 鉄壁の王者が反撃できない!? これでゴロンの連勝は終わりか!?」
観客1:「反撃しろ、ゴロン!!」
観客2:「ちっ! 俺の全財産を賭けたのに!!」
ゴロン(心の中で):「うう……ゴロンは……この試合を生き延びたいだけ……」 *ガードを続ける
突然、モルアが攻撃を止める。
モルア:「おっと……ごめん、大男よ……楽しもうって言ったのに、私ばっかり楽しんじゃっただめだ。」
ゴロン(驚き):「え……?」
モルア(微笑む):「さあ、今度は見せてよ、大男! 全力でいけ。」 *挑発
ゴロンが立ち上がり、モルアの言葉で自信を取り戻す。
メイスを大きく振り、頭部が外れて鎖が伸びる。
ゴロン:「ラアアッ……!! バーサーカー・スピン!!」
アナウンサー:「キター!! 鉄壁の最強技!!バーサーカー・スピンだ !! 新挑戦者はどう生き延びる!?」
観客が沸く中、モルアは構えを取る。棘付き鉄球が彼女に向かって飛ぶ。
ゴロン(慌てて):「あっ……!」
モルアがニヤリと笑い、拳を握る。
モルア:「地割虎拳!」
*ドガァァン!!!
咆哮する白虎のシルエットが炸裂。拳が巨大な鉄球に命中し、粉々に砕く。
ゴロン(息を飲む):「な……!?」
観客が静まり返る。
アナウンサー(興奮):「驚異の一撃!? 新挑戦者が拳でゴロンの鋼鉄メイスを粉砕!!」
モルア(驚き):「あ……ごめん、ゴロン! 武器壊しちゃった!」
ゴロンが武器を落とす。そして気まずく微笑む。
ゴロン(うつむき):「やっぱり……ゴロンは……勝てない……風虎さん……」
モルア:「何言ってるの? まだあの強そうな体があるじゃないか! 続けましょうぞ!」
ゴロン:「う……うん……」
モルア(笑顔):「その意気よ! いくわよ!」
パンチとキックを交わし、当然モルアが速い。
ゴロンの攻撃は当たらない。
やがて彼は倒れる。
アナウンサー:「試合終了!! 勝者……新挑戦者……風虎選手だ!!」
観客が雷のような歓声。賭けに負けたのも忘れて楽しむ。
ゴロンが地面に倒れ、モルアが近づく。
モルア(ニヤリ):「いい勝負だったぞ、ゴロン!」 *拳を差し出す
ゴロン(弱々しく):「お、おお……風虎さん……」 *弱く拳を合わせる
モルア:「名前はモルアだ……覚えてくれよ!」
ゴロン(感激):「モ、モルアさん……」
ゴロンは自分の拳を見つめる。胸に初めての温かさが広がる。
彼女は知らない。巨漢の少年が、彼女に恋心を抱き始めたことを。
その夜、かつてトロイジールに仕えていた三悪魔と僕たちはホテルの大広間に集まる。
テーブルに料理が溢れ、ジュースが注がれる。
アイビー、レミア、ゴロン(目を輝かせ):「わあ……!」
僕は彼らの反応を見て微笑み、席に誘う。
レミア(優しく微笑む):「ありがとう、黒犬卿。」
アイビー(驚き):「ふむ……黒犬ちゃんは意外と紳士ね。」
ゴロンは巨体でテーブルに入れず、モルアが大きなロースト肉を差し出す。
モルア(ニヤリ):「食べて、食べて、ゴロンよ! 体を回復させなきゃ!」
ゴロン(涙目):「モルアさん……ありがとう……!」 *食べ始める
アイビーとレミアがゴロンの幸せそうな顔を見て微笑む。
アストン:「で、みんなのこれからってどうなるの?」
アイビー(穏やかに):「見た目はバラバラだけど、私たちは兄弟よ。私は長女、レミアが次女、ゴロンが末っ子。」
エリセナ(驚愕):「本当!?」
グラシア(興味津々):「面白いわね。」
レミア(静かに):「ええ……孤児院で育って、血の繋がりはなくても家族になったわ。」
アストン(かすかに微笑む):「なるほど……なんとなくわかるよ。」
アイビー(ジュースを飲む):「今まで私たちは傭兵だったけど、悪党じゃないわ。結構稼いでたけど、ネクロムにスカウトされて……トロイジールは報酬を約束したけど、結局払われなかった。」
レミア:「だからさまざまな仕事で生計を立ててるの。華やかじゃないけど、正直よ。」
ゴロン(口いっぱい):「この街のご飯……最高! ゴロン……ポリ大好き!」
食事を楽しみながら、僕はふと思いつく。
アストン:「ヴァルヨネッセの治世で働かない? 新しい王国には君たちみたいな力が必要だと思うよ。」
アイビー(躊躇):「わからないわ……私たち、逃亡者扱いなんだから……説明する前に捕まるかも。」
レミア(頷く):「そうね……それに姉さんは戦闘タイプじゃないし……」
アストン:「うん……でもアイビーの回復魔法、すごく貴重だよ。」
アイビー(納得いかない):「でも捕まったらどうするの?」
アストン(微笑む):「大丈夫。僕がフォローするよ。」
レミア(感激):「黒犬卿……」
アイビー(からかう):「わあ……黒犬ちゃん……優しすぎ。かっこよくて優しすぎると、食べちゃうわよ?」 *唇を舐める
アストン(赤面):「た、食べる!?」
エリセナが暗い目でイビーを睨む。アイビーが慌てる。
エリセナ(無表情):「監視してるからね……」
アイビー(手を振る):「じょ……冗談よ……へへ……」
レミア(静かに微笑む):「本当に驚くばっかりな人ね、黒犬卿。」
アストン(照れ):「褒め言葉として受け取っておくよ。」
エリセナ(嫉妬):「バカアストン……何よその顔?」
グラシア(穏やかに):「まあまあ……」 *肩を叩く
モルア(グラスを掲げる):「奇妙な仲間と、二度目のチャンスに!」
全員:「乾杯!」
翌朝、赤色の陽光がホテルのロビーに差し込む中、三人が荷物をまとめる。
僕たちは外で見送る。
アイビー(軽く頭を下げる):「昨夜のご飯と、すべてに感謝。じゃあね。」
アストン(微笑む):「これからどうするの?」
アイビー(ニヤリ):「ヴァイオレット王女の下で働いてみるわ。うまくいけば、ポーション売るより安定するかもね。」
アストン:「そうか……じゃ……これ、推薦状。城の衛兵とヴァルヨネッセに見せて。名前をクリアできるはず。」 *封書を渡す
レミア(驚き):「これは……すごく助かるわ。なければ逮捕されてた。」
ゴロン(誇らしげに頷く):「心配ない……ゴロン……姉さんたちを守る……!」
モルア(ニヤリ):「いい子ね。」
ゴロンが幸せそうな子犬のように輝く。
エリセナ(腕を組む):「ちゃんと真面目にやりなさいよ、アイビー。新しく生き直すチャンスなんだから。」
アイビー(苦笑):「フフ……わかったわ。もうポーションはなし……か。」
グラシア(優しく微笑む):「お茶でもどう、レミアさん?」
レミア(本気で微笑む):「ええ、ぜひ……白龍さん、なんか変わったわね。」
グラシア:「かもね。まだ自分でもわからないけど。」
三人は手を振り、石畳の道を去っていく。軽くなった心と、不確かだが希望ある未来を抱えて。
アストン(静かに):「がんばれ、みんな……」
スレイヤーズは一緒に立ち、風がマントをささやかに揺らす。
――
第35章 予期せぬ絆 終




